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三章+
対抗戦、開幕
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男子たちを連れて、ゼリカさんは教職員達の元に向かっていった。それと入れ替わりに、ロイド君がやってきた。
「フローラさん。それに、玉木君もいるのかい?」
「えぇ。玉木もここにいますよ」
「ピッ!」
「そうかい。それで、ゼリカさんから僕の武器に細工がされたと聞いたのだが……」
「はい。ロイド様の矢に細工がされました」
「矢? 弓じゃないのかい?」
「矢が真っすぐ飛ぶためには、射手の腕だけではいけません。矢の質もある程度は求められます。矢が歪んでいては真っすぐ飛びませんからね」
「そうなのかい?」
おや。知らないのか? でも、そういえば彼はまだ弓を触って日が浅い。それに彼は侯爵家の跡取り。練習でも、質の悪い矢など使った事もないのだろう。
「ロイド様。今、ここで試し打ちしていただけば、ご理解いただけるかと思います」
「確かにそうだね。えぇと……歪んでいるのはーーコレだね」
そう言って、矢筒から矢を引き抜く。だがーー
「ロイド様? それは歪んでいるのですか?」
「え? これは歪んでいるように見えるがーーほら、特にここの部分だ。わからないかい?」
「申し訳ありません。正直、一目ではわかりません」
「ピッ!」
「そうか。まぁ、試せばわかるかな」
弓を拾って構える。動きも実にスムーズだ。
――キリキリキリ…… ピンッ!――
ロイド君の手から矢が放たれる。だが、途中で軌道が変わり、狙ったであろう木には当たらなかった。
「……成程。これは、確かに気づけて良かったね」
「流石ですね。私達では違いが分かりませんでした」
「ピッ!」
「これでも真面目に修練しているからね。しかしそうなると……半分近くの矢が使えないか」
「申し訳ありません。すぐに止められれば良かったのですが……」
「いや、警備が必要なのはこの場所だけじゃない。それでも気づいてくれたこと、感謝するよ」
そう言って、矢の選定を始める。そう言えば、どうして彼だけがここに来たんだろうか。聞いてみるか。
『ロイド君。他のメンバーは?』
「ん? 紙? ……あぁ、そうか。シルヴァ君達には隠し玉を見せたくなかったからね。それに妨害されたのは僕の武器だけだって話だったから、僕一人で来たのさ。カイウス君やメルク君がいなければ、シルヴァ君が来なくても自然だろう?」
「ピッ!」
成程な。こんな事態になっても勝ちを諦める気はないか。流石はロイド君だな。あれ? というかたったあれだけの歪みを見極められるならーー
『ロイド君。さっき矢が途中で曲がったけど……意図して曲げたりも出来るの?』
「意図して?」
「何を言っているのですか。あれは質の悪い矢を使った場合の話です。基本的に、矢を曲げる事など非現実的です。真っ直ぐ飛ばないーーそれこそ先ほどのような矢は、威力も大きく落ちますからね。それに歪んでいたからといって、どう曲がるかなど予想のつくものではないでしょう」
やっぱりそうなんだな。ゲームでは矢を曲げて~なんて事もしてた覚えがある。だけど、現実は違うよなぁ。
「いや……。成程。玉木君、ありがとう。君のお陰で更に勝率が上がるかもしれない」
「ロイド様? 曲がるのと曲げるのとでは、意味が違いますよ?」
「勿論だよ。けれど幸い、ここにはこれほどのサンプルがある。何度も放てばある程度の法則は見えるかもしれない」
「確かに開始まで、多少は時間がありますが……」
「まぁ、やれるかどうかは試してみてから判断するよ。少し向こうで練習してくる」
そう言って立ち去っていく。凄い向上心だな。
「流石ロイド君だね」
「そうですね。彼を仲間に出来たのは幸運でしたね」
「ホントにね。さて、オレ達も警備を再開しようか」
「えぇ。では、校舎を登りましょうか」
「そうだね。じゃ、オレの背中に乗ってひとっ飛びでーー。……ごめんって。そんな目で見ないでよ。素直に階段から行こうか」
