好きな人に振り向いてもらえないのはつらいこと。

しゃーりん

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アナレージュは真っ青になりながら待っていた侍女に支えられて自分の私室へと戻った。
 

「ウソよ、噓でしょ、まさか、こんなことになるなんて……」


ベッドに寝かされたアナレージュは、自分の下腹部に手をあてた。

アナレージュは自分が妊娠していることに気づいた。
そして、そのことをエドモンドに告げて医師を呼んでもらおうと思ったのだ。
 
だが、その前にエドモンドから自分が種無しだと告白された。

つまり、この子はエドモンドの子供ではない。

もちろん、アナレージュには身に覚えがある。つまり、その時の子供だということだ。

 
「なんでこんなことに……」


アナレージュは自分がやらかしてしまったことを嘆いた。




ことの発端は、エドモンドの愛人の女が妊娠したことである。
それを知ったアナレージュは、子供ができなかった原因がエドモンドにあるのではなく自分にあったのだと思った。

エドモンドはその愛人の子供を公爵家で育てるだろう。
アナレージュは離婚する気はないので、自分の子として育てることになる。
まぁ、名ばかりの母親ということになるだろうが。
エドモンドもアナレージュと離婚してまで愛人の女と結婚する気はないのだから。

高位貴族にはよくある話だ。
アナレージュは自分の立場さえ安全であれば、実子でなくとも構わなかった。
実家の父がうるさいかもしれないが、兄の子供と産まれてくる愛人の子供を婚約させれば公爵家との繋がりは続く。

アナレージュが産まなくともエドモンドの子供であれば公爵家は問題ないのだから。

そう割り切っていたが、少し悔しい思いもあった。
それに加えて、少しの好奇心も沸いた。エドモンド以外の男に。

避妊薬は不妊になる可能性もあると聞くので飲めないため、アナレージュは浮気をしたことがなかった。
だが、妊娠しないのであれば浮気しても問題ない。
エドモンドもしているのだ。自分も構わないだろう。

そう思い、初めて参加した仮面パーティーで羽目を外した。
2人組の男と交わったのだ。 

その数日後、エドモンドの愛人は他の男も引き込んでいたらしく、タイミング的にエドモンドの子供ではないと判明したと耳にした。

驚いた。ということは、アナレージュが不妊と決まったわけでもないのだ。

避妊薬を飲まずに浮気したことを思い出したが、妊娠しやすい時期に抱かれたのはエドモンドで、浮気した2人とは時期が少しずれていたから問題ないと思った。

しかし、月のものがこない。ということは、妊娠している?

浮気といういつもと違う行動をしたことで、アナレージュの体に何か変化が起こったのかもしれない。

そんな風に都合よく考えていた。 

それなのに、まさかエドモンドが種無しだとは……

つまり、この子はあの2人の男のどちらかの子供なのだ。産めるわけがない。産みたいとも思わない。

考えがまとまったアナレージュは、忠実な侍女を呼んだ。


「堕胎薬を手に入れてきて。」

「アナレージュ様……?まさか、子供はあのパーティーの?」

「そうみたい。エドモンドは種無しなんですって。」


侍女は悲痛な顔をした後、頭を下げて退室して行った。
 


 
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