夫の子ではないけれど、夫の子として育てます。

しゃーりん

文字の大きさ
13 / 21

13.

しおりを挟む
 
 
フォルティアを穢したという証拠をカールが口にしたかと思ったが、何もなかったようだ。
例えば、ホクロの場所とか、身体的特徴を述べていたら少し困ったことになるとは思ったが、侯爵夫妻は何も確認しなかったのだと知ってホッとした。

侯爵家の使用人たちも巻き込んでいないのだろう。
卑劣な手段が漏れてはいけないと用心したらしい。
ただ、フォルティアのベッドシーツに異変がないかだけ確認させたのだ。
おそらく、初夜があったはずだと匂わせて。
ディカルドのシーツのことは、使用人は報告しなかったのか、ディカルドが処分したのか。

息子ディカルドを酔い潰して眠り薬を飲ませ、フォルティアの部屋の鍵を開けておいたのも侯爵の仕業に違いない。

そして甥カールをフォルティアの部屋へと送り出し、自分たちは報告が来るのを待っていただけだ。

レニが戻ってきたことでカールは慌ててディカルドの部屋を通って逃げ、レニが追いかけて来ないことを確認した上で侯爵夫妻に報告をして、金を手にして自分の家に帰ったのだ。

しかし、手に入れた金で薬を買う間もなく、子供は亡くなった。
貴族の身分を捨てるほど愛した妻への思いが冷めたのも同時だったのではないか。
泣き暮らす妻を放って女遊びに走ったのだから。薬を買うはずだった金で。


あの夜、カールはフォルティアを抱きながらいろいろと愚痴を言っていた。
逃げられないフォルティアを前に、口が軽くなっていたのだ。

子供が病気になってから妻を抱けないとか、料理が不味いとか、実家の援助があればとか。
それを聞いて、フォルティアは顔も見えない男の正体が誰だか想像がついた。侯爵の甥だ、と。

しかもカールは、妻が他の男と経験があったのが悔しかったと言いながら、フォルティアの純潔を嬉しそうに奪ったのだ。

フォルティアは貫かれて純潔を失うとすぐに、カールに言った。

目的を果たしたのだから抜いてくれ、と。

だがカールは、久しぶりだから治まらないと何度もフォルティアの中に欲望を吐き出した。
カールに体を揺さぶられながらフォルティアはどこか冷静だった。
妊娠するだろう。そう予感めいたものも感じていた。
そしてそれは現実となった。


カールは金のためにフォルティアを抱いて妻を裏切ったのに、子供も亡くなったことで、今の暮らしにも嫌気がさして、ディカルドを脅すことにも繋がったのだろう。

やはり諸悪の根源はカールに頼んだ侯爵夫妻と言える。



侯爵は姉に会いに行き、カールの住まいを聞き出すことにしたようだった。
 


カールの遺体はどこかに埋めてしまおうかとも思ったらしいが、やはり死亡したことは明らかにした方が面倒事にはならないと判断された。

一旦隠したのは、ディカルドが何かに追われるように馬車道に走りこんだため、カールを殺したことが原因だったと思わせないためだったと言う。

フォルティアのお腹の子はラフォーレ侯爵家を継ぐ子になるのだ。
父親が人を殺して自殺したと思わせないために、時間差で『死んでいる人がいる』と通報したらしい。
カールは平民のため、事件だと疑われたり騒がれることもなく、不注意事故で処理された。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。

藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」 憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。 彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。 すごく幸せでした……あの日までは。 結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。 それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。 そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった…… もう耐える事は出来ません。 旦那様、私はあなたのせいで死にます。 だから、後悔しながら生きてください。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全15話で完結になります。 この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。 感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。 たくさんの感想ありがとうございます。 次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。 このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。 良かったら読んでください。

二人の妻に愛されていたはずだった

ぽんちゃん
恋愛
 傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。  二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。  アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。    アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。  何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。  全二十八話。  十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました

よどら文鳥
恋愛
 ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。  ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。  ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。  更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。  再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。  ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。  後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。  ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

処理中です...