「賢明な判断です。謝罪が無ければ貴方の胸に風穴が空いていました」
…………
様々なトラブルはあったが、いよいよ体育祭も大詰めとなった。
最後はクラス対抗戦。通常は1年、2年、3年と順番に行われる。
しかし今年の1年の対抗戦は、神聖視される神鏡の使い手がいる。それに加えて、国の英雄。双竜の弟子達までも参加するのだ。今回は例外的に1年の戦いは最後に行われる。
「さぁ皆様……。体育祭もいよいよ大詰め!! 最後は神鏡の使い手、クレアさんと、双竜の弟子達の戦いだぁ!!」
「「わぁぁぁぁ!!」」
マイクを片手に少年が声を上げる。彼は1年。その上、体育祭の実行委員会でも無い。しかし、1年のAクラスで行われた、対抗戦出場者決定トーナメント。この実況をしていた所を、たまたま実行委員会のメンバーが目撃した。そうして彼は今回だけ特別に、実況を担当することとなったのだ。
「実況は1年Aクラス。ホリーエがお届けします!! そして更に……! 今回はなんと、解説に双竜のお二人をお招きしております!!」
「よろしくな」
「よろしく頼むよ」
「さぁ!! どんな戦いが繰り広げられるのか……。まずは、選手入場です!!」
「「わぁぁぁぁ!!」」
その言葉に校庭の両側から、クラス別に姿を現す両チーム。歓声も更に大きなものとなる。
「さて、選手紹介といきましょう!! まずはAクラス。神鏡の使い手、クレアさん要するチームです!」
実況が机に片足を乗せて興奮している。だが、興奮しているのは彼だけではない。見ている生徒達も同様だ。校庭はもはや、試合会場のような空気になっている。
「1人目はーー神鏡の使い手、クレアさん!! 彼女は数か月前、この学園ただ一人の平民として入学しました!! そんな彼女も今や、国の法具、神鏡に選ばれし者です!! 噂では守護騎士の召喚に成功しているとのことですが……どんな姿を見せてくれるのでしょうか!!」
「クレアー!! 頑張れよー!!」
「おおっと!! 解説のゼルク様はクレアさんを応援しているようだ!!」
「うぅ……恥ずかしい……。でも、頑張ります!!」
「おぉ! 恥ずかしさと決意が同居しているようだ! それでもやる気も充分なのでしょう!
続いて2人目ーー我らが国の皇太子であり、神剣の使い手にも選ばれた……シルヴァ殿下だぁぁぁ!! 彼はゼルク様の弟子としても有名です。そんな殿下、今回は神剣を有していませんが……どのような戦いをするのでしょうか!?」
「よろしく頼む」
「最後の一人は先日のAクラス対抗戦出場者決定トーナメントの優勝者! サラ様だぁぁ!! 私も先日のトーナメントで彼女の強さをこの眼で見ております! 彼女は双竜のお弟子ではないようですが…その実力は本物です!」
「よろしくお願いします」
「どんどんいきましょう! 次はBクラスの選手です!!
神鏡に加えてシルヴァ殿下。これらを相手取る事など不可能……。誰もがそう思っておりました!
しかしなんと……Bクラスは出場者が全員、双竜の弟子とのことです!! 昼の徒競走でも、その早さはシルヴァ殿下と同等でした!! これは大いに期待出来ます!!」
「「おぉー!!」」
「まず一人目はーーシルヴァ殿下のライバル。カイウス君だ!! 皆様ご存じの通り、彼が槍を持てばシルヴァ殿下にも勝ち越す事が出来ます!! 恐らくBクラスのエースとなるでしょう!!」
「エースかどうかは知らんが……まぁ、よろしく頼む」
「続いて二人目はーー優しい好青年! メルク君!! 私は恥ずかしながら、彼が強いという印象は持っておりません!! ですが……先日の2神教の騒動では先に立って父の暴走を止めたと聞いております! それに昼の告白……! 彼が強い男だという事は間違いないでしょう!!」
「ぐっ!? こ、ここでも辱しめを受けるなんて……。で、ですが……よろしくお願いします!」
「最後は馬に乗った貴公子……ロイド君!! 彼は今回、神鏡に勝つためにと、弓と馬の使用許可を申し出たそうです! 彼は剣の授業でも好成績を収めており、その上ゼルク様の弟子にもなっています! そんな彼がわざわざ弓と馬を扱う理由……。ここは是非、注目したいポイントです!!」
