王妃様には表舞台から消えていただきます

しゃーりん

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グランツ殿下の正妃になる令嬢は、グランツに抱かれなければ子を産むことができない。

つまり、それはコレット男爵令嬢が産む子供が跡継ぎになるという意味になる。
 

「王妃様、冗談が過ぎますわ。それで正妃になりたがる令嬢がどこにいますの?」

「え?どうして?だって、将来は王妃になれるのよ?」

「ならば、王妃様。その地位の魅力を教えていただけますか?」
 

ルネーゼリア王妃はまだ王妃となって1年と少ししか経っていない。
国王ルドルフの父、前国王陛下の在位が長かったからだ。
 
この国の平均寿命は60歳過ぎ。50歳代になると判断力が落ちてくるため、この国では王太子が30歳前後になると国王の座を譲り受けるということが続いていたが、ルドルフが国王になるということはルネーゼリアが王妃になるということ。

王太子妃としてもまともに公務ができないルネーゼリアを王妃にするのは国の恥。
そのルネーゼリアを叱るでもなく庇い続けるルドルフも国の恥。

前国王陛下は、できることなら孫に譲位したかったのだ。

しかし、57歳で病に倒れ、ルドルフに国王の座を渡すしかなかった。 

その際、側妃であるネフェリーナ様が王妃になるべきだとの声は多くあったが、そんな声などまるで聞こえないといった態度で堂々と王妃の座に座ったのがルネーゼリア。

では実際に王妃になってのご感想は?
 

「王妃の魅力?そうねぇ。男爵令嬢だった私が国の一番上にいる女になったの!」

「それは魅力ではなく事実ですね?」

「そうなんだけどっ!ほら、みんなが私に頭を下げるの。快感よ?」

「それは王妃様個人を敬ってのことではなく、単なるその地位に就いている人に形骸化としての礼儀みたいなものだと思いますよ?」

「ん……?けいがいか?って何?わかりやすく言ってくれなくちゃ。」

「単に決められた挨拶みたいなものってことです。相手がどんな人であれ。」

「んー?そうね。挨拶はするわよね。って何の話をしていたのか忘れちゃったわ。」

「王妃の地位の魅力についてです。」

「あぁ、そうだったわね。前よりも経費として使える予算が増えたの!……でも、私が選ぶ物が王妃の気品に相応しくないって全部却下するのよ?ひどくない?可愛いものが好きなのに。」

「デビューしたての10代の令嬢ではないのですから、過度なフリルやリボン、ハート柄や花柄はもう似合いませんものね。」

「そうそう。フリルは沢山、リボンもいっぱい、ハートや花柄は目立つように大きく……え?似合わないって誰が?」

「誰がというか、30歳どころか20歳半ばを過ぎるとそのような装飾を過度にあしらっても一般的に似合わないのではないでしょうか?
そういうのは、彼女たちみたいな10代半ばの令嬢たちにこそ似合うものですもの。
今日の皆様のドレス、可愛くてとてもお似合いだわ。」


王妃ルネーゼリアのドレスを嘘でも似合っているとは言えたものじゃない。



 


 
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