貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん

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ガーランド公爵は、何もできない。

だけど、ああしたい。こうしたい。そう言うと、助けてくれる友人がいた。

事業を潰して相手に負債を押しつけていたのも友人がしたことだ。
卑怯な手を使って契約書を代えさせたのもそうだ。
ゲルツを使ったのも。
助けてくれるその友人に多額の報酬を渡していた。(カモにされても気づかない。)

金がないことでどうしたらいいか困惑している公爵は、屋敷内の友人の部屋を訪れた。

そして、そこで見たのは妻の不貞。
 
浮気しているのはお互い様ではあったが、自分の友人と屋敷内でというのが許せなかった。

「この阿婆擦れ!もう離婚だ。出ていけ!」

「いいわよ。でも慰謝料を貰うわ。」

「どうしてこっちが慰謝料を払うんだ!それに金はない。家令に今、言われた。」

そこで友人が言った。

「へ~。金がとうとう無くなったか。そりゃそうだよな。じゃあ、俺も出ていくよ。」

「ま、まて。どうしたらいい?」

「どうもこうも事業を潰した借金で領地収入で貯めた金も使っちゃったんだろ?
 こうなるのは当然じゃないか。でも親父さんの功績を潰したがったのはあんただよ?
 俺はそうなるように協力してやっただけ。」

何を今更と言いたげに言われても全て人任せのガーランド公爵にはわからなかった。
 
「本当にないの?じゃあ、出ていくわ。」

ようやく服を着た妻が部屋から出ると、ゲルツがいて、いきなり聞いた。

「母上、俺は父上の子じゃないのか?」

驚いた母の表情で答えがわかった。

「ゲルツは私の子じゃない?やっぱりそうなのか?
 私に似ていないと言われたことが何度かあった。」

問題が次々と起こって、公爵はパニックになりそうだった。

「もういい。どうせ離婚だ。ゲルツを連れて出ていけ!」


カオス状態になった公爵家から妻も子も友人も追い出した公爵は一人になった。




身一つで追い出された親子二人は門の前でしばらく言い合いをしていた。

「本当の父親は誰だよ?」

「う~ん。多分、セスかな。家名は忘れた。
 跡継ぎじゃなかったし、遊び人だったから頼れないと思うわよ?
 じゃあ、勝手に生きていって。私は男の家に転がり込むから。」

そう言って去っていく母親をゲルツは呆然と見ていた。


仕方なく街に向かったゲルツがどうなったかはわからない。

ただ、似た人物が刺されて死んだ。とは学園で噂になった。

恨まれていたから、それがゲルツでも不思議ではない。

誰も確認する者がいなかったので、身元不明扱いになってしまった。

 
 

ガーランド公爵は、金は無くなったがそのうち領地からまた収入があると呑気だった。

当面の金は、家令の言う通りに妻の宝石やドレスを売った。
家令が宝石を盗んだことにも気づかない。

もちろん、領地の方にも影響があったことに気づいてもいない。

この後、何をどうすればいいのかわからず、何もしなかった公爵は国に対しても同じだった。

やがて領地の管理能力がないと判断され、公爵位を取り上げ、国が遠縁の者を選び男爵にした。
領地は縮小。
その際、元公爵領の小さな家から餓死した遺体が発見された。前公爵だった。


こうしてガーランド公爵家はなくなり、生きている者がいるかもわからなくなった。






  
 
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