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◆在るべきところへ◇13話◇異変・前編 ⑤
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◆在るべきところへ◇13話◇異変・前編 ⑤
「……どうかした?」
聞きながら、フェレナードが椅子を引いて座る。
「そういうの、当たり前なんだと思って」
そういうのとは、彼がかけた背もたれの上着のことだ。
インティスの言葉に彼はふふっと笑うと、テーブルに雑に頬杖をついた。
「当たり前じゃないよ、俺は民間人だからね。貴族でも何でもない。これは着せられてるだけ」
「そうなんだ……」
黙っていれば普通に貴族の人間に見えるのに、今日の所作は今まで見たことがないくらい大雑把だ。
そういえば、これまでずっと側には城の関係者やレイがいた。砂漠の村でも、常に人の目はあった。
貴族のように品良く見えていたのは、彼が隣国からの使いとして、王子の教育係としてあえてそうしていたのだろうか。
それなら、今こうして頬杖をつきながらぼうっと外を眺めているのが、本来の姿なのかもしれない。
確かに、それなら彼も普通の人間に見える。
飲み物に口をつけて、手のひらに収まる木製のカップを持ったまま、フェレナードが話しかけてきた。
「朝食が来るまで、世間話でもしようか」
「世間話?」
「そう、えーっと……」
彼は言葉を探すような素振りでカップを置いた。
「君の村のこと」
「俺の? あっ……」
彼が突然砂漠の国の言葉を使ったので、インティスもつられて同じ言葉で返してしまった。
その様子にフェレナードが笑って続ける。
「実はカーリアンから話は聞いていて、興味はあったんだ。わからない言葉は聞くから教えてくれないかな。例えば……普段どういう風に生活してるのか、とかさ」
「それは……」
昔言い寄ってきた自称貴族みたいなお高くとまったやつに、自分のことを話したところでわかるはずがない。そんな無駄なこと、いつもなら絶対にしない。
でも、目の前の彼は全然悪いやつじゃなくて、身分なんて自分と同じようなものだってこともわかって、しかもそんな風に聞かれたら。
ちょっとなら話してもいいかなと思ってしまったんだ。
おかげで、そのちょっとはかなり長い時間続いた。
「……どうかした?」
聞きながら、フェレナードが椅子を引いて座る。
「そういうの、当たり前なんだと思って」
そういうのとは、彼がかけた背もたれの上着のことだ。
インティスの言葉に彼はふふっと笑うと、テーブルに雑に頬杖をついた。
「当たり前じゃないよ、俺は民間人だからね。貴族でも何でもない。これは着せられてるだけ」
「そうなんだ……」
黙っていれば普通に貴族の人間に見えるのに、今日の所作は今まで見たことがないくらい大雑把だ。
そういえば、これまでずっと側には城の関係者やレイがいた。砂漠の村でも、常に人の目はあった。
貴族のように品良く見えていたのは、彼が隣国からの使いとして、王子の教育係としてあえてそうしていたのだろうか。
それなら、今こうして頬杖をつきながらぼうっと外を眺めているのが、本来の姿なのかもしれない。
確かに、それなら彼も普通の人間に見える。
飲み物に口をつけて、手のひらに収まる木製のカップを持ったまま、フェレナードが話しかけてきた。
「朝食が来るまで、世間話でもしようか」
「世間話?」
「そう、えーっと……」
彼は言葉を探すような素振りでカップを置いた。
「君の村のこと」
「俺の? あっ……」
彼が突然砂漠の国の言葉を使ったので、インティスもつられて同じ言葉で返してしまった。
その様子にフェレナードが笑って続ける。
「実はカーリアンから話は聞いていて、興味はあったんだ。わからない言葉は聞くから教えてくれないかな。例えば……普段どういう風に生活してるのか、とかさ」
「それは……」
昔言い寄ってきた自称貴族みたいなお高くとまったやつに、自分のことを話したところでわかるはずがない。そんな無駄なこと、いつもなら絶対にしない。
でも、目の前の彼は全然悪いやつじゃなくて、身分なんて自分と同じようなものだってこともわかって、しかもそんな風に聞かれたら。
ちょっとなら話してもいいかなと思ってしまったんだ。
おかげで、そのちょっとはかなり長い時間続いた。
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