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しおりを挟むタルボットがどんな言い訳をしようと、こちらは迎え撃つことができる。
しかし、私たちの言い合いを聞いていた父が口を挟んだ。
「ほお?小遣いにも困るほど子爵家は困窮していると?それならますますメリーアンを嫁がせることなどできないじゃないか。苦労することが目に見えているからな。」
「いえ、そんな困るほど少ない額ではありません!タルボット、誤解するようなことを言うんじゃない!」
レッテン子爵がいくら送金しているのかは知らないが、タルボットは毎週のように街で友人たちと過ごしているし、毎回アデラの分まで払っているとなると足りなくなるのは当然だろう。
「メリーアン、彼女とは浮気していないがそんなに彼女のことが気になるのであれば悲しいことだが友人をやめることにするよ。君を嫉妬させてまで友人でいるわけにはいかないからね。これで許してくれるか?」
何を言っているのかしら?嫉妬?するわけないじゃない。
「別に友人をやめる必要はないわよ?私たちは婚約解消するのだからご自由に。
ちなみに、あの方も近々婚約者から同じことを言い渡されるはずよ。理由はあなたとの浮気、で。
私の友人の婚約者の兄が、あなたの浮気相手の婚約者なの。あぁ、兄の友人でもあるけど。
兄に呼ばれて向かった場所で、しっかり見たわ。2人が何度もキスをしているところを。
見たのは私たちだけじゃないのよ?」
兄と私以外に、タルボットの浮気相手の婚約者であるユーシス、兄の婚約者であるマチルダ、友人のピオニー、ピオニーの婚約者のザカリス、教師2人と証人を指折り数えているとタルボットが叫んだ。
「嘘だっ!あの場所は、どこからも見えないと先輩に聞いたんだ!周りに誰もいたこともない!」
あぁ、あの悪いことばかり伝統的に伝わるという寮にいる先輩からね。
というか、浮気を白状しているような言葉だと気づいてないの?
「見えるわよ?外からはすりガラスだと思われている窓、あれは中からだとはっきり見えるの。」
タルボットは絶望したような顔になった。
あの場所が浮気にいい場所だと寮生に伝わっているのを逆手に取って、今回みたいに浮気の証人を得るために窓ガラスを変えた先輩がいたのだろう。
その後もひたすら、メリーアンと結婚するつもりだった、学生の間だけの恋のつもりだった、もう裏切らない、とゴネていたが、こちらは伯爵家だ。悪くもないこちらが従う理由もない。
家に利益があるわけでもなく、しかも浮気をする男に誰が嫁ぎたいと思うだろうか。
それでもいいと思えるほど、タルボットのことを男として好きではなかったとこの1年で納得している。
婚約解消届にサインをし、融通していた領地内のことや慰謝料については両親が話し合うことになった。
父には慰謝料は最低限でいいと伝えている。全てが悪い思い出ではないのだから。
「タルボット、あの方も婚約解消されるから恋人になれるわね?」
アデラと恋人になったとしても、いつまで続くだろうか。
彼女が田舎に住むとは思えないが、今回のことで結婚相手がいなくなればタルボットに可能性がないこともない。
しかし、すでに落ちぶれ始めているというレッテン子爵領が耐えられるのかどうかは、アデラの伯爵家の援助にかかっているのではないか。
ビンガム侯爵家に慰謝料を払うことになれば、レッテン子爵家に援助どころではないだろうけど。
たとえ、期間限定と言っても婚約者がいる相手となれば痛い目を見る可能性を考えておくべきなのだけど、それができないからこんなことになるのよね。
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