16 / 20
16.
しおりを挟む旦那様は私が本当の初恋の女の子だったと言われて狼狽えているわ。
「え……ええ?なんで?ロザリーがあの時の子だって……」
「私はそんなこと言っていませんよ?」
お義母様は嘘はついていない。ただ私に似た感じの女の子を探しただけ。
「でも何となくの雰囲気はロザリーの方が近かった気が……」
「あなたがリアに一目惚れした時、リアはまだ9歳だったの。可愛い感じの女の子だったわ。
ロザリーさんも確かにそうだったわね。彼女は可愛らしいというままだったから。
でもリアは可愛いだけじゃなく、美人に成長したのよ。9歳と18歳では女は大きく変わるわ。」
なるほど。旦那様は可愛らしい感じの女性が好みなのね。私は好みから外れたのかしら?
やっぱり、夫妻改め兄妹になった方がいいかしら?
「ロザリーさんに確かめたことはなかったのですか?昔会ったこととか、騎士に憧れたこととか。」
正直言って、私も騎士の話をしたのが旦那様だったってことは覚えていなかったけど。
「……思い込んでいたから。でも伯爵家の跡継ぎなのに騎士になるって言うと『鍛えたいの?』って言われた。」
普通ならそこで、『昔、君が騎士に憧れるって言っていたからなりたいんだ』って言うわよね。
そうしていたら会っていなかったことも気づけたかもしれないし、夫が騎士になるのは嫌だって話になっていたかもしれない。
ロザリーさんは初恋の女の子じゃなかったけれど、それだけが理由で彼女のことが好きだったわけではないでしょうから、ロザリーさんが嫌なら騎士にはならないって未来が変わっていたかもしれないわね。
まぁ、今更だけど。
「ということは、僕はせっかく騎士になったのに、リアの憧れの騎士になれなかったということか。」
ひどく落ち込んでるけれど、そもそも私の憧れの騎士ってなに?
お義父様も疑問に思ったようで、そう聞いていたわ。
「王子様を守る騎士です。」
「「「あぁ~!」」」
お義父様、お義母様、私は揃って納得した。
「ありがちな物語に出てくる王子様のそばで悪者を倒す騎士様ね。」
「近衛騎士は相当腕が必要だし、5年で辞める予定だったお前が抜擢されるはずがない。」
そうね。特に王族の騎士になる場合、家庭を持っても長続きしないと言われているし。
少人数で信頼のおける者だけを近くにおくので勤務時間は長いし、すぐに行動できるようにほとんど自宅には帰れないと言われているわ。
だから今は、貴族の次男三男で婚約者のいない腕の立つ者が早くから目をつけられるって。
独身で激務をこなして、30歳前後で解放されてから結婚するのが望ましいそうよ。
旦那様は最初から条件に当てはまらないわね。
それに、確かに騎士様はカッコいいと思ったけれど、それは物語の中の話。
王子様じゃないにしても、『あなたを守るために騎士になる』なんて話もよくあるわ。
だけど、騎士という仕事に就けば、恋人一人だけを守れないのよ?
国を、王族を、領民を守るために率先して動くことになって、肝心な恋人だけを守るなんてことはできないわ。
なんて、現実を考えてしまうから私は騎士の妻には向いていないわね。
もちろん、騎士は尊敬できる仕事だし有難いとも思っているわよ。結果的には恋人を守ることにも繋がるしね。
「旦那様は私たち家族を守る騎士様の方がお似合いですよ。」
とりあえず、落ち込んでいる旦那様が喜びそうなことを言ってみたわ。
案の定、旦那様はすぐに笑顔になってくれた。
「リアたちを守れるなら、騎士になった5年間は無駄じゃない。」
旦那様は操縦しやすそうね。
982
あなたにおすすめの小説
病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します
佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。
セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。
婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。
皇帝の命令で、側室となった私の運命
佐藤 美奈
恋愛
フリード皇太子との密会の後、去り行くアイラ令嬢をアーノルド皇帝陛下が一目見て見初められた。そして、その日のうちに側室として召し上げられた。フリード皇太子とアイラ公爵令嬢は幼馴染で婚約をしている。
自分の婚約者を取られたフリードは、アーノルドに抗議をした。
「父上には数多くの側室がいるのに、息子の婚約者にまで手を出すつもりですか!」
「美しいアイラが気に入った。息子でも渡したくない。我が皇帝である限り、何もかもは我のものだ!」
その言葉に、フリードは言葉を失った。立ち尽くし、その無慈悲さに心を打ちひしがれた。
魔法、ファンタジー、異世界要素もあるかもしれません。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
【完結】騙された? 貴方の仰る通りにしただけですが
ユユ
恋愛
10歳の時に婚約した彼は
今 更私に婚約破棄を告げる。
ふ〜ん。
いいわ。破棄ね。
喜んで破棄を受け入れる令嬢は
本来の姿を取り戻す。
* 作り話です。
* 完結済みの作品を一話ずつ掲載します。
* 暇つぶしにどうぞ。
私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか
れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。
婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。
両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。
バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。
*今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m
君を愛する事は無いと言われて私もですと返した結果、逆ギレされて即離婚に至りました
富士山のぼり
恋愛
侯爵家に嫁いだ男爵令嬢リリアーヌは早々に夫から「君を愛する事は無い」と言われてしまった。
結婚は両家の父が取り決めたもので愛情は無い婚姻だったからだ。
お互い様なのでリリアーヌは自分も同じだと返した。
その結果……。
貴方は何も知らない
富士山のぼり
恋愛
「アイラ、君との婚約は破棄させて欲しい」
「破棄、ですか?」
「ああ。君も薄々気が付いていただろう。私に君以外の愛する女性が居るという事に」
「はい」
「そんな気持ちのまま君と偽りの関係を続けていく事に耐えられないんだ」
「偽り……?」
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる