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しおりを挟む息子ルインが産まれて3か月ほどした頃から、キアラは週に2度ほど外出を始めた。
毎回3時間ほどで帰宅するので、チャールズは結婚当初にも行っていた奉仕活動や買い物だろうと思い、気にも留めていなかった。
それよりも、自分のモノが不能になっていることが非常事態だったから。
最初は楽観的にそのうち元に戻ると思っていた。
ルインの呪いかもしれないと言えばキアラには笑われたが、半分本気で半分冗談のつもりだった。
だが、あれからも反応する気配がない。
キアラが定期的に出かけ始めた頃に、チャールズも本格的に焦りを感じて不能に効く食べ物や薬などを必死で調べ始めていた。
数か月、何を試しても反応しない。
やがて行き着いた先が、オーラを見るという占い師のところだった。
悪霊に取り憑かれているのではないかと考えたからだ。
結果、思った通りであった。
占い師が言うには、複数の女性の恨みを買っているということだった。
心当たりはあるか?と聞かれて、ない。と答えた。
占い師は本当に?と疑った。
占い師に聞かれるまま答えた。
貴族か?……そうだ。
結婚はしている?……している。
子供はいる?……半年ほど前に産まれた。
奥様以外の女性と関係を持った?……持った。
奥様の妊娠中に?……もちろん。
奥様は知っている?……知っている。
奥様は浮気を許した?……二度と妻には触れない約束をした。
妻には触れないということは浮気が許された?……妊娠させなければ遊んでいいと言われた。
奥様よりも女遊びを選んだ?……そうだ。妻一人では満足できない。
今まで女性を抱いた人数は?……娼婦を除くと30人くらいか?
愛人志望の女性はいた?……いたな。面倒だから切った。
全ての女性と円満に別れたわけではない?……そうだな。
質問に答えた今でも女性に恨まれる覚えはないと言える?……どこに恨まれる要素が?
呆れた占い師は、チャールズを諭すように言った。
「まず、奥様に恨まれていてもおかしくはありません。
だが、奥様は呆れたもしくは見捨てたと思われるため、恨みの感情はないでしょう。」
「呆れた?見捨てた?僕を?」
「当然でしょう。妊娠中に浮気を知り、あなたに触れられたくないとおっしゃった。
そう思わせたのはあなたです。反省もしなかったのでは?」
「妻だけじゃ満足できない。アイツは経験が浅いから受け身でつまらない。
しかも、すぐに妊娠した。もっと快楽を仕込みたかったのに。」
「貴族の妻が妊娠することは喜ばしいのでは?
それよりも、奥様一人では満足できないと伝えたのですか?」
「ああ。だから女遊びを許したんだろう。」
「そうでしょうね。そして自分は触れられたくないと思った。
あなたを呆れ、見捨てるのは当然のことでしょう。
他の女性にも、あなたはおそらく非常識なことを言って恨みを買っています。」
「見捨てるのが当然……それに非常識って。貴族の男なんてこんなもんだろう?」
「いえ、貴族としても男としても非常識で最低なことだと思いますよ。自覚が無さ過ぎて驚きです。
娼婦ならともかく愛人でもない女性と30人も関係を持てば、傷つける言葉を言った可能性もある。
一人ひとりは小さくとも不快に感じた女性があなたに一瞬の憎しみを込めた。
それだけでも恨みが徐々に増幅されていきますからね。」
「……そんな。なんとかならないのか?」
「あなたが邪な性欲を望んでいる限り、治らないでしょう。」
「つまり、女遊びをする生活をやめればいいんだろう?今は抱きたくても抱けないから一緒だ。」
「違います。抱きたいと考えている時点で邪な性欲なのです。」
「だが、妻はもう抱けない。他の女しか抱けないのに邪な性欲だと言われたら、もう誰も抱けない?」
「そうなりますね。ということは、治す必要もないですねぇ。」
絶望した様子のチャールズに、占い師は高い水晶を売りつけた。
『水晶があなたの心を浄化してくれます』と。
トボトボと帰っていくチャールズを見送り、占い師は思った。
女性の恨みを買っているというのも間違いではないが、不能になった理由はそれではない。
間違いなく秘薬のせいだろう。
魔女がまだいるとわかった。だが、占い師にはそれが誰か突き止める気はない。
似たように魔力を持った仲間がまだいたことを嬉しく思っただけだった。
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