消えた猟奇的殺人犯

チャロキメデス

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第二章 高橋 賢治

高橋 賢治

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 中西は殺人容疑から殺人未遂犯となり、全国に指名手配となった。

 高橋はこの猟奇的殺人事件を担当した時には、まだ今井先輩と一緒に捜査にあたっていた。

「今井さん、どうしてるだろうか。」高橋は心で呟いた。

 元々、高橋は刑事部の捜査ニ課にいたが、当時一課にいた今井さんに引っ張られる形で、一課に来た。

「お前は一課に向いてるよ、力を貸してくれ」

 今井は高橋に言った。高橋は何処が向いてるか当時はよくわからなかったが、今は何となくその理由がわかる気がした。

 高校の時は柔道部で、県大会でも優勝するくらいの実力だった。その時の顧問に警官になれと勧められていた。

 特になりたいものが無かった高橋は、顧問の勧めのまま、警官になったが、意外と仕事に向いていた。特に捜査一課に配属になってから尚更そう思うようになっていた。

 北林勝と菅野誠一は後輩にあたる。若いが2人とも優秀だ。気がつけば自分は50歳になっていた。

 若い時に結婚はしたが、直ぐに離婚した。子供はまだ嫁のお腹に居る時だった。だから出産時の立ち会いもその後の娘の祝い事などにも参加出来なかった。刑事だし、家族を危険に巻き込まない為には良い判断だったと自分に言い聞かせた。

 元嫁には言っていなかったが、娘の顔を何度かお忍びで見に行った事があった。だがその娘ももう居ない。

「高橋さん、今井さんの居る場所ですが・・」北林が言った。

「あぁ、有難う」

「高橋さん、腰の方は大丈夫ですか?」

「あぁ、大分いいよ。」

「俺も一緒に行きましょうか?」北林が心配そうに顔を覗き込んできた。

「いや、一人で行く、今井さんも気まずいだろうからな。」高橋はボールペンをいじりながら言った。

「高橋さん、中西の足取りですが」菅野が声をかけてきた。

「うん?」「何か分かったのか?」

「はい、中西があの部屋に居た日なんですが、あの後、10分後位に近くのコンビニで買い物をしてます。」
「防犯カメラに映っていたようです。」

「うん?」「あの現場の近くでか、おかしいな」高橋は不思議だった。消えた事も勿論不思議だったが、自分なら現場から直ぐにでも遠くへ行きたいところだからだ。

「その映像観れるか?」

「はい。」菅野が準備のため居なくなった。

 「何のために?」高橋は皆目見当が付かなかった。高橋はあの日以来考えていた。馬鹿げていたが、瞬間移動や透明人間など、非現実的なことを考えざるを得なかった。中西には特別な能力があるとしか思えなかった。

「準備出来ました。」菅野が映像を流した。

 そこにはあの日の姿のままの中西が映っていた。灰色のパーカー、スニーカー、黒いキャップを被っていた。間違いない、中西だ。

「何を買ったんだ?」

「はい。」「食べ物や飲み物、雑誌などですね。」

「量はどの位だった?」

「そうですね、2日間くらいはそれで凌げる量ですかね?」菅野が答えた。

「そうか、近くのビジネスホテルをあたってくれ。」
「俺は他に映像がないか、近くの聞き込みに行ってくる。」

「今井さんの方はどうします?」北林が聞いてきた。

「落ち着いたら俺1人で顔を出すよ」「何か手がかりになる事が分かるかも知らない。」

「今井さんは中西と接触した事があるんだ。」高橋は今井さんが会ってくれたとしても当時の事は言わないかもしれないと思った。

 娘を目の前で殺された当時の事を聞かれたくないのは当然のことだ。

 だが、こうしている間にも中西が新たな殺人を企てるかもしれない。止まってる暇はなかった。

 今井さんの「アイツは普通じゃない」と言った言葉が高橋の脳裏を掠める。「今井さんは何か知っているはずだ。」

 少し腰に不安はあるものの、高橋はゆっくりと立ち上がり、聞き込みに行った。今日も暑く、自然と汗が流れてきた。あの日の冷や汗と重なり、嫌な予感がした。
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