身代わりから始まる恋の行方は夜想曲と共に

りんか

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第三章 二人の距離

(3)

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「――おまえが、ミルスガルズの王女か」

 抑揚のあまりない低い声が、玉座に座りこちらを見据えた男から発せられる。

 年齢の頃は、叔父のオズウォンドとそれほど変わらないように思えた。茶色の癖のある髪をまるで鬣のように立たせ、青灰色の冷たい眼差しで見おろしてくる男にまたがって、こちらにぐったりと首を傾けているのは――そこまで確認して、リリーシャはいたたまれずに目を伏せた。

「……はい。初めてお目にかかります。ミルスガルズより参りました、リリーシャ・フォン・ユリル・ミルスガルズと申します。……リリーシャとお呼びくだ」

 リリーシャが感情を押し殺して、必死に言葉をつむぐ。が、言い終わるより先に、割りこんできた女の荒い吐息。それに、彼女は再び肩を跳ねあげて硬直してしまった。

「どうした? なぜ、こちらを見ない? ハッ、ミルスガルズの王族は、目上の者と話をするときでもそのような態度をとるのか? 不躾もいいところだな」
「……っ」

 卑猥な水音に混じって嘲笑と共に尋ねられるが、リリーシャは青みがかった紫の髪を揺らすだけで、顔を上げられそうになかった。

「なんだ? もしや、こういった遊戯には不慣れなのか?」
「…………」
「くくくくくっ、まあ良い。こちらに来い、リリーシャ。……と、おまえは用済みだ。もう二度と来なくて良いわ、とっとと失せろ」

 細く青白い肉体がうつむいていた視界に飛びこんできて、リリーシャは手のひらで口を覆った。大丈夫ですか、と声をかける前に、引きずるようにしてどこかに行ってしまう。

 リリーシャは唇を噛んでから、玉座の方へ足を向けた。

「もっとだ、もっと近くに来い」
「……失礼、します」

 ヴィルフレイドの広げられた両足の間にまで近づいたリリーシャの顎がグイと掴まれて、そのまま引き寄せられる。突然のことにバランスを崩したリリーシャは、玉座の方へ倒れこみそうになるのを必死にこらえた。

「っ」

 間近に迫った青灰色の目が、値踏みするように彼女の全身を這いまわっていく。それに寒気を感じた彼女は、小さく息を飲んだ。

「ほお……、まずまずの器量ではないか。さすが、あの小生意気なリリセニーナの妹。あの小娘がなかなか手放そうとしなかったことにも、得心がいく」

 リリーシャの後ろ髪がつかまれ、ヴィルフレイドの膝に彼女の頬が強く押しつけられる。疑問に思う間もなく、彼女の淡黄色の瞳に映ったのはそそり立ったままの男根だった。

「おまえが続きをしろ」
「……え」

 愕然となりながら、リリーシャが顔を強張らせる。

「どうした? まさか王族ともあろう者が、伽教育もまともに受けていないわけがなかろう?」
「……で、ですが」
「陰唇で咥えるのに抵抗があるならば、まずはおまえのその手と口で良い。手と口を使い、丹念にしごけ」

 リリーシャの頬が羞恥に染まり、小刻みに震えるリリーシャの両手がヴィルフレイドのものに伸ばされていく。

 目にするのは、初めてではないけれど……

 包むように覆ってから、彼女はゆっくりと上下に手を動かし始める。
 ヌチャ、と後を引くような卑猥な音。生温かく、ドクドクと脈打つそれを直視し続けられず、耐えられなくなったリリーシャは下を向いた。

「……未熟者が。そのような稚拙な動きでは、何も感じぬわ」

 頭上から響いてくる声に押されるように、リリーシャの手に力がこもり、動きも早まっていく。が。

「もう良い」

 制止と共に足で邪険に払われ、リリーシャは床に手をついた。はぁ、と張りつめていた息が落とされ、彼女の爪が床をひっかく。

 おわった、の……?

 その場で硬直していたリリーシャの髪が再び鷲掴みされ、淡黄色の瞳が苦痛に歪んだ。

「つ……っ」

 抗う間もなく顔を持ちあげられ、すぐに下ろされる。前かがみになるリリーシャに、ヴィルフレイドは自身の腰を突き出した。

「舐めろ」
「っ」

 示されたものに、リリーシャは瞳を揺らす。逸らしたくても、髪が掴まれている以上逃げ場はない。堪えていたものが、彼女の頬を伝い始めた。

 早くしろ、と髪を強く引っ張られる。

 何もかもが麻痺して、壊れていく――そう感じながら、リリーシャはそれに唇を寄せ、そこで考えることも何もかもをすべて停止させた。
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