王妃様には表舞台から消えていただきます

5.

　
　
かつての王妃自身も婚約者のいる王太子を誘惑して妊娠し、まんまと正妃の座についたというのに、なぜコレットをグランツの正妃にすることは反対なのか。
　

「グランツ殿下とコレット様は愛し合っているのに、コレット様は正妃にできないのはなぜですか？」

「だって、貧乏男爵令嬢じゃないの。正妃になってどうするの？妃に充てられている費用が全て教育に回されるのよ？いろいろ買いたい物があるのに、そのせいで予算が足りないって却下されるの。
欲しければ教育を終えるか、実家に援助してもらえって言われるのよ？ルドルフにおねだりしてちょっとは欲しい物を手に入れることはできたけど、全然贅沢なんてできないんだから！」
　

それは仕方ないのでは？
側妃であるネフェリーナ様は、王太子妃になるために何年も教育を受けられて将来の王妃として申し分ないと誰からも称賛されていたという。
その努力を、この馬鹿王妃は足蹴にしたも同然。

しかも、何年経っても語学も礼儀作法も合格水準を満たすことができず、よその国では話しかけてももらえない存在なのだとか。側妃ネフェリーナ様がまるで正妃のように扱われるため、馬鹿王妃の機嫌は悪くなる。
それならば同行しなければいいのに、国王ルドルフは自分のものだと見せつけているらしい。

ルネーゼリアが正妃になりたいがために結婚式の花嫁が入れ替わったことはどの国にも知られていることで、ルネーゼリアの言動はいつも失笑のネタになっていることにも気づいていない。


「ですが、教育を受けられるのはコレット様ですよね？意外と優秀で早々に教育を終えられるかもしれませんよ？それに、もしかしたら質素を好まれるかもしれません。ならば予算など王妃様が気遣う必要もありませんわ。」


学園の成績は散々だったけどね。


「でも、だって、グランツの正妃が裕福な令嬢なら、グランツの母である私にも、ね？」
　

コレットを気遣ったような言葉の裏側は、王妃である自分に貢げということらしい。

しかし、もしチェルシーがグランツの正妃になっていたとしても馬鹿王妃に貢ぐ気はこれっぽっちもなかったということを王妃はわかっていない。


「だから、ほら、あなたたちなら実家も裕福だし教養も問題ないでしょう？グランツの正妃にすぐにでもなれるわ！」
　

王妃は４人の令嬢に向かってそう言ったけれど、誰も目を合わせようとしなかった。

これが我が国の王妃だと思うと嘲笑しそうになるので視線をズラしているのだろう。


「王妃様、彼女たちはまだ学園に通っています。そして卒業する頃にはコレット様はご出産なさっていますわ。
そんな中でも、正妃となるからにはグランツ殿下と閨を共にして跡継ぎを産むことになります。
コレット様が男女どちらのお子を産まれるかはわかりませんが、正妃との子が優先となります。
コレット様は納得されるでしょうか？」
　
「そんなの、グランツが正妃を抱かなければ問題ないじゃない。」


では一体何のためにグランツの妃になる必要があるの？