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しおりを挟むアルーサル王国では、本日クリストファー王太子と隣国のリアナ王女の結婚式が行われていた。
この日を迎えるまで、この国は大変混乱した状況にあり、ようやく本来の穏やかな気質である王国に戻りつつあった。
この混乱が生じたのは今から10年近く前のことで、2人がが婚約する少し前のことであった。
10年前のある日、国王は女神様から神託を受けた。…頭の中で…
この神託は簡単に言うと、『どこどこの誰々に祝福を授けましたよ~』とその時の国王に伝えられるのである。
神託は滅多にないため、今のがそうなのか?!と伝え聞いていただけの国王は半信半疑であった。
授かるのは貴族の時もあれば、平民の時もある。祝福は女神様の気まぐれとも言われている。
ちなみに前回の神託は国王の祖父で、父は神託を受けていないことになる。
少し前に国王の座を譲り受けたばかりであった…父、残念…
今回、祝福が与えられたのは、何と国王の次女、6歳のクレア王女であった。
国王は慌ててクレアの部屋を訪れた。
クレアは起きたばかりで着替えが済んだところであり、侍女を下がらせて二人きりになったところで聞いた。
「クレア、女神様から祝福を受け取ったか?」
「お父様、何か魔力のようなものを受け取ったようなのです。
でも、どうしたらいいのかよくわからないの。」
「魔力か…。何なのかはわからないのか?」
「よく思い出せないの。国のために役立てなさいって言われたのはわかったわ。」
「国のために…か。まぁ、今までの祝福もそんな感じだったな。魔術師たちにも相談してみよう。
何の祝福か判明するまで、侍女やメイドにも秘密にできるか?
万が一、どこかから話が洩れて聞かれても答えようがないけど、自分も周りも気にするだろ?」
「わかりました。お母様やお兄様とお姉様には?」
「あとでこっそり伝えることにしよう。とりあえず、朝食に行こうか。」
「はい!」
朝食後、午前中の予定を少し変更し、国王は執務室に一人で籠った。
代々の国王・王太子に伝わる書物を読むためである。
女神様の祝福を受けたとされる人物は10数人報告がある。
その中で一番有名なのが、200年前の<魔の森>の結界にまつわる話である。
この国と隣国との間にある広大な森には昔から魔物が住んでいた。
街に下りてくる魔物は討伐対象であったが、森の中は冒険者が素材欲しさに行くくらいでそこまで危険ではなかった。
しかしある時、森の中で異常が起こり、どんどん魔物が生み出されるようになって両国共多大な被害が起きるようになった。
そんな時、鍛冶師に女神様の祝福があった。
祝福を授かった男は一心不乱に輝くような剣をつくりあげた。とてもとても大きな剣だった。
「この剣を森の魔物が湧いて出るところに突き刺すと魔物は新たに出てこれなくなる。
そしてこの剣が媒介となって広範囲に結界を作り出せるので、優秀な光の魔術師さんに頼むといい。
俺は女神様から授かった魔力でこれをつくるようにお願いされただけさ。」
簡単なようで非常に大変な任務である。
魔物が生み出されるその場所に行くということは、討伐しながら進まなければならない。
しかし、騎士も魔術師も頑張った。満身創痍で頑張った。
最後は騎士団長が大きな剣を真上から突き刺すと剣が眩しく光っていた。
その光を媒介に魔術師たちは結界を森全体に広げた。
森は討伐した魔物により地面が汚染されていた。
しかしそれも、結界の中で徐々に浄化されていくであろう。
残っている魔物は結界の外には出られない。
出られはしないが前の状態に戻っただけで、生き残った魔物が異常繁殖することもないだろう。
討伐隊はやりきった満足感で森から出てきた。
そして改めて森を見やり……絶句した。
『この結界、500年は持つんじゃない?』
……女神様の祝福は桁違いであった。
その時から200年。結界はまだまだ問題ない。
魔術師の結界が女神様の祝福のように思われているが、実際は女神様から授かった魔力で鍛冶師がつくった剣の方が祝福された物と言える。
事実を知っている者はもうほとんどいないだろう。
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