「よろしく頼むよ」
「さぁ! 各選手の紹介も終わりました!! いよいよ……戦いの火ぶたが切られようとしております!!」
「フローラさん。それに、玉木君もいるのかい?」
「えぇ。玉木もここにいますよ」
「ピッ!」
「そうかい。それで、ゼリカさんから僕の武器に細工がされたと聞いたのだが……」
「はい。ロイド様の矢に細工がされました」
「矢? 弓じゃないのかい?」
「矢が真っすぐ飛ぶためには、射手の腕だけではいけません。矢の質もある程度は求められます。矢が歪んでいては真っすぐ飛びませんからね」
「そうなのかい?」
おや。知らないのか? でも、そういえば彼はまだ弓を触って日が浅い。それに彼は侯爵家の跡取り。練習でも、質の悪い矢など使った事もないのだろう。
「ロイド様。今、ここで試し打ちしていただけば、ご理解いただけるかと思います」
「確かにそうだね。えぇと……歪んでいるのはーーコレだね」
そう言って、矢筒から矢を引き抜く。だがーー
「ロイド様? それは歪んでいるのですか?」
「え? これは歪んでいるように見えるがーーほら、特にここの部分だ。わからないかい?」
「申し訳ありません。正直、一目ではわかりません」
「ピッ!」
「そうか。まぁ、試せばわかるかな」
弓を拾って構える。動きも実にスムーズだ。
――キリキリキリ…… ピンッ!――
ロイド君の手から矢が放たれる。だが、途中で軌道が変わり、狙ったであろう木には当たらなかった。
「……成程。これは、確かに気づけて良かったね」
「流石ですね。私達では違いが分かりませんでした」
「ピッ!」
「これでも真面目に修練しているからね。しかしそうなると……半分近くの矢が使えないか」
「申し訳ありません。すぐに止められれば良かったのですが……」
「いや、警備が必要なのはこの場所だけじゃない。それでも気づいてくれたこと、感謝するよ」
そう言って、矢の選定を始める。そう言えば、どうして彼だけがここに来たんだろうか。聞いてみるか。
『ロイド君。他のメンバーは?』
「ん? 紙? ……あぁ、そうか。シルヴァ君達には隠し玉を見せたくなかったからね。それに妨害されたのは僕の武器だけだって話だったから、僕一人で来たのさ。カイウス君やメルク君がいなければ、シルヴァ君が来なくても自然だろう?」
「ピッ!」
成程な。こんな事態になっても勝ちを諦める気はないか。流石はロイド君だな。あれ? というかたったあれだけの歪みを見極められるならーー
『ロイド君。さっき矢が途中で曲がったけど……意図して曲げたりも出来るの?』
「意図して?」
「何を言っているのですか。あれは質の悪い矢を使った場合の話です。基本的に、矢を曲げる事など非現実的です。真っ直ぐ飛ばないーーそれこそ先ほどのような矢は、威力も大きく落ちますからね。それに歪んでいたからといって、どう曲がるかなど予想のつくものではないでしょう」
やっぱりそうなんだな。ゲームでは矢を曲げて~なんて事もしてた覚えがある。だけど、現実は違うよなぁ。
「いや……。成程。玉木君、ありがとう。君のお陰で更に勝率が上がるかもしれない」
「ロイド様? 曲がるのと曲げるのとでは、意味が違いますよ?」
「勿論だよ。けれど幸い、ここにはこれほどのサンプルがある。何度も放てばある程度の法則は見えるかもしれない」
「確かに開始まで、多少は時間がありますが……」
「まぁ、やれるかどうかは試してみてから判断するよ。少し向こうで練習してくる」
そう言って立ち去っていく。凄い向上心だな。
「流石ロイド君だね」
「そうですね。彼を仲間に出来たのは幸運でしたね」
「ホントにね。さて、オレ達も警備を再開しようか」
「えぇ。では、校舎を登りましょうか」
「そうだね。じゃ、オレの背中に乗ってひとっ飛びでーー。……ごめんって。そんな目で見ないでよ。素直に階段から行こうか」
「賢明な判断です。謝罪が無ければ貴方の胸に風穴が空いていました」
…………
様々なトラブルはあったが、いよいよ体育祭も大詰めとなった。
最後はクラス対抗戦。通常は1年、2年、3年と順番に行われる。
