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しおりを挟む『ゲルツはガーランド公爵の息子ではないかもしれない』
学園では、なぜか急にその噂話が広まっていた。
ゲルツが公爵令息だから従ってきた者にとっては驚くことである。
問題は事実かどうか。
それも今後を左右するけど、ガーランド公爵が知っていて息子としている場合は?
いろんな憶測が飛び交っていた。
噂の出所は、両親から疑惑の真相を聞いた生徒たち。
ホリーが話した母の事実を、生徒たちが家で話した。
そうすると当時を知っている親としては、『公爵夫人は昔、公爵と違う人と……』なんて話もどんどん出てくる。
卒業前の妊娠をようやく知った親もいて、母の嫌がらせよりも公爵夫妻の不貞の方が罪だと怒る親もいる。
(いや、母は嫌がらせしてないんだけど?そこも認識して?)
ゲルツの耳にも噂が届き、『はぁ?』と言って帰っていったそうだ。
噂が事実かを確認しに帰ったのか、真偽は関係なく噂を収める方法を考えるためか。
いずれにしても、ゲルツが今後、どう動くかが怖かった。
一方、ガーランド公爵は困惑していた。
荷を奪ったり、破損させたり、火をつけさせたり、いろんな指示をしてワザと負債をつくる。
契約書を書き換えることで相手に押しつけて潰してきた。
それが、まだ押しつける前なのに取引中止の連絡がいくつも入る。
公爵家との取引を下の貴族や商人が断ることが理解できなかった。
愚かな公爵が知らない繋がりが下の貴族にはいくつもある。
そこに、契約書に注意するようにとの警告が届くとどうなるか。
一つの家だけでは勇気がいるが、まとめて取引を中止することは連帯感をもたらした。
それに、信用したのは前公爵。現公爵になってからは理不尽なことばかりだったから。
負債はガーランド公爵家。そう思い至った。
父親が大嫌いなガーランド公爵は、父の事業を全部潰したかったのだ。
負債を全部、相手に押しつけるわけにはいかなくなったが、事業は破綻した。
領地の収入だけでいい。
その収入も事業の負債でどれだけなくなるかも把握せずに。
従業員たちが失業して、どんなに恨みを買うかもわからずに。
公爵が働かなくても多額の富が入るようにした前公爵の親心は何も届かずに。
歯向かう者がいなくなった公爵家では、届く請求書に淡々と金を支払う新しい家令は別だが、屋敷内の使用人や執事は通常通り働いていたので気づいていなかった。
わずか2年で前公爵の功績を全て無くし、莫大な負債と恨みを買っている現公爵に。
無くなった事業の後始末をしていた者も手に負えないと逃げ出したので、請求書が公爵家に届く。
家令は面倒なので、確認も取らずに請求額そのまま払い続けていた。
「お金がありません。」
家令にそう言われたガーランド公爵は困惑していた。
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