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しおりを挟む2か月後、フォルティアは妊娠していると気づいた。あの夜の子供だ。
あの夜の男のことは住まいまで調べがついていた。兄に頼んだから。
あの男が愚かでなければ二度と会うことはないだろうけれど、信用ならない。
ただ、何らかの行動を起こせば処分される可能性が非常に高くなるだろう。
もちろん、伯爵家に。
妊娠のことはまだ侯爵夫妻にもディカルドにも伝えるつもりはない。
伝えれば何を言われるか、簡単に想像がつく。
せめて安定期まで穏やかに暮らしたいものだった。
侯爵家内には徐々に実家の息のかかった者が増えてきている。
お金が無く使用人も最小限だったのが、あの夜以降、徐々に増やしている。
侍女もレニだけでなくローラにも来てもらった。
ローラは助産師でもあり、フォルティアの体調も診てもらうためだった。
「フォルティア様、そろそろ限界ではありませんか?」
「そうね。明日から楽な服に変えましょうか。」
妊娠5か月を過ぎたフォルティアは、ついに侯爵夫妻との対決を覚悟した。
翌朝、部屋を出たフォルティアは、妊娠のことを知らなかった使用人から祝福の言葉を受けていた。
この国の妊婦は胸下で切り替えのある服は妊婦服なので一目でわかるのだ。
フォルティアはようやく自分が妊婦なのだと主張したことになる。
フォルティアのことを耳にした侯爵夫妻は慌てて姿を見せた。
「ど、どういうこと?フォルティアさん、誰の、誰の子なの?」
「誰って、私の旦那様はディカルド様ですが?」
「嘘よ。あなたとディカルドは初夜を済ませていないって……まさか、あの男の子供なの?」
「はい?あの男って誰のことです?」
念のために、口に出して言ってくれるかしら?
「しらばっくれないで!」
「何をおっしゃっているのか、わかりませんわ。」
「は、白状した男がいるんだ!お前の純潔を奪ったと。その、その男の子供なんだな?」
「私の純潔を奪った男?そんなことを言う男は今どこに?」
「え?自分の家だろ?そんなことはどうでもいい。」
「ですが、それならなぜその男を捕まえなかったのですか?事実なら犯罪者ですよ?」
「そ、それはお前の評判を守るためじゃないかっ!」
「事実確認もせずに?単なる虚言に騙されただけでしょう。」
フォルティアは少し呆れたように微笑んだ。
「お前の、お前の不貞でできた子だ。私たちの孫ではないっ!」
「どうしてそうおっしゃるのですか?屋敷内でいったい誰とどうやって不貞ができるというのです?」
「そ、それは、あれだ。いつも張り付いている侍女が実家に戻った日に男を引き込んだんだ。」
いつの間にかフォルティアが誘った不貞ということになったらしい。
「レニはすぐに戻って来ましたよ?それに、その男はどこの誰なのです?お義父様はご存知のようですね?」
「あの日は、甥を屋敷に泊めていたんだ。その甥をお前は連れ込んだんだっ!」
あぁ、やっぱり間違いなかったわ。
「お義父様の甥御様ですか?知りませんでした。ご紹介いただいていませんよね?」
「と、とにかく、甥はお前の純潔を奪ったと白状した。不貞だっ!」
「もしそれが事実だとすると、お義父様たちは不貞を容認したのですよね?なのに妊娠を責めるのですか?」
「それとこれとは話が別だっ!」
「では離婚しましょうか。」
離婚と聞いて一瞬援助が無くなることを思い出したのか苦い顔をしたが、不貞の慰謝料を想像して不敵な笑みを浮かべている義父にフォルティアは言った。
「甥に息子の嫁を襲うように指示した侯爵様に慰謝料を請求させていただきますね?」
なぜ逆に慰謝料を請求されることになるのか。侯爵は驚いた表情をしていた。
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