王妃様には表舞台から消えていただきます

しゃーりん

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公爵令嬢チェルシーは、何度もグランツ殿下との婚約を拒んでいた。

当時の国王は、グランツの祖父母である前国王陛下夫妻で、孫の頭の悪さに国の未来を憂いたのだ。
そこで身分も容姿も頭脳も申し分ないチェルシーが望まれた。

それはわかるが、チェルシーには好きな人がいた。

側妃ネフェリーナの息子、第二王子殿下ローランドである。

しかし、このローランド、秘された王子であった。 

秘されているからといって、側妃が不貞の末に産んだわけではない。
ローランドの父親はルドルフ。
間違いなく王子である。

ではなぜ秘されているのか。

それは、ルドルフが正妃ルネーゼリアとの約束を破ったからだ。



花嫁の座をネフェリーナから奪い、ルネーゼリアがルドルフとの結婚式を終えた後、王宮での暮らしが始まった。それは正妃ルネーゼリアだけでなく側妃ネフェリーナもである。
 
すでに妊娠中のルネーゼリアは、悪阻もあって感情の起伏が激しかった。
もちろん、ルドルフはそんなルネーゼリアを抱けないため欲を発散することができない。
 
ルドルフはルネーゼリアから言われていた。

『ネフェリーナ様に子供ができてしまうとお腹の子より跡継ぎに相応しいと思われるから抱かないで』と。

しかし、ルドルフはネフェリーナのことが決して嫌いなわけではなかった。
幼いころからの婚約者で、むしろ仲は良かったのだ。

ただ、ルネーゼリアの外見がルドルフの好みのど真ん中であったことから、ついつい誘惑に負けてしまった。
お馬鹿なところも和む要素であり、女性として好ましく思っているのだ。

対して、頭の良いネフェリーナは国をよくする同士といったところ。
仕事をするだけなら正妃でなく側妃でも問題ないだろうと思ってしまったのだ。

だが、側妃でもルドルフの妃であることに違いない。

欲を発散するための相手はネフェリーナであるべきだ。妊娠させなければいいのだから。

そう思い、ルネーゼリアの妊娠中、何度もネフェリーナと閨を共にしたのだ。

結果、ネフェリーナも妊娠。

ルネーゼリアとの約束を破ってしまったことがバレることを恐れたルドルフは、子供ができたことはルネーゼリアに隠すようにとネフェリーナに命令した。
 

ルネーゼリアが王子グランツを産んだ半年後、ネフェリーナは王子ローランドを産んだ。

侍女たちの努力の甲斐もあり、ルネーゼリアはローランドのことを知ることもなく過ごしている。

だが、知っている者は知っている。
ルドルフはルネーゼリアに隠せと言っただけなのだから。

側妃ネフェリーナとチェルシーの母は友人なのだ。
母に連れられて、チェルシーは何度もローランドと会っていた。
 
幼いころからお馬鹿なグランツではなく、聡明なローランドに跡を継がせたいと前国王陛下も思っていたが、正妃の息子と側妃の秘された息子。
ルドルフは正妃ルネーゼリアに嫌われることを恐れて、ローランドのことを隠し続けるのだからどうしようもない。
 

だからチェルシーは前国王陛下とルドルフ国王陛下に条件をつけてグランツとの婚約を承諾したのだ。

 





 
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