振られたから諦めるつもりだったのに…

しゃーりん

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翌週、学園ではヒソヒソと噂話をしている人たちを見かけた。

ヴィッテは何かあったのだろうか?と疑問に思っていたけれど、教室で友人に話を聞いて驚いた。

噂話はディートとのデートのこと。 
でも、なぜか相手が定まっていなかった。ヴィッテは有名人ではないから。
しかし、ヴィッテのことを知っていて休日仕様も知っている友人がやってきて爆弾を落とした。

「ちょっと、ヴィッテ。あなた、ディート様とデートしてなかった?」
 
教室も廊下もシーンとなった。
 
相手が今まさに判明しようとしていた。その時………

「おはよう。何かあった?」

クラウド殿下とディートが教室に入ってきた。

2人と友人の令息が興味津々にディートに聞いた。

「ディートとヴィッテ嬢のデートが噂になってるんだ。」

「ああ、事実だ。」

ディートは淡々と言った。

「観劇、面白かった?」

クラウド殿下がヴィッテに聞いた。

「はい。チケット、ありがとうございました。」

殿下公認だ。事実だ。ここにいた。クラスメイトも廊下もザワザワしていた。



そして、授業中以外、注目を浴びては上級生の令嬢からは特に『地味』攻撃を受けた。
今までは気にしてなかったけど、地味と言われ続けると地味に落ち込む。

『そんな地味なあなたではディート様に相応しくないわ』

何回言われたかしら。ディート様が悪く言われないようにしなきゃ。



翌日から、休日仕様ほどではないが学園生に相応しい程度に飾り立てて行くことにした。

「ヴィッテ、休日仕様にしたの?」

友人たちは、もちろん休日のヴィッテも知っている。

「あまりにも地味って言われるから、最低限くらい飾ろうと思って。」
 
「最低限でもヴィッテはグッと可愛くなるから。もう地味には見えないわ。」

「よかった。ありがとう。」


クラウド殿下とディートが教室に入ってきた。

「あれ?ヴィッテ嬢、雰囲気変えたね。」

「ええ。飾らないのも目立つと思うようになりまして。」

無難な返事をするとディートが聞いてきた。

「誰かに言われたのか?」

「まあ少し?もっともなことだとも思いましたので変えようかと。」

「……そうか。どっちでも可愛いよ。」

その言葉に聞き耳を立てていた周りは絶句した。これがあのクールなディート?


今日も『地味』攻撃をしようと思っていた令嬢たちは『地味』でなくなったヴィッテに驚いた。


そして、そんな時に現れたのが爵位を盾にする令嬢。
ディートに相応しいのは自分だと婚約せずにいたというが、性格に難があるのでは?という……

「あなた、私の許しも得ずに付き合うなんてどういうこと?伯爵令嬢は下がってなさい!」

「申し訳ございません。あなた様の許可が必要だとは知りませんでした。
 ディート様のご親戚の方ですか?すみません。存じ上げず。お名前を伺っても?
 ディート様と許可をいただきに参りますわ?」

首を傾げて問うヴィッテと名乗らない令嬢。多分、上の爵位の令嬢なのは間違いないが。

そろそろ顔と名前をちゃんと覚えなきゃなぁと思っていると、ディートが現れた。

「…ヴィッテ。どうかしたか?」
 
「ディート様。こちらの令嬢はご親戚……」

「もういいですわ!」

話の途中で行ってしまった。

「ディート様、今のご令嬢はお知り合いですか?」

「確か、スミソナ侯爵令嬢だったかな?名前は忘れた。」

あら。親戚ではなさそうね。



最新の貴族名鑑で、高位貴族とディートの親戚の貴族家を覚えようと心に決めた。







 
 

 
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