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しおりを挟む公爵令嬢チェルシーが第一王子殿下グランツとの婚約を承諾したのは15歳のとき。
学園に入学する直前のことだった。
正式に顔合わせをしたとき、グランツ殿下はチェルシーに言った。
『美人だけど今まで婚約者がいなかったのは性格が悪いからなのか?』と。
この時点で、グランツとうまくいかないであろうことはわかりきっていた。
チェルシーが返答する前に、グランツの父、ルドルフが慌てて言った。
『グランツと婚約するために、努力してくれていただけだ』と。
何やら誤解が生じそうな言い方だった。
チェルシーが何事にも努力していたのはグランツのためではない。自分のためだ。
公爵家の令嬢として恥じない振る舞いを心掛け、国に貢献するためでもある。
そして、秘された王子ローランドが表に出てくる時、隣に立つに相応しい存在であるためだった。
しかし、グランツはそんなことを知るはずもなく。
彼は、チェルシーがグランツの婚約者になりたくて頑張ってきたのだろうと勘違いしたようだ。
訂正する気もおこらず、まぁ、別にどうでもいいとチェルシーは思った。
そして2人は学園に入学。
男爵令嬢コレットがグランツに擦り寄ってきたのは約1年後のことだった。
それまでも寄ってくる令嬢にデレデレしていたグランツは王子として相応しい振る舞いができていたとは言えなかったが、コレットに影響を受けて学業ももっと疎かになってきていた。
グランツとコレットが恋仲だと目され始めた頃、グランツの祖父である前国王陛下が退位、グランツの父ルドルフが国王、グランツが王太子となった。
そうなると、コレットはグランツのよそ見も許さないといった感じで自分に夢中になるように仕向けた。
そう。体を使ったのだ。ひとたまりもなかった。
グランツはコレットに夢中になった。
この時点でチェルシーはグランツとの婚約を破棄できた。
しかし、国王ルドルフは卒業まで猶予が欲しいと頼んできた。
卒業までまだ1年あったからだ。
その間にグランツがわが身を振り返り、行動を改めることができれば再度検討してほしい、と。
そこで、チェルシーは条件が満たされなかった場合の見返りを追加した。
条件は2つあった。
一つは、成績を上位で保つこと。20位以内であるべき。
もう一つは、特定の者と不適切だと判断される関係をもたないこと。男女問わず。
卒業までにこの条件が守られなかったと判断した時の見返りは、グランツ有責での婚約破棄を認めること。
そして、グランツは王太子に相応しくないためローランドを王太子とすること。
そこに、チェルシーは見返りをもう1つ追加した。
正妃ルネーゼリアに表舞台から消えてもらうこと。
結局、卒業まで待ってもたった2つの条件のどちらもグランツは守れなかったため、近々グランツはただの王子になる予定だ。しかし、卒業パーティーという公の場で醜態を晒したため、状況次第では王子でいられるかも怪しい。
そして、王妃ルネーゼリアは、自ら開いたこのお茶会が王妃の名で人を呼べる最後の場となるのだ。
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