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しおりを挟む自分の屋敷に帰ったサリューシアは、両親が待っているという部屋を訪れた。
「お帰り、サリューシア。ティム君の話は何だったんだ?ただの謝罪か?」
「一応、謝罪らしき事は言われましたが、口先だけでしたね。
ブルーエ伯爵夫妻が認めたんだから、子供を嫡子とすることを私も認めろと言っていました。
それと、子供の母親も一緒にいることを許してほしいと言ってきましたわ。
さすがにそれは頭にきて、いかに非常識であるかを説明してまいりました。」
「……あの男は阿呆なのか?
子供の母親を妻にすることはできないのだから、父か母のどちらかと暮らすことになる。
母親と子供を離したくないのであれば、援助だけして平民として暮らさせればよいものを。」
そう。それが普通の判断。
そして、正式な妻となるサリューシアとの間に産まれる子供が跡継ぎとすべきなのだ。
それなのに、あの伯爵家は何を考えているのか。
「お父様、ブルーエ家との事業は今更後に引けないのですよね。
向こうもティム様に新たな婚約者が難しいことがわかっているので私と結婚させたい。
なので、政略結婚なしで事業だけの関係に持ち込むことは難しいでしょう。
私はティム様と結婚するしかありません。
ですが、リムが跡継ぎとして公になるまではまだまだ時間があります。
ブルーエ家が他家から嫌厭されることになる前に、共同事業以外に新たな収入源を考えてください。
利益を元手に、いつかブルーエ家と手を切れるように。クレオとも相談してください。」
クレオは2歳下のサリューシアの弟でレイド伯爵家の跡継ぎ。
やがてあの子にも人脈ができる。
友人と共に新たな事業を思いつくかもしれない。
このままではブルーエ家は必ず落ちぶれる。
その後、共同事業が利益が出るままになるか、負債になるかは未知だ。
リムが10歳くらいまでは跡継ぎを誤魔化せるはず。
サリューシアに子供ができなかったので愛人の子供を跡継ぎにすると言った方がまだ納得される。
つまり、サリューシアはティムの子供を産まないことにしたのだ。
そう伝えると驚いていたが、身軽な方がいいと両親も思ったようだ。
「それと、伯爵家に滞在したままのリズさんと、ティム様は関係を続けています。
ティム様と話をする前に2人が密会しているところを茂み越しに聞きましたから。
私と結婚するまでまだ1年半以上あるので居座りそうですよ。
母として我が子のそばにいて、結婚後も引き離すのが可哀想だと思わせたいみたいです。
実の母からリムを奪う、悪女のように思われているみたいですね。」
「……今も関係を続けているとは。もっと誠実な男だと思っていたが所詮平民上がりか。
あるいは、父親の伯爵に似ていると言うべきか?
とにかく、子供を嫡子とするのであれば、その恋人は邪魔だ。
もう会わないように言うべきだろう。あちらもそれくらいの条件はのむべきだ。
すまないな、サリューシア。共同事業がなくとも立ち直して、お前が帰れるようにする。」
「はい。期待しています。」
結婚後にテオルドのいる領地に行きたいということはまだ言わない。
その頃の彼の病状がどうなっているかがわからないし。
ただ、どんな状況になっていようと、ブルーエ伯爵夫妻とティムのそばにいたいともいるべきだとも思えない。
見舞いになろうが、……墓参りになろうが、テオルドの近くに行きたかった。
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