振られたから諦めるつもりだったのに…

しゃーりん

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劇場前に着いたヴィッテが馬車を降りようとすると、ディート様が目の前にいた。

ありがたく手を借りて降りると、ディート様は少し驚いた顔をしていた。

あー。そうね。今日は休日仕様だわ。この姿では初めてだものね。

「ヴィッテ、とても綺麗だ。」

「ありがとうございます。いつもと違いますが休日はこんな感じです。」

学園に行く時は、アクセサリーも髪飾りはしないし、メイクもほとんどしていない。
ほとんどの令嬢が何らかのアクセサリーをつけているので、ヴィッテは地味に見える。
学園では必要を感じていないので飾らないだけだけど。
しかも、化粧映えするので服装に合わせて与える印象も変わる。

 
クラウド殿下からいただいたチケットというだけあって、そこそこ良い場所から観劇できた。
婚約者を誘うつもりだったのかな?
ディート様に確認すると、こういったチケットはしょっちゅう貰うそうで、都合が良ければ行くこともあるし、誰かにあげることも多いのだそう。
なので、気にしなくていいそうだ。



ディート様と話をしながら歩いていたため、周りの人たちが自分たちに注目してることに気づいていなかった。

もちろん、学園生もいれば親世代の人たちもいる。


その中に、ディート様のお母様がいらっしゃったことなど気づくわけもなかった。

「あら。息子さんではなくて?」

「そのようね。今日はデートみたいね。」

ディートの母は、息子の柔らかい表情に少し驚いていた。

「婚約はまだでしたわね?どちらのお嬢さんかしら。」

「パルテ伯爵のお嬢さんと言ってたと思うわ。」

「あぁ、あそこの。少し噂を聞いたことがあるわ。」

「噂?どのような?」

良くない噂をされるような令嬢は困る。

「いえ、悪いことじゃないのよ?
 私が聞いたのは事業関係の方々から関係強化を望まれて縁談が多くあるそうなの。
 だけど、どこを選んでも角が立ちそうで、娘さんも息子さんもまだ婚約者がいないとか。」

ディートは知っているのかしら?上手く掠め取った感じね。

「なるほどね。では伯爵にとって恋愛結婚はアリなのかしらね?」

「息子さんのお相手が伯爵令嬢でもよろしいの?」

「ええ。変に気位の高い令嬢はあの子には向かないわ。冷めた夫婦になるのが目に見えるし。
 伯爵令嬢は許容範囲でしょう?
 それに、あの子が頭の中がお花畑のような見かけだけの令嬢に興味を持つとは思えないし。」

「どの年代でもいるものね。
 他にも、顔を武器に周りを巻き込む迷惑令嬢や爵位を盾に周りを蹴落とそうとする令嬢。」

「泣いてあの子に縋るような令嬢だと先は短いでしょうね。
 まだ婚約したわけではないし、うまくいかなくても令嬢を避けていたあの子にもいい練習になるわ。」
 
まず、今日のデートで噂が広まるのは間違いない。
2人がどういう対応で躱すか、周りに立ち向かい、納得させられるかでこの先も決まるだろう。

公爵家に嫁いでも、誹謗中傷で社交できなくなる嫁もいる。
夫が妻を大切に思って、社交させずに守るだけの場合もある。
完璧な令嬢ばかりが嫁ぐわけではない。

心が折れる令嬢よりも、常識があって少し鈍感くらいの令嬢の方が生き残れることもある。






 
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