しかし今年の1年の対抗戦は、神聖視される神鏡の使い手がいる。それに加えて、国の英雄。双竜の弟子達までも参加するのだ。今回は例外的に1年の戦いは最後に行われる。
「さぁ皆様……。体育祭もいよいよ大詰め!! 最後は神鏡の使い手、クレアさんと、双竜の弟子達の戦いだぁ!!」
「「わぁぁぁぁ!!」」
マイクを片手に少年が声を上げる。彼は1年。その上、体育祭の実行委員会でも無い。しかし、1年のAクラスで行われた、対抗戦出場者決定トーナメント。この実況をしていた所を、たまたま実行委員会のメンバーが目撃した。そうして彼は今回だけ特別に、実況を担当することとなったのだ。
「実況は1年Aクラス。ホリーエがお届けします!! そして更に……! 今回はなんと、解説に双竜のお二人をお招きしております!!」
「よろしくな」
「よろしく頼むよ」
「さぁ!! どんな戦いが繰り広げられるのか……。まずは、選手入場です!!」
「「わぁぁぁぁ!!」」
その言葉に校庭の両側から、クラス別に姿を現す両チーム。歓声も更に大きなものとなる。
「さて、選手紹介といきましょう!! まずはAクラス。神鏡の使い手、クレアさん要するチームです!」
実況が机に片足を乗せて興奮している。だが、興奮しているのは彼だけではない。見ている生徒達も同様だ。校庭はもはや、試合会場のような空気になっている。
「1人目はーー神鏡の使い手、クレアさん!! 彼女は数か月前、この学園ただ一人の平民として入学しました!! そんな彼女も今や、国の法具、神鏡に選ばれし者です!! 噂では守護騎士の召喚に成功しているとのことですが……どんな姿を見せてくれるのでしょうか!!」
「クレアー!! 頑張れよー!!」
「おおっと!! 解説のゼルク様はクレアさんを応援しているようだ!!」
「うぅ……恥ずかしい……。でも、頑張ります!!」
「おぉ! 恥ずかしさと決意が同居しているようだ! それでもやる気も充分なのでしょう!
続いて2人目ーー我らが国の皇太子であり、神剣の使い手にも選ばれた……シルヴァ殿下だぁぁぁ!! 彼はゼルク様の弟子としても有名です。そんな殿下、今回は神剣を有していませんが……どのような戦いをするのでしょうか!?」
「よろしく頼む」
「最後の一人は先日のAクラス対抗戦出場者決定トーナメントの優勝者! サラ様だぁぁ!! 私も先日のトーナメントで彼女の強さをこの眼で見ております! 彼女は双竜のお弟子ではないようですが…その実力は本物です!」
「よろしくお願いします」
「どんどんいきましょう! 次はBクラスの選手です!!
神鏡に加えてシルヴァ殿下。これらを相手取る事など不可能……。誰もがそう思っておりました!
しかしなんと……Bクラスは出場者が全員、双竜の弟子とのことです!! 昼の徒競走でも、その早さはシルヴァ殿下と同等でした!! これは大いに期待出来ます!!」
「「おぉー!!」」
「まず一人目はーーシルヴァ殿下のライバル。カイウス君だ!! 皆様ご存じの通り、彼が槍を持てばシルヴァ殿下にも勝ち越す事が出来ます!! 恐らくBクラスのエースとなるでしょう!!」
「エースかどうかは知らんが……まぁ、よろしく頼む」
「続いて二人目はーー優しい好青年! メルク君!! 私は恥ずかしながら、彼が強いという印象は持っておりません!! ですが……先日の2神教の騒動では先に立って父の暴走を止めたと聞いております! それに昼の告白……! 彼が強い男だという事は間違いないでしょう!!」
「ぐっ!? こ、ここでも辱しめを受けるなんて……。で、ですが……よろしくお願いします!」
「最後は馬に乗った貴公子……ロイド君!! 彼は今回、神鏡に勝つためにと、弓と馬の使用許可を申し出たそうです! 彼は剣の授業でも好成績を収めており、その上ゼルク様の弟子にもなっています! そんな彼がわざわざ弓と馬を扱う理由……。ここは是非、注目したいポイントです!!」
「よろしく頼むよ」
「さぁ! 各選手の紹介も終わりました!! いよいよ……戦いの火ぶたが切られようとしております!!」
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