こっそりと仕返してから、公認で愛人持ちますね。

しゃーりん

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侯爵には、チャールズが倒れた経緯を説明した。


「自分は何人もの女性を関係を持っておきながら不能になり、妻の不貞で正気を失うとは。
 ちゃんとした契約書だ。詰めが甘かったのはチャールズだ。キアラに問題はない。
 どうする?離婚したいか?アイツはもうダメだろう。継ぐのはルインになる。」

「私はどちらでも。ただ、女の子を産みたいのです。そうなると離婚になりますよね。」

「女の子、か。男の子かもしれないのに?」

「女系なのです。ルインは珍しく男の子で驚きました。次は必ず女の子です。」


侯爵は、私が作る薬がよく効くことを知っている。
魔女だとは知らなくても、昔に薬で栄えた一門の末裔で遺伝的なものがあると思っている。
智や武、芸や医などいろんな分野が、魔力が衰えた今でも細々と受け継がれていることを知っている。
この侯爵家から縁談を望まれたのも、私の外用薬のせいだから。
侯爵は気づいただろう。女の子に魔力が継がれるのだと。

侯爵はチャールズには私の持っているであろう魔力の話はしなかった。
利用しようとする悪意や裏切りが産まれる子供の魔力に影響を及ぼすことを知っているのだと思う。
武の一族の一人が利用されて王族を滅ぼそうとした過去があるから。
チャールズにはそんな裏を悟らせることなく、私を幸せにするような結婚を望んでいた。

キアラが騙されていたように侯爵も息子の性欲の強さによる女遊びに気づかなかった。
男の子が産まれて、しかも私が女系だと言ったことでルインに魔力が継がれていないと悟った。
不能もキアラの報復だと気づいただろう。
もう、チャールズの子供を産むつもりはないというキアラの意思表示を。


「わかった。その男と子を成し、女の子であればチャールズの子供として侯爵家で育てる。
 そして、いずれ侯爵令嬢として嫁がせるが、キアラは私が生きている限り侯爵家のために薬を作れ。
 異議がなければその男との関係を認める。」


わあ!浮気が公認になったわ。

侯爵は私が作る育毛剤を愛用しているの。
もちろん、夫人には内緒よ?
5年前くらいから頭の天辺付近がうす~くなってきたらしいわ。まだ30代だったのに。
今でもモテる男性だから、ハゲが欠点のようで余計にストレスを感じて薄くなり始めてて。

でもハゲは……まぁ、遺伝、もあるかしら。
前侯爵様も天辺だけ不毛地帯になってしまったらしいから。

この国の男性は、天辺ハゲや剃りこみハゲが多いの。
老けて見えるし、人相が悪く見えるとカツラを愛用する人もいるくらい。

だから、私は作った育毛剤を高値で販売し始めたの。人伝手に密かに広まったわ。
売れる売れる。完売で入荷待ち。殺到よ。

侯爵は密かに出回っている育毛剤の出所が私の実家だと突き止めて、誰が作っているかはわからないけれど確実に融通してもらうために私をチャールズの婚約者にしたの。
こっそり育毛剤の融通を促された時は笑ってしまったわ。

そして私が作れると知って、歓喜していたわ。

育毛剤の利益目的よりも、自分のために侯爵家に残ってほしいのよ。この人は。


「ありがとうございます。必ず女の子を産みます。」


チャールズとの契約書は破棄することになった。
キアラは侯爵から第3の選択肢を与えられ、それを受けたからだ。
ルインも、この先産む女の子も、侯爵家の子供として共に暮らすことができるのだ。

侯爵は本当は悔しいはず。
チャールズのせいで薬に長ける力を持った孫を失ったのだから。
侯爵家を継がせる血の繋がった孫は、もうルインしかいない。
血の繋がらないキアラが産むであろう女の子には継がせられないのだ。
しかし、それでもキアラを手放したくない侯爵と、ルインの側にいられるキアラは協定を結んだ。










 


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