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ルチルの妊娠は、もちろん誰もが喜んだ。
回数は少なくても、妊娠しやすい日に子種を受けているのだから子供ができてもおかしくはない。
ルチルももちろん嬉しい。だけど、少しだけ不完全燃焼気味だった。
『あんな営みでも子供はできるのね』
そんな気持ちがあった。
愛の結晶、と言い難い思いがあり、複雑な心境だった。
普段のタイラーには何の不満もない。
真面目だし、酒癖が悪いわけでもないし、使用人にも横柄な態度はとらないし。
もちろん、そんなタイラーのことは好き。
夫婦の営みが全てではない。
だけど、お互いに努力が必要というか、話し合いが必要だと思っていたところでの妊娠だったので、肩すかしの気分というか………あるいは、閨を共にすることを回避できたと喜ぶべきか。
そう。まだ6回だけなのに、タイラーに抱かれることが少し苦痛でもあったから。
問題を先送りする感じになってしまったけれど、ひとまずは無事にこの子を産むことを考えていこうと決めた。
そして、産まれたのは男の子。ジェイドと名付けた。
出産してひと月が過ぎた頃、医師に体の状態は問題ないと言われた。
つまり、閨事を再開してもよいということ。
私はそのことを侍女からタイラーに告げてもらった。
まだ自分から言い出す勇気がなかったから。
だけど、妊娠に気づく前に思っていたことと合わせて自分から言えばよかったと思ったのはその半年後。
つまり、この半年の間、タイラーからの誘いは全くなかったのだ。
その時、私は気づいた。
タイラーは本当に子どもを作る時にしか私を抱かないのだろうということに。
この半年、まだ月のものが来ていなかった。
だから、タイラーは誘わなかった。
というか、侍女が妊娠しやすい日だからと言わなければ、タイラーは夫婦の寝室に来ないのかもしれないと気づいた。
そして、私は決めた。
月のものが来て、妊娠しやすい日に自分から誘ってやろう、と。
そしてその日がやってきた。
「タイラー様、今日の夜、夫婦の寝室に来てくださいね。」
「……え?寝室に?でも、まだ……」
「来てください。ね。」
「……う、うん。わかった。」
寝室で待っていると、タイラーがやってきた。
私の煽情的な夜着を見て、言った。
「君はまだ出産したばかりだからダメだろう?」
「どうして?医師の許可はあると聞いていませんか?」
「だけど……」
「大丈夫ですから。」
私はタイラーの体を掴んでベッドに倒れこんだ。
タイラーはしぶしぶ、本当に、しぶしぶといった感じで顔を寄せてキスをした。
いつもの、あの触れるだけのキス。
妊娠中、一度もしなかったキス。
タイラーは、私の体を愛撫し始めたけれど、前よりも更にぎこちなかった。
なぜかと思えば、片手は自分のモノを扱いていたのだ。
ショックだった。興奮しないほど私に魅力がなくなったのかと思って。
だけど、ここで挫けてはいけないと思い、タイラーのモノに自分から手を伸ばした。
「ダメだ!そんなことはさせられない。」
そう言われて手を引いた。
その後、なんとか固くなったモノを中に入れたけど、奥まで入れることなくすぐに出てしまったようだった。
背を向けて脱いだものを再び着ているタイラーの後ろ姿を見て、私はガウンを羽織って部屋から出た。
もう、どうしたらいいのかわからなくなった。
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