聖女に選ばれた令嬢は我が儘だと言われて苦笑する

しゃーりん

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パキラス公爵様はアイビーが言ったことを考えているようだった。

だけど、アイビーは完璧な人間などいないと思う。
同じような資質の令嬢しか王太子妃になれないのは変だし、そもそも聖女だからという理由で王太子妃にしようという方が資質に問題があるのではないかと思う。

 
「王太子妃になるのだからとクレオリアに完璧を求めてきたが、それが誤りだったと?」

「誤りではありません。ですがまだ18歳なのですよ?助言してあげたり甘やかしてあげたりすることの何が問題なのでしょうか?自分で判断できないからと王太子妃になることを辞退させて、その後は?まさか欠陥品扱いのように後妻や修道院に行かせるとは言いませんよね?
クレオリア様は努力ができる方だと思います。過ちを指摘されればそれを糧にできる方でしょう。
クレオリア様が受け身だとおわかりなら尚更、ご両親が胸の内を聞いて差し上げてもいいのではないのでしょうか。今はまだご両親の庇護下にあるのです。いつまでも甘えてはいられないということは親元を離れたら実感します。ですが、その時は夫となる王太子殿下がおられます。お互いに支え合って夫婦になるのではないでしょうか。」


部屋の中が静まり返る。そんな変なことを言ったかしら。


「……公爵、私もある一学生に対し、対応を間違っていたことに気づかず周りに迷惑をかけていたと最近教えられた。言われなければ気づかないというのも問題なのだが、手遅れになる前に指摘され、何が悪かったのか反省できることも大切だと思う。王族の私でもそうなのだ。クレオリアとも話し合い、助け合える関係になっていきたい。」


王太子殿下の言葉に公爵様も肩の力を抜いた。


「……聖女様はクレオリアより年下だとは思えませんね。しっかりしている。」

「10歳で治癒魔力があると判明してからは、ほぼ教会で過ごしてきましたから。15歳で学園に通い始めてからは寮生活です。親元を離れて過ごす時間が長いせいかもしれませんね。」


親に放置されてきたわけではないが、やはり手元にいる他の子供の方が可愛いのは当然だ。
朝夕の食事を一緒にしても、治癒しかしていないアイビーに話せることもなく、買い物に連れて行ってもらえるわけでもない。

『行ってらっしゃい』『頑張ってね』『お帰り』『お疲れさま』『おやすみ』

学園に入る前は、そんな言葉だけになりつつあったのだから。

心の自立は早かった。……給金がないため金銭面の自立はできていないが。



国王陛下が空気を変えるように咳払いをしてから聞いてきた。


「アイビー嬢は王太子妃教育をしたくないと言っていたな。つまり、サニードの正妃になる気はない。その気持ちは変わらないか?」

「はい。ご存知かと思いますが治癒ばかりしてきましたので学園での成績も真ん中がやっとです。治癒者として、聖女として仕事をすることに問題はありませんが、王族として上に立つには教養がありません。
それに、先ほど国王陛下が平民の聖女に後ろ盾がなかったとおっしゃいましたが子爵令嬢の私も似たようなものです。公爵令嬢で王太子妃教育も終えられたクレオリア様がおられるのに、聖女というだけで私を正妃にしてしまうのは国にとっても良くないことだと思います。」
 
「では、クレオリア嬢が正妃、アイビー嬢が側妃というのはどうだろうか。」


側妃かぁ。お飾りならいいけど。


「正直に申し上げますと、側妃もお断りしたいところです。王太子殿下の寵愛がクレオリア様にあると周知の状態で側妃になることはお飾りのようなものです。私としてはお飾りでいいのですが、それを揶揄されたり哀れみの目で見られる可能性を考えると、側妃になる必要があるのか疑問に感じます。」

「……ではお飾りではなく平等とはならなくとも側妃とも閨を共にし、妃として蔑ろにしなければどうだろうか。」


いや、それを国王陛下が決めるのはどうかと思うけど?

 






 
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