8 / 10
8.
しおりを挟むキアラは外出先から戻った途端、チャールズに問い質された。
「キアラ、君は外出で……あの部屋で何をしているんだ?」
あら。跡をつけたのね。
出かけなくなって真面目に仕事をしているのかと思えば、妻の行動を疑い始めたなんて。
ま、いずれバラすつもりだったしいいわ。
「何って、そうねぇ。一般的には不貞、というものかしら。」
「なっ!レナードとか?僕との閨事を断っておいてどういうつもりだ!」
「どういうつもりも、あなたには沢山の女性がいたじゃない。
私はレナード一人だけよ?
あなたとの閨事を断ったのは病気を移されたら嫌だって言うのと、私より他の女性を選んだから。」
「今は誰とも遊んでいない!」
遊べないんでしょ?
「それは不能になったからでしょ?元に戻れば遊ぶじゃない。」
「そんなつもりはもうない!治ればキアラ一筋になる。」
勘弁してよ。私ひとりじゃ満足できないって言ったのはあなたなのに。
「私はご免だわ。
私の相手はつまらないのでしょう?レナードはそんなことは言わない。
彼は私をとても大切に抱いてくれるわ。知らなかった快感も教えてくれた。
私の体はレナードを求めているの。
不能が治ったとしても、あなたと閨を共にしたくないわ。」
「っだが、妻が不貞をするなんて離婚されても文句は言えないぞ!」
そうよねぇ。理不尽よねぇ。夫の浮気は許されるのに、どうしてかしら。
「どうして?契約したじゃない。
『妊娠しなければ浮気は認める。妊娠したとしても侯爵家の子だと認知しない。』
つまり、あなただけでなく私の浮気も認められているの。
もし、レナードの子供を妊娠したら、実家の養子にしてもらうわ。
あなたの子供じゃないから侯爵家に認知してもらうわけにはいかないもの。」
私も浮気をできるということと、妊娠したら侯爵家の籍ではなくて実家の養子にしてもらう。
この2つの仕掛けがわからず契約したのはあなたなんだから。
魔女の魔力を継げるかもしれない女の子を産むのは魔女の宿命。
実家も喜んで引き取ってくれるわ。
「そんなの、詭弁だ!」
「詭弁じゃないわ。あれは正式な契約書なんだから。
あなたと私、どちらにも通用する文言よ。
それに、あなたが不能のままならルイン以外の子供を作ることすら不可能。
私と離婚して再婚するの?不能なのに?社交界に不能を知られたいの?
私は別に離婚しても構わないわよ?
離婚したらレナードと結婚して子供を産めるし。でもルインには時々会わせてね。」
離婚すれば、ルインと会えなくなる。
離婚しなければ、この先に産むであろう娘と会えなくなる。
魔女となる娘を産むためには、この2択になってしまう。
「不能、不能と連呼するな!
もしお前が妊娠したら、両親が僕の子供だと勘違いするぞ?不貞がバレてもいいのか?」
「構わないわ。経緯を説明するし、契約書もあるし。
なんなら、夫が不能になったので侍従に体を慰めてもらっていますって私が言ってもいいわよ。
妊娠してなくても事実なんだから。」
チャールズは何か言いたいようだけど、口をパクパクして言葉にならないみたい。
やがて、白目を向いて倒れてしまった。
あらら。
どうやら正気を失ってしまったチャールズとは離婚話どころではなくなってしまった。
344
あなたにおすすめの小説
貴方の幸せの為ならば
缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。
いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。
後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……
その結婚、承服致しかねます
チャイムン
恋愛
結婚が五か月後に迫ったアイラは、婚約者のグレイグ・ウォーラー伯爵令息から一方的に婚約解消を求められた。
理由はグレイグが「真実の愛をみつけた」から。
グレイグは彼の妹の侍女フィルとの結婚を望んでいた。
誰もがゲレイグとフィルの結婚に難色を示す。
アイラの未来は、フィルの気持ちは…
隣の芝生は青いのか
夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。
「どうして、なんのために」
「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」
絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。
「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」
「なんで、どうして」
手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。
パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。
【完】婚約破棄ですか? これが普通ですよね
えとう蜜夏
恋愛
王国の夜会で第一王子のフィリップからアマーリエ公爵令嬢に婚約破棄を言い渡された。よくある婚約破棄の一場面です。ゆるっとふわっと仕様です。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
どうかそのまま真実の愛という幻想の中でいつまでもお幸せにお過ごし下さいね。
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、私は婚約者であるアルタール・ロクサーヌ殿下に婚約解消をされてしまう。
どうやら、殿下は真実の愛に目覚めたらしい……。
しかし、殿下のお相手は徐々に現実を理解し……。
全五話
僕の我儘で傲慢な婚約者
雨野千潤
恋愛
僕の婚約者は我儘で傲慢だ。
一日に一度は「わたくしに五分…いいえ三分でいいから時間を頂戴」と僕の執務室に乗り込んでくる。
大事な話かと思えばどうでも良さそうなくだらない話。
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
殿下の愛しのハズレ姫 ~婚約解消後も、王子は愛する人を諦めない~
はづも
恋愛
「すまない。アメリ。婚約を解消してほしい」
伯爵令嬢アメリ・フローレインにそう告げるのは、この国の第一王子テオバルトだ。
しかし、そう言った彼はひどく悲し気で、アメリに「ごめん」と繰り返し謝って……。
ハズレ能力が原因で婚約解消された伯爵令嬢と、別の婚約者を探すよう王に命じられても諦めることができなかった王子のお話。
全6話です。
このお話は小説家になろう、アルファポリスに掲載されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる