聖女に選ばれた令嬢は我が儘だと言われて苦笑する

しゃーりん

文字の大きさ
26 / 29

26.

しおりを挟む
 
 
翌日の、前聖女ラナ様の国葬には国内外から多くの者が参列した。

周辺国とも友好的な付き合いをしており、どの国でも戦や大きな飢饉などは古い話で比較的平和な時代となっている。

国葬の最後、アイビーは新聖女として国内外に紹介された。
そして本人の希望により王族とは婚姻しないこと、だが歴代聖女同様、聖女の務めは果たすことを周知した。



その後、呪いの浄化にこの国までやってきた12人を治癒した。

やり方など教えてくれる人はいない。だけど、治癒する要領と変わりはなかった。

呪いの症状は見たことはあっても、当然治癒はできなかった。
聖女になったからできる。それを初めて実感した。 


そもそも、呪いがあるのは何故か。

それは、昔は治癒魔力を持つ者よりも更に少ない闇の魔力を持つ者たちがいた。
忌むべき魔力だと迫害された者たちは、仲間が集まり暮らし始めた。

彼らにできることは、物に呪いを込めること。
ある一定の条件を満たせば呪いが発動するということが多い。

呪いが発動すると、胸の一部に出来た黒いシミが徐々に大きくなり、棘のある蔦模様に全身が覆われてしまえば手遅れということらしい。
外からは見えにくい場所からシミが広がるため、呪われていることを他人に悟らせる前に浄化してもらおうと国を通して依頼が来るということだ。

もちろん、込められた魔力の多さによって死ぬまでの時間に大きく違いがあるという。
迫害しておきながら、何かと引き換えに依頼をする者も少なくなかったそうだ。
暗殺手段にも利用されていたという。

そんな呪われた物は、今でもいろんな国へと広がって多く残されているのだが、見た目だけではわからないこともあって呪われる者は後を絶たない。 

しかし、闇の魔力と判定される者は今ではいない。
それでも新たな物が発見され続けるということは、古い物だけでなく今でも闇の魔力を持つ者がいるからだと言われている。
おそらく、他の魔力と併せ持っている者がいるのではないか、と。

隠された魔力を判別できる手段は未だない。

そして、呪いを浄化できるのが聖女だけということなのだ。今はアイビーの役割。
 
昔は、聖女に国を回って呪いを受けた者たちの浄化を依頼されたこともあったという。
だがなかなか帰してもらえなかったり、他国の依頼者の浄化が間に合わなかったり、とこれまた平等に対処するのが難しいということになり、わが国を訪問した場合に限るということになった。

金のない平民は連れてきてもらえないという国もある。
しかし、聖女は一人だけ。
あらゆる国の隅々まで出向くということは不可能。

何代も前の聖女とこの国の国王が今の方針を決めた。

アイビーもそこは理解していた。

全ての人を救うことなどできない。

それは医者も同じだから。

だけど、各国に対する対価を見直すことで少しでも多くの人の呪いを浄化することが可能なのではないか。

長い長い聖女生活。試行錯誤しながら聖女の力を役立てる。

王族から逃れられたことで、アイビーは聖女として頑張ろうと思っていた。


学園に通い続け、学園寮に住み、王族になることも拒んだ我が儘な聖女。

しかし、一方では王太子殿下とクレオリア様の愛に負けた聖女だとも言われていた。

……心底、どうでもいい。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

【完結済み】天罰って人の手を介している時点で方便ですよね<前・中・後編>

BBやっこ
恋愛
聖女の娘である私は、幼い頃から王子の婚約者になっていて“仲良くしろ”と圧を受けていた。 それは学生になってからも似たようなもので。 聖女になりたいと言っていないのに。大人の事情と私の安全のために公言しなかった。 そして、時は来た。神裁判の宣言と私への天罰を望む声。 ※ 【完結済み】 真実、私の話を聞いてもらいましょう。 方便なんて使えませんわよ?神様がきいてくださっているのだから。

聖女にはなれませんよ? だってその女は性女ですから

真理亜
恋愛
聖女アリアは婚約者である第2王子のラルフから偽聖女と罵倒され、婚約破棄を宣告される。代わりに聖女見習いであるイザベラと婚約し、彼女を聖女にすると宣言するが、イザベラには秘密があった。それは...

平民を好きになった婚約者は、私を捨てて破滅するようです

天宮有
恋愛
「聖女ローナを婚約者にするから、セリスとの婚約を破棄する」  婚約者だった公爵令息のジェイクに、子爵令嬢の私セリスは婚約破棄を言い渡されてしまう。  ローナを平民だと見下し傷つけたと嘘の報告をされて、周囲からも避けられるようになっていた。  そんな中、家族と侯爵令息のアインだけは力になってくれて、私はローナより聖女の力が強かった。  聖女ローナの評判は悪く、徐々に私の方が聖女に相応しいと言われるようになって――ジェイクは破滅することとなっていた。

婚約破棄したくせに、聖女の能力だけは貸して欲しいとか……馬鹿ですか?

マルローネ
恋愛
ハーグリーブス伯爵家には代々、不思議な能力があった。 聖女の祈りで業務の作業効率を上げられるというものだ。 範囲は広いとは言えないが、確実に役に立つ能力であった。 しかし、長女のエメリ・ハーグリーブスは婚約者のルドルフ・コーブル公爵令息に婚約破棄をされてしまう。そして、進めていた事業の作業効率は計画通りには行かなくなり……。 「婚約破棄にはなったが、お前の聖女としての能力は引き続き、我が領地経営に活かしたいのだ。協力してくれ」 「ごめんなさい……意味が分かりません」 エメリは全力で断るのだった……。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

過去の青き聖女、未来の白き令嬢

手嶋ゆき
恋愛
私は聖女で、その結婚相手は王子様だと前から決まっていた。聖女を国につなぎ止めるだけの結婚。そして、聖女の力はいずれ王国にとって不要になる。 一方、外見も内面も私が勝てないような公爵家の「白き令嬢」が王子に近づいていた。

処理中です...