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しおりを挟むルーズベルト様と街歩きをしていると、ルーズベルト様の知り合いらしい女性に声をかけられて振り返ると、そこにいた女性にナターシャはひどく驚かされた。
ひとことで言えば、『派手』。それしかない。
「メリッサ嬢、お久しぶりですね。こんなところでお会いするとは。」
「あら。ここは私の婚約者の店なのよ?ご存知なかったようね。」
思わず真横にあった店をルーズベルト様と2人して確認し、納得してしまった。
「ナターシャ、こちらはメリッサ・ベック侯爵令嬢。僕の元婚約者だよ。」
でしょうね。そんな気がしていました。
「あら。こちらが私からルーズベルト様を奪った可愛いご令嬢なのね?」
メリッサ様の言葉に、ナターシャは動揺を隠しきれなかった。
「ふふ。冗談よ。お店にどうぞ。」
店に入れと言われて戸惑ったナターシャを、ルーズベルト様は『大丈夫だよ』と苦笑しながら背中を押してくれた。
店の奥には応接室があった。
そこに、メリッサ様とメリッサ様が会いに来たという婚約者カールス様と私たちが座っていた。
「さっきはイジワルなことを言ってごめんなさいね。でも違ったかしら?」
「……いえ、そうです。申し訳ございませんでした。」
確かにナターシャはメリッサ様からルーズベルト様を奪ったのだから。
「ほら、やっぱり!私が予想した通りだったわ。」
メリッサ様はカールス様に笑顔でそう言っていた。
「私は今の婚約者であるカールス様と、劇的な出会いをしたと思っていたの。着飾ることが好きな私を理解してくれて、似合うものを勧めてくれて、意気投合して。彼となら毎日が楽しくなる。そう思ったわ。
ずっとデザインの勉強で外国を渡り歩いていた彼が帰国したのは運命だと思ったの。
だから父にルーズベルト様との婚約解消をお願いしたわ。あなたは私を否定しなかったけど、苦手に思っていたでしょう?」
「そうですね。僕自身、着飾ることが苦手なこともあって、あなたに申し訳なく思っていました。」
「でしょう?だから、婚約解消はお互いにいいことだと思っていたの。」
それでも他の男性に心を移したことをメリッサ様は浮気と変わらないと心苦しく思っていたそうだ。
「それなのに、ルーズベルト様の新しい婚約者がカーマイン侯爵家の見つかったご令嬢だと聞いて、『あぁ、私たちの出会いはカーマイン侯爵様に仕組まれたのね』と気づいたの。」
ルーズベルト様の領地にいた見つかった令嬢。彼女が婚約するなら彼がいいと父親にねだった。
でもルーズベルト様には既に婚約者がいた。ではその婚約者に新しい出会いを紹介すればいい。
そんな感じだったのではないか。
だから、普段の彼女が招待されることのない服飾の展示会に招待され、案内人が意気投合しそうなカールス様だったのだ。
そしてその展示会の協賛にはカーマイン侯爵の名もあったという。
偶然というには出来過ぎの結果に思えたとのことだった。
「お二人の仲の良い姿を見ることができて安心したわ。」
ナターシャのことを知らないので、自分と婚約解消したせいでルーズベルト様がまた面倒な娘を押し付けられて婚約したのではないかと心配する気持ちがあったのだという。
まるで、弟を気遣う姉のような目線で……
心の憂いが無くなったとスッキリした顔でメリッサ様は言った。思ったよりも話しやすい人らしい。
「さあ!私たちが婚約祝いにお似合いのものをプレゼントするわ!」
ナターシャはメリッサ様に、ルーズベルト様はカールス様に連れられてあーだこーだと振り回された。
それでもまぁ、彼らが人に似合うものを勧める目を持っていたのは確かで、今までとは印象が違うけど身に着けてみたいと思うようなものを選んでもらえた。
お気に入りの店になったと父にも報告しよう。
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