9 / 46
9.
しおりを挟むディーゼルは、ベルに手紙を書いた。
『もう一度話し合いたいので、そちらに向かう』と。
だが、ベルからは『家に来られるのは困る』との返事があった。
日時と場所を指定してくれれば向かうとのことだったので、人目につきにくい場所を選んだ。
「この前はすまなかった。いきなりで驚いて、失礼な態度だったと思う。」
「いえ、こちらも門前払いも覚悟の上で押しかけましたので。それでもよかったのですが。」
どういう意味だ?
カイルのことを言いに来たのに門前払いされたという言い訳を作ろうと思っていたのか?
まさか、運任せで来たというのか。
「ところで、今日、カイルは?」
「侍女が見ています。あの日は名前も聞いてくれなかったのに調べたのですね。手紙も家に届けられたことですし。私のことも全部?」
やっぱりベルは怒っている気がする。
あの日はカイルに話しかけるどころか、何も聞きさえしなかったのだから。
「大体のことは知ったと思う。君のつらかった境遇をわかった気になるつもりはないが。
カイルのことを何も聞かなかったことは悪かった。受け止め切れていなかったというか、あまりにも似ていて直視できなかったというか。
先に君の意図を知るべきだと思ったんだ。」
「あの時お話した通り、カイルを手元で育てられないのであればカイルのことは忘れてください。」
ベルはやはり逃げ腰だ。
カイルの存在を知らせたことを後悔しているようだ。
「いや、知ってしまった以上、我が子だと認めるつもりだ。」
「他の男性の子だとは疑っていないのですか?ヘミング侯爵家の血筋ではないかもしれないのに。」
「私と関係を持ったすぐ後に他の男にも抱かれたと言いたいのか?君はそんなことをする女じゃないだろう?」
会ったばかりのディーゼルを誘ったベルだが、彼女は確かに純潔だった。
あの時のベルは、ディーゼルが相手なら後に揉めることはないと見極めてから誘ったはずだ。
出会った男を片っ端から誘うような女ではない。
「君もカイルの顔が私に似ているからこそ、信じてもらえるんじゃないかと思って話に来たのだろう?」
「そうですけど、すぐには認められないだろうとも思っていました。」
認められたいけれど、離れ離れになるなら認められなくていい。そんなことを考えてやって来たから、あんなにサッサと帰ったのに、認めると言われて複雑なのだろう。
「ただ、ベルの元で育てるならうちから教育係を派遣する必要がある。私がカイルに会いに行くこともあるだろう。」
「それは困ります!愛人だと思われますから。」
思いっ切り嫌がられた。
「まさか、恋人がいるのか?」
「いません。でも、奥様に目をつけられるのは困ります。カイルに会いたい時は今日みたいに場所を指定してもらえば連れて行きますので。」
そうきたか。
愛人になることも拒み、家に来ることも拒む。
どうしてか、思ったよりもショックだった。
ベルが愛人になると言ってくれると期待していたのだろう。
1,320
あなたにおすすめの小説
元婚約者が愛おしい
碧井 汐桜香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる