王命結婚しても、役目を果たせば愛する人の元に戻ります

しゃーりん

文字の大きさ
8 / 15

8.

 
 
猿の叫び声みたいでうるさいと言われてムッとしたが、確かにいきなりやってきて叫んだのはマーシャリーなので、少し声を落とすことにした。


「離婚するのに、私が人前に出る必要ってあります?」

「離婚前提だと他の誰も知らないんだぞ?お前、テープラー男爵家の男と再婚するんだったらちゃんと公爵夫人の役目を果たしておかないと、その時に困るぞ。」


困る、かしら?


「公爵夫人として社交しないまま離婚したら、お前は努力すらしなかった落ちこぼれの女と思われるだろう。
公爵家を追い出され、見放された女と思われて、そんな奴と付き合いたい貴族がいるか?」 
 

それは、嫌だわ。


「テープラー男爵家だけじゃなく、お前の実家のサットン男爵家も白い目で見られるだろうな。商売もうまくいかなくなるだろう。お前はそれでいいのか?」


マーシャリーは首を横に振った。

そこまで考えていなかったわ。 


「お前は男爵令嬢だった。王命での結婚だから少しの間は広い目で見てもらえるだろう。だが、高位貴族は努力しない者に冷たい。
何もしないまま、この屋敷内から出ず、子供ができるのだけを待つ暮らしをするつもりでいたのか?」


ほんとだわ。
何も考えていなかった。


「何も公爵家の女主人として努力しろと言っているんじゃない。貴族夫人として相応しい礼儀作法や知識を身につけろと言っているだけだ。いずれ男爵夫人になった時に無駄になるものじゃないだろう?」


その通りだわ。

嫌がらせだと思ったけれど、これは自分のためになることだから。


「……わかりました。ちゃんと学びます。離婚までに完璧な淑女になってみせるわ!!」 


マーシャリーはやるからにはとことんやってやろうと気合をいれて執務室を出た。


その後、先ほどと同じく、執務室の中でカイドが爆笑し、フィリップが頭を痛めていたことをマーシャリーは知らない。


 


部屋に戻ったマーシャリーは、教師が来るのは明日からだと聞き、それならば予習をしておきたいと教本を持ってきてもらい、それを読み始めた。

真面目に勉強するのは随分と久しぶりのことで、これが正しいのか、フィリップに乗せられただけではないかと思いながらも、頑張ると決めたからには逃げるつもりはなかった。

お茶の時間は伯爵令嬢だったというテッサから簡単に学び、夕食も部屋で取り、所作を見てもらった。

そしてベッドに入り、 


「すごいっ!寝心地最高だわ。すぐに眠れそう……」 


久しぶりに頭と体を使ったことで、マーシャリーは疲れを感じていたが、それも心地よかった。

そして眠りに落ちる直前、何か忘れている気がしながらも意識は遠のいた。  


 

あなたにおすすめの小説

“いらない婚約者”なので、消えました。もう遅いです。

あめとおと
恋愛
婚約者である王子から、静かに告げられた言葉。 ――「君は、もう必要ない」 感情をぶつけることもなく、彼女はただ頷いた。 すべては、予定通りだったから。 彼女が選んだのは、“自分の記憶を世界から消す魔法”。 代償は、自身という存在そのもの。 名前も、記憶も、誰の心にも残らない。 まるで最初からいなかったかのように。 そして彼女は、消えた。 残された人々は、何かが欠けていることに気づく。 埋まらない違和感、回らない日常。 それでも――誰一人、思い出せない。 遅すぎた後悔と、届かない想い。 すべてを失って、ようやく知る。 “いらない存在”など、どこにもいなかったのだと。 これは、ひとりの少女が消えたあとに、 世界がその価値に気づく物語。 そして――彼女だけが、静かに救われる物語。

「許してやりなさい」と言われ続けた令嬢が、許した回数を数えていた——千二百回

歩人
ファンタジー
「許してやりなさい」 侯爵令嬢リーリエは、この言葉を千二百回聞いた。 婚約者が夜会で他の令嬢と踊ったとき。義母に「出来損ない」と言われたとき。父が「お前さえ我慢すれば丸く収まる」と目を逸らしたとき。 リーリエは毎晩、帳面に書いた。日付。許した内容。許した理由——その欄はいつも空白だった。 千二百回目の「許してやりなさい」を聞いた日、リーリエは帳面を閉じた。 「お父様。千二百回、許しました。千二百一回目は、ございません」 帳面が社交界に渡ったとき、「許してやりなさい」と言っていた全員の顔から血の気が引いた。我慢の記録は、どの告発よりも雄弁だった。

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

ほんの少しの仕返し

turarin
恋愛
公爵夫人のアリーは気づいてしまった。夫のイディオンが、離婚して戻ってきた従姉妹フリンと恋をしていることを。 アリーの実家クレバー侯爵家は、王国一の商会を経営している。その財力を頼られての政略結婚であった。 アリーは皇太子マークと幼なじみであり、マークには皇太子妃にと求められていたが、クレバー侯爵家の影響力が大きくなることを恐れた国王が認めなかった。 皇太子妃教育まで終えている、優秀なアリーは、陰に日向にイディオンを支えてきたが、真実を知って、怒りに震えた。侯爵家からの離縁は難しい。 ならば、周りから、離縁を勧めてもらいましょう。日々、ちょっとずつ、仕返ししていけばいいのです。 もうすぐです。 さようなら、イディオン たくさんのお気に入りや♥ありがとうございます。感激しています。

王家の賠償金請求

章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。 解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。 そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。 しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。 身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。 『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」