18 / 20
18.
しおりを挟む数日後、ローランドが帰国したという知らせを受けてチェルシーは王宮へと向かった。
「ローランドっ!お帰りなさい。」
「チェルシー!ただいま。会いたかった。」
ローランドは以前よりも逞しくなっており、チェルシーをしっかりと抱きしめていた。
グランツ殿下と婚約してからは、誰も報告はしないと思いながらも浮気だと疑われないように距離感には気をつけていたし、ローランドが隣国に行ってしまってからは数えるほどしか会えなかった。
だが今はもうグランツ殿下と婚約していないのだ。
淑女としてはまだ婚約者でもない男女が抱き合うのはよくないことでも、3年前までは挨拶のようなものだったから構わないだろうと自分を甘やかす。
「やっと、表に出てチェルシーと一緒にいられる。」
「ええ。長かったけど、これからの人生の方がもっと長いわ。一緒にいろんなところを見に行きましょう。」
とは言ってもそれは公務でということになるだろう。正式に王族と公表しては自由は少ない。
ローランドとこっそり王都の街に行ったことはある。
だけど、基本的に彼は幽閉に近い暮らしをしていた。
ローランドが隣国の学園に行くきっかけは、チェルシーとグランツの婚約。
グランツはチェルシーが何をしなくても自滅したが、ローランドが表に出てくるにはグランツよりも優秀だと知らしめる必要があったのだ。
前国王陛下はローランドを王太子にしたかった。
いや、グランツの婚約者になるようチェルシーに頼み込んだが、結局はこうなることはわかっていた。
今となっては、国王ルドルフもわかっていて、チェルシーたちで遊んでいたのだと思う。
「10日後に、王太子の変更を正式に公表することに決まった。
その時に、チェルシー、君が僕の婚約者として発表される。結婚式が予定通りってこともね。」
「予定通りね。王妃様のことは?」
「あぁ、無期限の謹慎と発表される。グランツの管理責任を問われて。」
成人している息子の管理責任というのは、こじつけみたいなものだろう。
国中の反感を買ってしまった以上、表に出さない名目なのだから。
「グランツ殿下はどうなるの?」
「あー……ちょっとややこしいことになってて。例の男爵令嬢コレット?彼女がグランツ以外とも関係を持っていたって投げ文があったらしい。」
「投げ文?」
「なんか、こう、門の外から風に乗って飛んできた文に書いてあったらしい。」
それでは文の内容に信ぴょう性はない。
しかし、無視できる内容でもない。
王族からまだ籍を抜かれたわけでもないため、グランツ殿下本人にも一応継承権はあるのだ。
その子供の父親が誰かということは継承権にも関わってくる。
しかし、国王陛下はグランツ殿下の継承権をはく奪して追い出すだろう。
その際、子供の父親が誰であっても継承権を認めないとしてしまえば、問題はない。
ただ、グランツ殿下はどう思っているだろう。
コレットを信じることができるだろうか。
まぁ、婚約破棄するほど彼女に本気なのだから、心配ないかな。
1,726
あなたにおすすめの小説
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
〘完結〛婚約破棄?まあ!御冗談がお上手なんですね!
桜井ことり
恋愛
「何度言ったら分かるのだ!アテルイ・アークライト!貴様との婚約は、正式に、完全に、破棄されたのだ!」
「……今、婚約破棄と、確かにおっしゃいましたな?王太子殿下」
その声には、念を押すような強い響きがあった。
「そうだ!婚約破棄だ!何か文句でもあるのか、バルフォア侯爵!」
アルフォンスは、自分に反抗的な貴族の筆頭からの問いかけに、苛立ちを隠さずに答える。
しかし、侯爵が返した言葉は、アルフォンスの予想を遥かに超えるものだった。
「いいえ、文句などございません。むしろ、感謝したいくらいでございます。――では、アテルイ嬢と、この私が婚約しても良い、とのことですかな?」
「なっ……!?」
アルフォンスが言葉を失う。
それだけではなかった。バルフォア侯爵の言葉を皮切りに、堰を切ったように他の貴族たちが次々と声を上げたのだ。
「お待ちください、侯爵!アテルイ様ほどの淑女を、貴方のような年寄りに任せてはおけませんな!」
「その通り!アテルイ様の隣に立つべきは、我が騎士団の誉れ、このグレイフォード伯爵である!」
「財力で言えば、我がオズワルド子爵家が一番です!アテルイ様、どうか私に清き一票を!」
あっという間に、会場はアテルイへの公開プロポーズの場へと変貌していた。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
飽きたと捨てられましたので
編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。
計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。
横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。
※7000文字前後、全5話のショートショートです。
※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。
【完結】貴方が幼馴染と依存し合っているのでそろそろ婚約破棄をしましょう。
紺
恋愛
「すまないシャロン、エマの元に行かなくてはならない」
いつだって幼馴染を優先する婚約者。二人の関係は共依存にも近いほど泥沼化しておりそれに毎度振り回されていた公爵令嬢のシャロン。そんな二人の関係を黙ってやり過ごしていたが、ついに堪忍袋の尾が切れて婚約破棄を目論む。
伯爵家の次男坊である彼は爵位を持たない、だから何としても公爵家に婿に来ようとしていたのは分かっていたが……
「流石に付き合い切れないわね、こんな茶番劇」
愛し合う者同士、どうぞ勝手にしてください。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる