期間限定の秘密の恋はバレないですか?

しゃーりん

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メリーアンがタルボットと婚約解消した同じ頃、同じようにユーシスもアデラと婚約解消について話をしていた。


「なっ!アデラの有責で婚約解消?浮気ってそんなバカな……」


アデラの父、ビーンズ伯爵はアデラを確認するように見た。


「ち、違うわ。彼は友人の一人よ。何もやましいことなんて、ありません。」

「アデラ嬢、侯爵家が少し仲のいい男の友人がいる程度で浮気だと騒ぐと思っているのですか?」


ユーシスの言葉に少し怯んだアデラだったが、大丈夫だと妙な自信を持っていたので認めなかった。


「確かに、友人としては距離が近いことはあったかもしれないわ。目眩がした時とかに腕につかまって歩いたことも何度かあるし。でも、その程度で浮気と言われても納得できません。」 


いつもの甘えるような演技も忘れたアデラの必死さにユーシスは思わずといった感じで嘲笑すると、それをどう捉えたのかアデラはユーシスに逆ギレした。


「そもそも、ユーシス様が悪いのではないですか。お昼も一緒に過ごしてくれないし、教室に会いに行っても追い返されるし。会いに来てって言っても会いに来てくれない。友人と過ごしたいって言うから、私も友人と過ごしたの。それの何が悪いの?」
 

それぞれの両親はアデラの言い分に微妙な顔になった。

そもそも、お昼を毎日婚約者と過ごす学生は稀である。学年が同じであれば週に一度くらい一緒に過ごしている男女もいるが、ほとんどはそれぞれの友人と過ごしているのだ。
まして、学年が違う婚約者ともなれば先に入学した方は過ごし方の流れができている。

学園は交流を広げ、人脈を得るための小さな社交場でもあるのだ。

それに、休み時間に会いに来られても、数分で何を話せるというのだろうか。
建物が違うのにわざわざ会いに来る、会いに行く時間も必要性もないのだ。

両親たちも昔は学生だったのだ。アデラの言い分が無謀というか面倒だと顔に書いてあった。
まぁ、アデラの母親だけはアデラの言葉がおかしいとは思っていなかったようだが。

 
「異性の友人がいても、節度を保っていれば問題ないと思います。
ですが、婚約者でもない男に毎回飲食代を払わせたり贈り物をさせるのはどういった理由が?しかもわざとらしく2人で抜け出してデートしている姿を何度も見たことがありますよ。」

「それはっ!彼が望んでしたことだし、デートじゃないわ。ただ、他の友人とはぐれただけで。」

「毎回?」

「……そうよ。勝手に人の跡をつけるなんて不作法だわ。」

「浮気調査ですから。」

「この程度が浮気と認められるわけないでしょう?」
 
「……裏庭。」


アデラがビクッと反応した。


「昨年の後期から私が確認しただけでも100回に及びます。抱き合って口づけ合う姿。」


アデラは顔色を悪くしながらも、まだ認めなかった。


「私じゃないわ。ユーシス様の見間違いにきまっています。」

「見たのは私だけじゃない。あと……7人見てるし、教師にも証人として見てもらっているから。」
 

学園内の場合、相手が婚約者ではないと確認した証人がいれば浮気と認められるのだ。


「誰が見ても無理やりじゃないということは証明してくれる。アデラ嬢有責で婚約解消、サインをお願いします。」


もう言い逃れはできないと、仕方なくサインをし始めた。


アデラは泣きながら、『誰にも見られない場所だって言ったのに』と呟いていた。

 

最後にもう一つ、メリーアンに頼まれたことを言っておこう。


「ビーンズ伯爵、アデラ嬢から先に相手の男を誘惑していましたので、相手の男は子爵家ですが慰謝料を請求しないようにしてくださいね。」

 
責任を取れとアデラを押し付けるのであれば構わないが、お前のせいだと慰謝料を吹っ掛けることは許さないとユーシスは言った。

すべての責任をレッテン子爵家に押しつけられると確実に子爵家は潰れる。
それは子爵夫妻と弟があまりに気の毒だとメリーアンが気にしていたのだ。

ユーシスとしてもタルボットのお陰でアデラとの婚約を解消できることを感謝していたから、ビーンズ伯爵に一言伝えることにしたのだ。


こうしてビーンズ伯爵家はビンガム侯爵家に莫大な慰謝料を払う羽目になった。 
 


 
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