文字の大きさ
大
中
小
11 / 19
11.
フィルバートは、ハーリー伯爵夫妻が来ていることを黙ってオスカーを連れてくるように言ったため、現れたオスカーは彼らをみてとても嫌そうな顔で言った。
「……何。また来たの?暇なの?ここは愚痴を言ったり茶を飲みに来る場所じゃないよ。」
「オスカー、何てことを言うんだ。我々はお前のためを思って睨みをきかせに来ているんだぞ?」
それではまるで彼らが来なければ、フィルバートがオスカーを虐げるように聞こえるが。
まったく失礼な言い方だ。
「あのさあ、もう迷惑なの。それに僕、侯爵にはならないから。もう放棄の手続きは済ませたし。」
あっけらかんとそう言ったオスカーに、ハーリー伯爵夫妻は言葉が出ないようだった。
「昔からさぁ、すっごい気が合わないような家庭教師ばっかり押し付けてきて。お陰で礼儀作法も勉強も嫌になったよ。僕はさ、お祖父様たちからの期待がものすごく鬱陶しかったんだ。自由になりたいんだよ。」
オスカーの教育は自分たちが手配をすると主張するため、ハーリー伯爵夫妻に任せていた。
フィルバートは多くの執務を抱え、有難いとすら思っていた時期はあった。
しかし、教育の進捗状況を確認してみれば、オスカーは嫌がって逃げてばかりいた。
家庭教師が嫌だと聞き、別の者の手配を伯爵夫妻に頼んだが、それはフィルバートがオスカーが賢くなることを妬んでいるのだと誤解された。
この十二年、何度も似たようなやり取りを繰り返してきたのだ。
オスカーに同情する気持ちはあったが、フィルバートが間に入れば余計にややこしくなるため、あと少しの我慢だと思ってきた。
四か月後には学園に入学する。
その前に、家庭教師は役目を終えるからだ。
「なっ!侯爵になるお前のためを思って選んだ者たちだぞ?優秀だったはずだ。」
「頭はいいんだろうけど、だからこそ、間違えたら見下されるんだよ。それが腹が立つ。やる気が失せる。今は寝てても一人で勝手に話して帰っていくだけだ。」
そうなのか?
『真面目に聞いてくれているのですが、すぐに忘れてしまわれるようで……』と、成績が上がらないことを苦悩しているようだったが。
高い授業料を払っていたが意味がなかったな。
彼らにとって、ここは楽に金が稼げる場所だっただろう。
「この際、馬鹿でもいいんだ。学園を卒業さえすれば侯爵にはなれる。実務はその男に任せればいい。継承放棄は取り下げるんだ!!」
言いたい放題だな。
「嫌だよ。もうここには来ないでほしい。ほんと、迷惑なんだ。もう隠居して領地に引っ込んだら?叔父上もその方が嬉しいと思うよ。」
そう言ってオスカーは部屋を出て行った。
「あぁ、ハーリー伯爵。私はコールマン侯爵です。今後は立場を弁えてください。」
フィルバートはそう言い残し、呆然としている彼らの前から去った。
感想
あなたにおすすめの小説
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜
よどら文鳥※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。
夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。
不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。
どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。
だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。
離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。
当然、慰謝料を払うつもりはない。
あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?
【完結】私と婚約破棄して恋人と結婚する? ならば即刻我が家から出ていって頂きます
水月 潮ソフィア・リシャール侯爵令嬢にはビクター・ダリオ子爵令息という婚約者がいる。
ビクターは両親が亡くなっており、ダリオ子爵家は早々にビクターの叔父に乗っ取られていた。
ソフィアの母とビクターの母は友人で、彼女が生前書いた”ビクターのことを託す”手紙が届き、亡き友人の願いによりソフィアの母はビクターを引き取り、ソフィアの婚約者にすることにした。
しかし、ソフィアとビクターの結婚式の三ヶ月前、ビクターはブリジット・サルー男爵令嬢をリシャール侯爵邸に連れてきて、彼女と結婚するからソフィアと婚約破棄すると告げる。
※設定は緩いです。物語としてお楽しみ頂けたらと思います。
*HOTランキング1位到達(2021.8.17)
ありがとうございます(*≧∀≦*)
義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。
あなたの仰ってる事は全くわかりません
しげむろ ゆうき ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。
しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。
だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。
全三話
婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。
佐藤 美奈伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。
しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。
そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……