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しおりを挟むうちの男爵領は、男爵領にしては昔からそこそこ栄えているらしい。
領民たちもそこそこ平和でそこそこ蓄えがあってそこそこ楽しめる場所もあって。
昔から、ここを出てよその領地や王都に行っても戻ってくる人が多いそうだ。
男爵家には血筋に秘密がある。
それは貴重な薬草栽培ができること。
とんでもない場所でしか採集できなかった薬草がこの男爵家では育つ。
株分けしても、他では育たないらしい。
決して過剰供給することなく、非常時以外は最低限を出荷して予備は保管。
これを保つことで安定した収入にもなり、領民のために役立てていくというのが男爵家の決まりである。
量を増やしても国が儲かるだけ。他国に多額で売るから。
国に薬草を納めるこの仕組みを父は変えたいそうだけど、なかなか難しい。
ちなみに男爵家の血筋の直系にしか育てることができないので、母は仲間外れ。
だけど、母のお陰で領地は少しオシャレになった。
街の服屋ではアレンジで印象が変わる服が増え、パン屋では月毎に新商品を出してみたり、花屋では小さなブーケを並べてみたり。アドバイスで新しい男爵領になる。
これは、よそからやってくる嫁によって毎回ある変化らしい。
爵位を上げる気もなく、税はきっちりと納め、健全な領地経営の男爵家は領民にも好かれている。
母の父である公爵は、うちのことを知っていたらしい。
浮き沈みの激しい男爵位の中で、昔から安定している珍しい領地経営。
まるで、わざと爵位を男爵のままにしているかのようで……
納める税の額が少なくて済むから?目立ちたくないから?
知っている者が少ない、貴重な薬草を栽培する男爵家。それを驕ることもない。
そこから娘を望まれた公爵は安心したそうだ。
男爵親子には娘を利用する気がない。善意で結婚を申し込んでくれたとわかる。
おそらく男爵家で穏やかに暮らしていけるだろう。と。
教室で、図書室で少しの会話を交わすだけの同級生だった父と母は、お互いの印象は良かったそうだ。
だから無謀にも結婚を申し込んで受けるという結果になった。
同級生だったとしても交際0日婚。
それにしては、未だに仲が良くて思い合っているのがわかる夫婦。
私も学園でそんな相手を見つけることができるかな?
元公爵令嬢である母からの礼儀作法の指導でマナーに不安はない。
勉強も、父母共に成績優秀者であったらしく教えるのも上手いし私も地頭がいいらしい。
それは弟のコナーもそうだった。
弟は12歳。私は15歳。
もうすぐ学園に入学する私は、寮に入る。
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