平民から貴族令嬢に。それはお断りできますか?

しゃーりん

文字の大きさ
28 / 47

28.

しおりを挟む
 
 
姉ジェシカに、『今から家に帰りましょう』と言われてナターシャは戸惑った。

どう言えばいいかわからないナターシャに代わり、ルーズベルト様が言ってくれた。 


「ジェシカ嬢、今日は妹が見つかったということを持ち帰るだけにしてくれないかな?
クレメンスから聞いたと思うけど、ナターシャが平民のままでいたいことと、娘が見つかったからとお披露目するような晒し者にはされたくないということ、両親だと思っていた育ての親がナターシャを攫ったことに関係していたとしても悪口は聞きたくないということ。 これをご家族にも伝えてほしいんだ。」


そうそう。先に知っておいてほしいわ。改めて自分の口から言うには勇気がいるから。


「見つかったということは徐々に広めることもできるし、晒し者なんかにする気はないわ。
育てのご両親のことも調べてみないことにはわからないけれど、ナターシャが幸せに育ってきたのであれば、あなたの前で非難するようなことは言わない。
だけど、平民でいたいということは難しいと思うわ。一度は家族に戻ってほしい。貴族の暮らしにどうしても我慢できないようであれば、みんなが納得する方法を考えればいいわ。」


それは平民になれる可能性もあるってこと?


「とりあえず、そのことを侯爵家に持ち帰ってくれないかな?
再会したばかりのナターシャが平民のままでいたいと言ったら、侯爵夫妻は反対しかしないだろう?
それではナターシャも息苦しいと思うんだ。検討の余地というか、お互いの妥協点というか、ジェシカ嬢がさっき言ったようにみんなが納得する方法を時間をかけて探すべきだと思う。」

「そうだな。頭ごなしに反対されては、ナターシャは今度は家出するかもしれないよ?」


クレメンス様の言葉は魅力的だった。家出? するならコダック伯爵領に向かうわ!

というか、コダック伯爵領に荷物も置いたままだし。
一度は家族にならなきゃいけないなら、取りに行かせてもらえるかな?みんなに挨拶もしたいし。

もちろん、本当の両親が『見つかってよかった。でも平民でいたいならいいよ』と言ってくれるのであれば、そのままコダック伯爵領で使用人生活を送らせてもらうけど。


「今日はダメなの?ナターシャの部屋はちゃんとあるのよ?」


そうなの?本当に、いつか帰ってくると待っていたんだ。

嬉しい気持ちもあるけれど、やっぱりちょっと複雑。

こちらにしてみれば、『はじめまして』のお貴族様としか思えないし。

家族になるって、そんな簡単なものかな? 


「ジェシカ。まずは、侯爵夫妻とディオルに話をしてからだ。」
 

クレメンス様の言葉に頷いた姉ジェシカにホッとしてまた後日と別れたけれど、まさかその日の夕方に迎えに来られるとは思いもしなかった。


 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く

基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」 王太子は女を突き飛ばした。 「その恩も忘れて、お前は何をした!」 突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。 その姿に王太子は更に苛立った。 「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」 「ソル…?」 「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」 王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

過保護の王は息子の運命を見誤る

基本二度寝
恋愛
王は自身によく似ている息子を今日も微笑ましく見ていた。 妃は子を甘やかせるなときびしく接する。 まだ六つなのに。 王は親に愛された記憶はない。 その反動なのか、我が子には愛情を注ぎたい。 息子の為になる婚約者を選ぶ。 有力なのは公爵家の同じ年の令嬢。 後ろ盾にもなれ、息子の地盤を固めるにも良い。 しかし… 王は己の妃を思う。 両親の意向のまま結ばれた妃を妻に持った己は、幸せなのだろうか。 王は未来視で有名な卜者を呼び、息子の未来を見てもらうことにした。 ※一旦完結とします。蛇足はまた後日。 消えた未来の王太子と卜者と公爵あたりかな?

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

処理中です...