好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

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ビクターと父に呆れたような目で見られたエドモンドは自分の何が悪いのかわからなかった。

レーゲン公爵家に嫁いだがために避妊薬を飲まされ続けて不妊になったかもしれないリゼルを、責任を取って復縁してやると言った自分は心の広い男と称賛されてもおかしくはないはずだ。
 
それなのに、なぜ?


「エドモンド。リゼルは私の妻だったルキアや、お前の妻のアナレージュとは種類の違う女だ。
ルキアやアナレージュは公爵夫人という地位と公爵家の財産で贅沢し、その対価として子供を産む。
実家にも益をもたらす政略結婚で、夫に愛人がいようが自分が害されることがなければ問題ない。
そんな女たちだ。」


それは、そうだろう。そもそも、貴族なんて政略結婚ばかりなんだ。
恋愛に見えても、実は親が会わせてもいいと判断したから知り合う機会を得るんだ。
政略で結ばれた婚約者と恋愛しても、元は政略結婚だろう?

あれ……?となると、シモーヌとの仲も恋愛ではなくて政略だったのか?
 
エドモンドが少し違う思考に気を取られているのに気付いたのか、父は話を続けた。


「リゼルも無理やり婚約者が変更されることになっても貴族令嬢としてお前と結婚した。
だが、彼女は公爵夫人の座や財産など興味がない女だ。どちらかと言えば、家庭を大切にしたいと思い、夫や義理の両親と会話をし円満を望み、可能であれば夫と愛し合える関係を望む女だ。」


それは……そうかもしれない。


「そんなリゼルに、愛しているから復縁しようと言うならともかく、責任を前面に出して、しかも、愛人を持つ気でいる男の元になど、戻りたいと思う女ではないだろう?
お前は思っていることを直接的に言いすぎる。
騙す結果になろうとも、例え口先だけでも愛を告げ、復縁した後しばらくしてから、跡継ぎのために金で産んでくれる女性を探さなければならないと段階を踏んで納得させるべきなんだ。」

「そうそう。エドモンドは腹黒さが全然足りないね。はかりごとができないなぁ。」


ビクターは口が上手そうだし、腹黒そうだ。常に何か企んでいそうな気もする。


「つまり、リゼルはここに戻ってきても自分も子供も愛されず、夫は愛人のもとに通うような暮らしは幸せじゃないから、妊娠していることを告げる気にならなかったということか?」

「だろうね。彼女の実家は別に貧乏じゃないし家族の仲はいい。頼めば子供は兄夫婦の養子にもしてもらえるだろうし、平民になって子供と2人で領地で暮らしてもいいと思ったんじゃないの?
まぁ、今は再婚しちゃったけどね。」


本当に、リゼルはエドモンドの子供を産んだのか?

その子が今はエヴァンの子供になっている?

冗談じゃない。その子、レイフォードはレーゲン公爵家で暮らすべきだ。何ならリゼルも。

2人を愛すればいいのだろう?そのくらい、簡単に演じられる。



 
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