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しおりを挟む朝、学園寮を出ると護衛騎士のコルト様が既にいた。いつからいたんだろう。挨拶を交わして学園に行くと、注目を浴びた。
それはそうだ。護衛騎士付きなのでバレる。
それに、今、学園に治癒魔力を持つのはアイビーだけなのだ。新聖女が貴族で年齢が学園生であればアイビーしかいない。
まぁ、それだけでなくコルト様が美形ということと、クレオリア様のお兄様ということで更に注目を浴びているような気もした。
「アイビー、聖女様に選ばれたのね?」
友人エライザが聞いてきた。
「あーうん。でも公表はまだだから……」
詳しくは話せないと言うことを察してほしい。というか、聖女になったという事実しかまだないけど。
「わかったわ。アイビーって呼ぶことも不敬になる?」
コッソリ聞いてきたエライザに笑ってしまった。
「やめてよ!今までと変わらないわ。……学園内では単なるアイビーよ。」
そうか。私が王太子妃になるだろうと思っている人も多いはず。
どうなるかはわからないけれど、王太子妃になることだけは避けたいと思っている。
それは現時点でエライザに話すことはできないけれど。
「新聖女は我が儘を言って国王陛下を困らせたという噂もあるのだけど……」
一体、口が軽いのはどこの誰?内容までは噂されていないようだけど、早くない?ひどくない?
国王陛下の一言で、私は我が儘聖女だと言われ続けるのでしょうね。
学園内でコルト様のすることは何もないのにどうして護衛をしているのか。
それは、前からの友人と聖女目当てで近づこうとする人を見極めるためだったみたい。
現に、近づいてこようとした人はいた。聖女に、というよりも王太子妃になるであろうアイビーに擦り寄って王太子殿下に便宜を図ってもらおうとする人たちだ。
こういう人たちは、王太子殿下の婚約者であるクレオリア様にも擦り寄って玉砕したのだろうと思われた。
そしてもう一つ、コルト様は見極めるように周りを確認していた。
それは、コルト様の妹クレオリア様を過剰に擁護しようとする人たち。つまり、クレオリア様の立場を聖女になったアイビーが奪うことを許せない人たちだ。
それはわからなくはない。相思相愛の2人を聖女というだけで引き離すかもしれないのだから。
だけど、まるで私がクレオリア様に危害を加えたり罵倒したりすることから守るような素振りはどうなの?私が優越感にでも浸ってクレオリア様を傷つけると思ってる?
まったく失礼なことだわ。
そんなよくわからない視線を逃れて、サニード王太子殿下と約束をした部屋に向かった。
学園にはいくつか個室がある。男女が2人きりで使用することは当然認められておらず、事前に予約が必要となる。そのうちの一部屋は、王族が学園生である期間は王族専用となっているのだ。
つまり今はサニード王太子殿下専用らしい。王女殿下たちは入学前の歳だから。
そこに向かう近くで、サニード王太子殿下に出会った。
しかし、側近候補だと思われる令息3人も一緒だった。教会の事情を彼らにも聞いてもらう?それは一先ず遠慮したい。王太子殿下だけでも一応緊張するのに、高位貴族令息に囲まれたくはない。
「あぁ、アイビー嬢。コルトも一緒なんだね。ならコルトに一緒にいてもらうことにするよ。」
王太子殿下はアイビーと2人きりにならないために令息たちを連れていたようだった。彼らに昼食は別でと話していた時、王太子殿下を呼ぶ声がした。
「あ、サニード様ぁ。今日もご一緒していいですかぁ?」
耳障りな話し方で小走りにやってきたこの令嬢、誰?
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