47 / 72
47.
しおりを挟むアナレージュは真っ青になりながら待っていた侍女に支えられて自分の私室へと戻った。
「ウソよ、噓でしょ、まさか、こんなことになるなんて……」
ベッドに寝かされたアナレージュは、自分の下腹部に手をあてた。
アナレージュは自分が妊娠していることに気づいた。
そして、そのことをエドモンドに告げて医師を呼んでもらおうと思ったのだ。
だが、その前にエドモンドから自分が種無しだと告白された。
つまり、この子はエドモンドの子供ではない。
もちろん、アナレージュには身に覚えがある。つまり、その時の子供だということだ。
「なんでこんなことに……」
アナレージュは自分がやらかしてしまったことを嘆いた。
ことの発端は、エドモンドの愛人の女が妊娠したことである。
それを知ったアナレージュは、子供ができなかった原因がエドモンドにあるのではなく自分にあったのだと思った。
エドモンドはその愛人の子供を公爵家で育てるだろう。
アナレージュは離婚する気はないので、自分の子として育てることになる。
まぁ、名ばかりの母親ということになるだろうが。
エドモンドもアナレージュと離婚してまで愛人の女と結婚する気はないのだから。
高位貴族にはよくある話だ。
アナレージュは自分の立場さえ安全であれば、実子でなくとも構わなかった。
実家の父がうるさいかもしれないが、兄の子供と産まれてくる愛人の子供を婚約させれば公爵家との繋がりは続く。
アナレージュが産まなくともエドモンドの子供であれば公爵家は問題ないのだから。
そう割り切っていたが、少し悔しい思いもあった。
それに加えて、少しの好奇心も沸いた。エドモンド以外の男に。
避妊薬は不妊になる可能性もあると聞くので飲めないため、アナレージュは浮気をしたことがなかった。
だが、妊娠しないのであれば浮気しても問題ない。
エドモンドもしているのだ。自分も構わないだろう。
そう思い、初めて参加した仮面パーティーで羽目を外した。
2人組の男と交わったのだ。
その数日後、エドモンドの愛人は他の男も引き込んでいたらしく、タイミング的にエドモンドの子供ではないと判明したと耳にした。
驚いた。ということは、アナレージュが不妊と決まったわけでもないのだ。
避妊薬を飲まずに浮気したことを思い出したが、妊娠しやすい時期に抱かれたのはエドモンドで、浮気した2人とは時期が少しずれていたから問題ないと思った。
しかし、月のものがこない。ということは、妊娠している?
浮気といういつもと違う行動をしたことで、アナレージュの体に何か変化が起こったのかもしれない。
そんな風に都合よく考えていた。
それなのに、まさかエドモンドが種無しだとは……
つまり、この子はあの2人の男のどちらかの子供なのだ。産めるわけがない。産みたいとも思わない。
考えがまとまったアナレージュは、忠実な侍女を呼んだ。
「堕胎薬を手に入れてきて。」
「アナレージュ様……?まさか、子供はあのパーティーの?」
「そうみたい。エドモンドは種無しなんですって。」
侍女は悲痛な顔をした後、頭を下げて退室して行った。
2,180
あなたにおすすめの小説
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい
冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」
婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。
ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。
しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。
「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」
ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。
しかし、ある日のこと見てしまう。
二人がキスをしているところを。
そのとき、私の中で何かが壊れた……。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】誠意を見せることのなかった彼
野村にれ
恋愛
婚約者を愛していた侯爵令嬢。しかし、結婚できないと婚約を白紙にされてしまう。
無気力になってしまった彼女は消えた。
婚約者だった伯爵令息は、新たな愛を見付けたとされるが、それは新たな愛なのか?
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる