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医療行為による妊娠を試みて四か月、マーシャリーはとうとう妊娠した。
「ジャニス先生、本当に?」
「間違いないでしょう。おめでとうございます。」
マーシャリーは喜んだ。
確かに嬉しかった。
これでデイヴィスの元に戻れる日が近づいたから。
しかし、それと同時にようやく気づいた。
フィリップと離婚してデイヴィスの元に戻るということは、このお腹にいる子供と別れるということを。
しかも、この子だけでなく、いずれ産むことになるもう一人とも。
親権はフィリップだと結婚を受け入れた時に決まったから。
あの時は離婚してデイヴィスの元に戻れるのならと気にしなかった。
マーシャリーは自分がしようとしていることが急に怖くなった。
三人姉弟の真ん中で育ったマーシャリーは、両親から一番関心を持たれずに育った。
寂しかった。
それなのに、自分は我が子を母のいない子にしようとしている。
関心を持たれないどころではなく、母が側にいない子に。
「どうしよう。」
マーシャリーが子供を引き取って、デイヴィスと共に育てると言っても受け入れられるわけがない。
フィリップにも、デイヴィスにも。
フィリップは跡継ぎが必要だし、デイヴィスにとっては我が子ではない。
「どうしたらいいの?」
マーシャリーが頭を悩ませていると、フィリップがやってきた。
「子供ができたらしいな。……喜んでいるかと思えば、何だ?その顔は。」
悩んでいることが思いっきり顔に出ていたらしい。
「私と離婚したら、フィリップ様は再婚しますよね?」
「いいや?」
「え!?しないんですか?」
「面倒だからな。惚れ込むような女ができれば別だが。」
フィリップが惚れ込むような女性がいたら見てみたい気もするけれど、今はその話じゃない。
「じゃあ、子供たちには母親がいないじゃないですか。」
「いなくても問題ないだろう?」
問題ないの?
「ある程度成長するまでは乳母や侍女が面倒を見るし、成長してからも食事時に顔を合わせるだけだ。その食事も夜会があれば夜も朝も姿を見せない。お前がどうだったかは知らないが、高位貴族の家庭なんてそんなもんだぞ?」
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母は跡継ぎの弟の相手をよくしていて……
両親に構われなくても何の問題もなくマーシャリーは育った。
フィリップも似たようなものだったのかもしれない。
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「そういえば、前公爵夫妻は?」
フィリップの両親は領地にいるのだろうか。
今まで気にしたことがなかった。
「両親は領地にいる。前の妻が父と不貞をして母が狂った。父には母の世話をさせている。」
フィリップはしれっととんでもないことを言った。
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