王妃様には表舞台から消えていただきます

しゃーりん

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幽閉されても構わないと言った王妃様は、『またね~』と言って侍女と去って行った。

……『また』はないのに。 



「皆様、巻き込んでしまってごめんなさいね。」


チェルシーはほとんど傍観者のように座っているだけになってしまった4人の令嬢に謝罪した。


「いえいえ、不謹慎ですが、観劇を見ているようでしたわ。」

「ええ。王妃様の天然具合に笑いを堪えるのに必死でした。」

「前国王陛下が譲位を遅らせた苦労を垣間見ましたわ。」

「王妃様は可愛がられるだけの暮らしがお似合いなのでしょうね。」
 

楽しんでいただけてよかった。


「それよりも、チェルシー様はローランド殿下と婚約されるのですか?」

「ええ。その予定よ。」

「両想いなのですか?」

「ええ。そうね。幼いころから結婚しようねって約束していたの。」
 

キャーっと令嬢たちが喜びの声を上げる。恋愛話は楽しい話のタネなのだ。
 

「じゃあ、もしグランツ殿下が真面目に努力して婚約者としてチェルシー様を大事にしてくれていた場合はどうなっていたのですか?」
 
「どうかしら?その可能性はないに等しいと思っていたから。
彼の勉強嫌いが簡単に治るのであれば、指導していた教師たちも苦労せずに済んだはずよ。
それに、私を避けていたもの。会えば、教師みたいに口うるさく言われると思ったのでしょうね。」


王妃様に似て深く考えることをしないグランツ殿下は、本能的にチェルシーを敵だと認識し、自分をおだててくれるような心地いい友人だけを好んだ。

父である国王ルドルフのように狡猾な性格ではなく、ある意味、素直なのだ。


「王太子がグランツ殿下からローランド殿下に変更されることは近々公表されるのですよね?
ローランド殿下は隣国におられるようですが、帰国されてこの国の学園に通われるのですか?」

「いえ、彼は隣国で飛び級して学園を卒業したはずだわ。あと何日かすれば帰国すると思うの。」


卒業パーティーで婚約破棄されなくても、グランツ殿下とは婚約解消になっていたのだ。

一応、卒業後の予定に結婚式の日取りや公務も入っているが、それはチェルシーとローランドに全て置き換わることになっていた。
その予定を変更しないために、ローランドは1年早く卒業したのだから。 


「ということは、結婚式は予定通りに?」

「ええ。半年後になるわね。」


再び、キャーッと喜びの声があがった。

彼女たちはチェルシーよりも年下であるため、結婚はまだ先になる。
だけど、彼女たちが嫁ぐ先は高位貴族の元であるため、子供同士が縁を結ぶ可能性が高くなるのだ。

王族の子供に合わせて、高位貴族の出産も多くなる。
それなのに、王子が選んだのが絶世の美女でもなく、尊敬される才女でもなく、単なる貧乏男爵令嬢。
しかも2代続けて。

そうなると誰に一番怒りが向くか。

それは、王妃ルネーゼリアにだろう。
 
誰かを悪に仕立て上げるならば、王族ではなく彼女になるのだ。

 

 
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