魔王の番

にーにゃ

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どうして優しくするんだ?

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「ん、」


ほしい
けど寝むい


瞼が落ちそうなりながらも、口をパカッと開けた。


「ふっ、それは欲しいのか?」


ラスはスープを何口か飲ませてくれ、その後は薬湯と栄養剤をくれた。
薬湯は苦く、栄養剤も粉なので飲みづらく、咽そうになりながらも飲み干した。


「ふむ、飲み切ったな
水だ」


水を飲ませてくれ、やっと一息ついた。
まだ声を出していいと許しがないので、ラスに頭を下げてお礼をした。


「ん?
ああ、礼か
それはいい
それより、もう眠いのだろう?」


眠いけど、寝たくないような
もっと、ラスの声を聞きてえ

ラスは俺の葛藤を余所に背中のクッションを取り、寝かせてくれた。


「側にいる」


それを聞いた瞬間に、さっきまでうだうだ考えていた自分が嘘のように安心し、いつの間にか寝ていた。


「早く良くなれ、ルリ」


そう言って、額にキスを落とされたことは俺の知る由もない出来事だった。









「ん、」


あったけえ

隣にある温もりにすり寄り、もう一度寝ようとした時だった。


「起きたか?」


すぐ近くから声が聞こえ、ビクッと体が跳ね、目を見開いた。


何!?
誰だ!?


「落ち着け、ルリ
俺だ」


俺の頭を優しく撫で、低くて落ち着いた声がゆっくりとそう言った。


「あ、」


ラスか・・・
ビックリした
でも何で俺と一緒に寝てるんだ?
・・・あ、そっか
俺、またパニックになったのか
それでラスと離れたくなくて、一緒に寝るように言ったのか
完全に忘れてた


「思い出したか?」


ラスがベッドから出ながら、そう言った。

俺はその言葉に慌てて頷いた。


「昨日よりはまだ顔色がいいな
朝食を用意させるから少し待っていろ」


そう言って、ラスは部屋を出て行った。

ラスは優しい
時々ラスが魔王な事を忘れるくらいだ
声に出さなくても、察してくれて気を遣ってくれる
でもなんで俺の面倒を見てるんだ?
魔王なら使用人とかにやらせればいいことだ
俺が太陽の友達だからか?
それか、俺が王子たちの何かを知っていると思っているとか?
でも、あいつらはラスが殺したって言ってたから、今更王子たちの事を知っても何の得にもならないはずだ
・・・ラスの考えていることが分からねえ


ラスのことで悶々と考えていると


「ルリ」


ラスが帰ってきた。


「朝食だ」


目の前に美味しそうなスープの匂いがした。


「水だ」


そう言って、先に水を飲ませてくれ、次にスープを食べさせてくれた。

胃が小さいままなので、何口か飲んだだけでお腹が膨れ、薬湯と栄養剤を飲んだ。


「午後からはクラルが来る
目の治療だけでなく足の治療も行うだろう
側にいるが、我慢はするな」


俺は頷いた。
昼まではまた寝て過ごし、昼飯を食べ終わって暫くするとクラルが来た。




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