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しおりを挟む翌日の、前聖女ラナ様の国葬には国内外から多くの者が参列した。
周辺国とも友好的な付き合いをしており、どの国でも戦や大きな飢饉などは古い話で比較的平和な時代となっている。
国葬の最後、アイビーは新聖女として国内外に紹介された。
そして本人の希望により王族とは婚姻しないこと、だが歴代聖女同様、聖女の務めは果たすことを周知した。
その後、呪いの浄化にこの国までやってきた12人を治癒した。
やり方など教えてくれる人はいない。だけど、治癒する要領と変わりはなかった。
呪いの症状は見たことはあっても、当然治癒はできなかった。
聖女になったからできる。それを初めて実感した。
そもそも、呪いがあるのは何故か。
それは、昔は治癒魔力を持つ者よりも更に少ない闇の魔力を持つ者たちがいた。
忌むべき魔力だと迫害された者たちは、仲間が集まり暮らし始めた。
彼らにできることは、物に呪いを込めること。
ある一定の条件を満たせば呪いが発動するということが多い。
呪いが発動すると、胸の一部に出来た黒いシミが徐々に大きくなり、棘のある蔦模様に全身が覆われてしまえば手遅れということらしい。
外からは見えにくい場所からシミが広がるため、呪われていることを他人に悟らせる前に浄化してもらおうと国を通して依頼が来るということだ。
もちろん、込められた魔力の多さによって死ぬまでの時間に大きく違いがあるという。
迫害しておきながら、何かと引き換えに依頼をする者も少なくなかったそうだ。
暗殺手段にも利用されていたという。
そんな呪われた物は、今でもいろんな国へと広がって多く残されているのだが、見た目だけではわからないこともあって呪われる者は後を絶たない。
しかし、闇の魔力と判定される者は今ではいない。
それでも新たな物が発見され続けるということは、古い物だけでなく今でも闇の魔力を持つ者がいるからだと言われている。
おそらく、他の魔力と併せ持っている者がいるのではないか、と。
隠された魔力を判別できる手段は未だない。
そして、呪いを浄化できるのが聖女だけということなのだ。今はアイビーの役割。
昔は、聖女に国を回って呪いを受けた者たちの浄化を依頼されたこともあったという。
だがなかなか帰してもらえなかったり、他国の依頼者の浄化が間に合わなかったり、とこれまた平等に対処するのが難しいということになり、わが国を訪問した場合に限るということになった。
金のない平民は連れてきてもらえないという国もある。
しかし、聖女は一人だけ。
あらゆる国の隅々まで出向くということは不可能。
何代も前の聖女とこの国の国王が今の方針を決めた。
アイビーもそこは理解していた。
全ての人を救うことなどできない。
それは医者も同じだから。
だけど、各国に対する対価を見直すことで少しでも多くの人の呪いを浄化することが可能なのではないか。
長い長い聖女生活。試行錯誤しながら聖女の力を役立てる。
王族から逃れられたことで、アイビーは聖女として頑張ろうと思っていた。
学園に通い続け、学園寮に住み、王族になることも拒んだ我が儘な聖女。
しかし、一方では王太子殿下とクレオリア様の愛に負けた聖女だとも言われていた。
……心底、どうでもいい。
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