元婚約者に未練タラタラな旦那様、もういらないんだけど?

しゃーりん

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旦那様は私が本当の初恋の女の子だったと言われて狼狽えているわ。


「え……ええ?なんで?ロザリーがあの時の子だって……」

「私はそんなこと言っていませんよ?」


お義母様は嘘はついていない。ただ私に似た感じの女の子を探しただけ。


「でも何となくの雰囲気はロザリーの方が近かった気が……」

「あなたがリアに一目惚れした時、リアはまだ9歳だったの。可愛い感じの女の子だったわ。
ロザリーさんも確かにそうだったわね。彼女は可愛らしいというままだったから。
でもリアは可愛いだけじゃなく、美人に成長したのよ。9歳と18歳では女は大きく変わるわ。」

 
なるほど。旦那様は可愛らしい感じの女性が好みなのね。私は好みから外れたのかしら?
やっぱり、夫妻改め兄妹になった方がいいかしら?


「ロザリーさんに確かめたことはなかったのですか?昔会ったこととか、騎士に憧れたこととか。」


正直言って、私も騎士の話をしたのが旦那様だったってことは覚えていなかったけど。


「……思い込んでいたから。でも伯爵家の跡継ぎなのに騎士になるって言うと『鍛えたいの?』って言われた。」


普通ならそこで、『昔、君が騎士に憧れるって言っていたからなりたいんだ』って言うわよね。
そうしていたら会っていなかったことも気づけたかもしれないし、夫が騎士になるのは嫌だって話になっていたかもしれない。
 
ロザリーさんは初恋の女の子じゃなかったけれど、それだけが理由で彼女のことが好きだったわけではないでしょうから、ロザリーさんが嫌なら騎士にはならないって未来が変わっていたかもしれないわね。

まぁ、今更だけど。


「ということは、僕はせっかく騎士になったのに、リアの憧れの騎士になれなかったということか。」


ひどく落ち込んでるけれど、そもそも私の憧れの騎士ってなに?

お義父様も疑問に思ったようで、そう聞いていたわ。


「王子様を守る騎士です。」

「「「あぁ~!」」」


お義父様、お義母様、私は揃って納得した。


「ありがちな物語に出てくる王子様のそばで悪者を倒す騎士様ね。」

「近衛騎士は相当腕が必要だし、5年で辞める予定だったお前が抜擢されるはずがない。」


そうね。特に王族の騎士になる場合、家庭を持っても長続きしないと言われているし。
少人数で信頼のおける者だけを近くにおくので勤務時間は長いし、すぐに行動できるようにほとんど自宅には帰れないと言われているわ。
だから今は、貴族の次男三男で婚約者のいない腕の立つ者が早くから目をつけられるって。
独身で激務をこなして、30歳前後で解放されてから結婚するのが望ましいそうよ。

旦那様は最初から条件に当てはまらないわね。


それに、確かに騎士様はカッコいいと思ったけれど、それは物語の中の話。
王子様じゃないにしても、『あなたを守るために騎士になる』なんて話もよくあるわ。
だけど、騎士という仕事に就けば、恋人一人だけを守れないのよ? 

国を、王族を、領民を守るために率先して動くことになって、肝心な恋人だけを守るなんてことはできないわ。

なんて、現実を考えてしまうから私は騎士の妻には向いていないわね。

もちろん、騎士は尊敬できる仕事だし有難いとも思っているわよ。結果的には恋人を守ることにも繋がるしね。

 
「旦那様は私たち家族を守る騎士様の方がお似合いですよ。」

 
とりあえず、落ち込んでいる旦那様が喜びそうなことを言ってみたわ。

案の定、旦那様はすぐに笑顔になってくれた。


「リアたちを守れるなら、騎士になった5年間は無駄じゃない。」


旦那様は操縦しやすそうね。 



 
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