好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

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エドモンドの案は訳の分からない戯言のようなものとしてリゼルはレイフォードのことについての妥協案の話に移りたかった。

しかし、エドモンドは納得がいかなかったのか、焦ったように待ったをかけた。
 

「ちょっと待ってくれ。リゼルはエヴァンと婚約している時も私のことが好きだったんだろう?
つまり、今、エヴァンと結婚しているのも政略結婚なだけで、恋愛感情があるわけじゃない。違うか?」

「……私は家族を愛しているわ?」

「そういうことが聞きたいんじゃない。エヴァンを恋愛的な意味で好きなのかと聞いている。」

「確かに、エドモンド様が思うような恋をエヴァンにはしていなかったわ。
エヴァンに対しては婚約前から愛なの。家族愛、友情としての愛で、よくある男女の愛とは少し違うわ。」

「ほら見てみろ。エヴァン、お前は男として好かれていないんだ。」


嬉しそうなエドモンドが不思議だった。そんなに優越感を抱くほどのこと?


「別に構わないさ。俺だってリゼルと婚約していた時にシモーヌ嬢に憧れていたし。」

「シモーヌに?」

「ああ。彼女は意思をはっきり言うカッコいい令嬢だと思ってた。結婚するのは疲れると思ったけどな。
別に俺とリゼルは嫌々婚約していたわけじゃない。家族になるのは当たり前だと思ってたし仲も良かった。
学生の間はお互いに憧れの人を見て楽しんでいただけなんだ。本気で恋しようと思っていなかった。」

「だが、リゼルは私を好きになっただろう?」


エドモンドはリゼルが自分を好きだったことにこだわっているようだ。


「結婚したからには嫌いになるより好きになりたいもの。あなたはほとんど会話もしてくれなかったけど。
でもね、エドモンド様を好きになった感情も憧れの延長みたいなものだったの。
学生の時は振り向いてほしいなんて思っていなかった。遠くから見てるだけでよかった。 
だけど、婚約して、結婚して、近くなったあなたは私が憧れた人と随分と違ったわ。

理想と現実は違う。その通りね。身に染みたわ。
 
だから、元々結婚するはずだったエヴァンとの再婚はホッとできる場所だったわ。
理想を形にしていくためにエヴァンと協力し合えるから。

私は穏やかな愛に包まれて過ごしたいの。厄介な恋をしたいとは思わないわ。」
  

今度こそ、エドモンドは納得できただろうか。納得できなくても、愛人になる気はないけれど。


「そもそも、愛人ってことは今の妻と離婚しないってことだろう?あぁ、できない、か?
向こうに非があるわけじゃないし、いい再婚相手に恵まれる可能性も低い。なら、エドモンドの妻のままでいた方が次期公爵夫人だもんな。自分の子供を産むことにこだわらなければ、地位と金のある今の暮らしを手放すわけはないよな。」


エヴァンの言ったことが図星なのか、エドモンドは反論することはなかった。



 
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