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しおりを挟む思いのほか、あっけなく婚約が白紙になり実感がわかない。
馬車に乗ろうとしたところ、ルーク様が騎士とやってきた。
「クラリス嬢、良い結果になったかな?おめでとう。
ところで、ジェシーという使用人が伯爵家にいるだろ?
聞きたいことがあるから、俺と騎士も一緒に行くから。」
「え?はい。わかりました。」
別々の馬車に乗り、伯爵家へと向かった。
「お父様、ジェシーって私が産まれる前からいるのよね?」
「そうだな。20年以上勤めてくれてるはずだ。何かあったんだろうか?」
伯爵とクラリスは首を傾げて考えたがわかるわけもなかった。
伯爵邸に着き、ジェシーを応接室まで連れてくるように指示をした。
伯爵とクラリス、ルークが座り、騎士たちは立ったままだ。
そこにジェシーがやってきた。
「旦那様、お呼びでございましょうか。」
「ああ。こちらの方が聞きたいことがあるそうだ。」
ルークではなく、騎士の年配の男が聞いた。
「2日前、クロット子爵家のリンという侍女に会ったか?」
ジェシーがわずかに動揺した。
「会ったようだな。
リンが持っていた白い粉は、お前に貰ったという。間違いないか?」
「…いえ。知りません。」
「しらばっくれるか?伯爵、この女の部屋を探りたい。捜査に協力を。」
「捜査?事件なのですか?わかりました。どうぞ。」
「旦那様!私を疑うのですか?ずっとお仕えしているのに!」
「ジェシー、やましいことがないのであれば調べてもらって証明する方がいいじゃないか。」
「でも!…」
後退るジェシーを騎士二人が推しとどめ、残りの騎士がジェシーの部屋へと案内された。
しばらくして、白い粉が入った小さな容器を騎士が持ち帰った。
「ジェシー、これは何だ?」
「………」
騎士が聞いてもジェシーは答えない。
「お前、これを舐めるか?」
ジェシーは首を横に振っている。
「この粉が何かは今の時点ではわからない。
しかし、リンが持っていたものと同様だと思われるため、お前を拘束する。」
騎士たちがジェシーを拘束して部屋を出る。
「伯爵、ジェシーから聞き出した話の中身次第であなたと使用人たちにも聴取することになります。」
「わかりました。」
伯爵とクラリスはよくわかっていなかったが、ジェシーが犯罪を犯したのかもしれないことは理解した。
そして、何故か一緒に来てまだここに残っていたルークが言った。
「あの白い粉は、おそらく毒です。」
「「毒…」」
クラリスは、ハッと思い当たりルークを見た。しかし、口にはしなかった。
「ところで、君はクラリスのクラスメイトらしいね。」
「はい。ライアル侯爵家の三男ルークと申します。こちらに婿入りを希望します。」
「はあ?どういうことだ?クラリス、彼と交際していたのか?」
「いえ、違います。ルーク様は婚約解消を手伝ってくれたのです。
今日、王城に呼ばれたのも侯爵様が承諾なさったのもルーク様のお陰ですよね?」
「まあ、実際は俺が殿下にお願いしてあの場を設けてもらったんだけどな。」
「ありがとうございました。無事に婚約が白紙になりました。」
「それで婿入りとは何だ?どう繋がる?」
「クラリス嬢に、婚約が解消されたら私と契約結婚するように打診していました。
条件を満たしたので、伯爵様にも承諾いただこうと参りました。」
「契約結婚?政略結婚ではなく?」
「ええ。私個人の都合であり、実家は関係ありません。
もちろん縁戚になるわけですから、事業に利点があれば父と取り決めてくださって構いません。」
「契約の内容は、私にも教えてもらえるのか?」
「もちろんです。伯爵様にもお願いが必要なことですから。」
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