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しおりを挟むメアリーを王都から追い出し、エドモンドに近づかせないためにシモーヌはメアリーを脅したのではないか。
そんな気がしてきた。
ということは、メアリーの妹の行方不明もシモーヌの指示なのかもしれない?
そんなことを考えていると、エヴァンがいることを忘れていた。
「おい、聞いてるのか?」
「え、あ、ごめんね。何?」
「……いや、俺はお前と結婚するつもりだったんだぞ?傷があろうがなかろうが。」
「うん。エヴァンは優しいもの。」
「お前となら、それなりに楽しく暮らせるんじゃないかって思ってた。」
「うん。婚約者っていうより友人だったものね。」
「……お前、エドモンドと結婚できるのに嬉しくないのか?」
「嬉しくない、かな。振り向いてくれないとわかってる人だから。憧れのままでよかったの。」
「あー……わかる。俺もそうだな。お前がエドモンドと結婚するってことはシモーヌ嬢の婚約者はいなくなる。負債のことがなかったとしても告白する気があるかって言われたら、ないって答えるな。」
「憧れだから?」
「ああ。でもそれだけじゃない。妻にするには、なんか、こう違うんだよな。疲れそうで。」
憧れは少し離れたところから見ているだけで満足するもの。
恋愛の好きと違うのに、混同していたのだろう。エヴァンも、多分リゼルも。
憧れに近づいてしまえば、緊張する毎日を送ることになる。
慣れるまでは疲れるだろう。どれくらい時が経てば慣れるものなのだろうか?
「疲れる。そうね。わかるわ。一緒にいて安らげない生活なんて結婚する意味がわからないわ。」
「……浮気、しそうだな。」
誰が?と聞かなくても、エドモンドが、ということだろう。相手はシモーヌになるのか別の女性か。
「何年か経てば離婚できるかしら。」
「どうだろうな。でも、子供でもできていたら離婚しにくいんじゃないか?」
「子供、か。公爵家だものね。愛人の子供でも実子として育てろって言われそう。」
「……かもな。」
いつの間にか、エドモンドを浮気する男だという前提で話をしていることに笑えた。
少し前までのエドモンドには婚約者を一途に愛する男だと勝手な思い込みと理想を押しつけていたというのに、婚約者が自分になると知った途端、浮気する男になってしまった。
結局は彼のことを何も知らないということだ。
「エヴァンの次の婚約者は年下になりそうね。」
「ああ。お前とは来年結婚する予定だったけど、3年くらい先になるんじゃないか?」
今から婚約者がいない令嬢を探すとなるとそうなるだろう。
でも男の場合は結婚適齢期が幅広いため、相手にあまり苦労することはない。
伯爵家であるため、できれば伯爵令嬢が好ましく援助を求められない貴族家なら尚安心となる。
エヴァンが、次の婚約者とは思い合えるような関係になってくれたらこの婚約解消も意味があったのではないかと思える気がした。
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