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しおりを挟む聖女として治癒した場合、他国の者を治癒すると何かしらの対価はあるに違いない。
特にそれがその国の重要人物だったりすると、国交に関する場合もあるかもしれないし、物流や課税に関することもあるかもしれない。
治癒した者の領地の特産の場合もあるかもしれないし、単に一人当たりの金額が決まっているのかもしれない。
がめつく請求すると治癒を希望する者は減る。
だが、聖女がいる国として誇っている立場なので、タダなわけもない。恩を売ることもできる。
まだ聖女としての仕事をしていないため、対価がどうなっているのかはわからない。
だが、聖女として治癒することも、教会で一治癒者として治癒することも同じことのはずだ。
奴隷のようなタダ働きはあってはならない。
「治癒者たちは10歳から外界と隔離されたような暮らしになりますが、決して修道女ではありません。
清貧を美徳とする修道女たちとは別区画で暮らしていますが、修道女の方がマシな食生活であることは確かです。
私が通っている教会には3人の下級治癒者がいます。40代、30代、20代。結婚することも許されず、何の楽しみもない日々です。彼女たちは楽しむということすら忘れてしまったでしょうね。」
聖女が選ばれる治癒魔力を持つ者たちが、そんな奴隷のような暮らしをしているとは思ってもみなかったのだろう。
王太子殿下は、そんな場所で聖女となった私も暮らすべきだと言ったのだ。
「それに、一律同額というのも問題ですよ。王都は物価が高いのです。領地の教会では、王都ほどひどい食生活ではないようでしたよ。治癒のお礼に野菜をくれたりすることもありましたし。」
王都で暮らす平民は領民よりも人情味が薄いかもしれない。
治してもらって当然という態度もよくある。
治癒魔力で病気は治せないので、医師が病状を判断して薬師が薬を出す。
傷に効く薬もあるので、必ずしも治癒魔力で治す必要はない。
しかし、タダなので教会で治癒を頼んでいるだけ。
なんだか非常に報われない気持ちになるのだ。
心が豊かでなければ、心からの奉仕などできやしない。
………こんな考えのアイビーがなぜ聖女に選ばれたのかは本当に謎である。
アイビーの話を聞いて呆けていた王太子殿下がコルト様に聞いた。
「騎士の給金はどれくらいだ?」
「部署にもよりますが、新米騎士でも貴族は30万、平民は15万ほどです。」
「休みは?」
「週に1日と半日が取れます。夜勤があれば、明けの日とその次の日が休みです。」
あれ?コルト様は聖女の護衛騎士だけど交代要員は?いないと休みがないよね?
だって私の休みがないんだもの。毎日教会に通うから、コルト様だけじゃ無理だよ?
「コルト様、前聖女ラナ様の時はお休みはどうされていたのでしょうか。」
「前聖女様は事前に日程が決まっておられましたので、王宮から外出されない日に休みを取っていました。
私が休み中の護衛は、近衛騎士が担当しておりました。」
聖女を害することはできないから、王宮内の移動で護衛の必要性も特にないわね。
「私は毎日教会に通っているので、コルト様以外の護衛も必要になるかと。」
王太子殿下がため息をつきながらアイビーに言った。
「アイビー嬢、無休の実状を見直す必要がある。聖女も治癒者も奴隷ではないのだ。なんてことだ。」
それはそうだ。私だって休みがほしいし給金もほしい。
だから何とかしてほしくて王太子殿下に訴えているのだ。
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