11 / 15
11.
しおりを挟む社交デビューとなる日、クレージュは父にエスコートしてもらった。
もちろん、ファーストダンスも父と踊る。
国によっては、エスコートもファーストダンスも婚約者が行うところもあるけれど、この国では家族が蔑ろにしていない証明みたいなものになる。
それと、婚約者と別れた場合にデビューが悲しい思い出とならないためと言われている。
2曲目に婚約者のワンダー様と踊った。
安定感があり、とても踊りやすくて楽しかった。
飲み物を飲もうとワンダー様と移動しようとした時、やはり嬉しくない問題が起きた。
私に声をかけた問題を起こしそうな人物は、想像通りロメオ様………ではなくリリスだった。
「クレージュ、どういうこと?同じ飾りをつけた人と踊るなんて、その人が婚約者?
まさか、ロメオ様と同時進行に付き合ってロメオ様を婚約解消して捨てたってこと?」
耳の痛くなるような声で騒ぐリリスに頭が痛くなりそう。
こんな人の多い場所で勝手な妄想を口にしないでほしい。
「リリス、あなた勘違いしているわ。この方は私の正式な婚約者で間違いないわ。
だけど、ロメオ様と婚約していた事実なんてないわ。」
「嘘よ!だって、あの時婚約したって言ってたじゃない!」
「婚約しただなんて誰も言っていないわ。あなたの思い込みよ。
確かに、あの前日に顔合わせはしたわ。でもそれだけよ。
顔合わせが婚約したことになったら、婚約解消経験のある人ばかりになるわよ?」
周りで聞いている人たちも、『そうよね』とリリスを失笑している。
顔を真っ赤にしたリリスがそれでもまだ声をあげる。
「だけど、ロメオ様は婚約したと思っていたわ。
だから何とかして私と上手くいく方法を考えるって。だから諦めずに一緒に過ごしたの。
ロメオ様がせっかく思いついた方法をクレージュがダメにしたのよ!」
「……本人もサインしていないのだから婚約していないことはわかってるはずよ?
それに彼のお父様にも私と婚約していないことを念を押して言ってもらったわ。
1度目は効果なかったみたいだけど、2度目、最近は婚約していないと理解してくれたと思うけど?」
「確かに、婚約は勘違いだったって言ってたけど。
だけど、そのせいで私たちの計画が狂ってしまったんだから、クレージュが悪いのよ!」
「……どんな計画だったの?」
聞きたくないけど、聞いてみたい。おそらく周りもそう思ってる。
「クレージュとロメオ様が結婚するとロメオ様が伯爵になれるでしょ?
だから、結婚してからすぐにクレージュと離婚するの。
それから私と再婚すれば、ロメオ様は伯爵、私は伯爵夫人になれるはずだったの。」
私は唖然とした。もちろん、周りの人も。
ひと昔前にあった乗っ取りの手順だ。
「リリス、たとえロメオ様が私と結婚しても伯爵にはなれないわ。
父が爵位を譲るのは10何年も先の話だし、それに父の跡を継ぐのは私。夫になる人ではないの。
離婚すれば、出ていくのはロメオ様になるし、私に子供が出来なければ親戚が継ぐわ。
うちの血筋でないロメオ様が継ぐことはないの。」
「え……え?どうして?女性は爵位を継げないのよね?私が呼んだ小説ではそうよ?
だから、私たちに子供ができたら庶子にしないために私と再婚するってことだったのに。」
小説……って。この国の法律を読みなさいよ。
ひと昔前、娘婿に爵位を譲ると娘が離婚されるという乗っ取り事案が数件起こった。
そのため、婿に爵位が渡らないように女性でも爵位が継げるように法律が変わったのだ。
娘婿が妻に代わって仕事をするのは問題ないが、あくまでも爵位は妻にあるのだ。
離婚すれば他人。爵位の継承は血筋重視となった。
リリスがここまでおバカだったとは。
そう言えば、一緒にいなくなってから入学後の最初の試験で、下から3番目だったものね。驚いたわ。
学力だけが賢さの基準ではないけれど、うん。おバカだわ。
246
あなたにおすすめの小説
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
私はあなたの前から消えますので、お似合いのお二人で幸せにどうぞ。
ゆのま𖠚˖°
恋愛
私には10歳の頃から婚約者がいる。お互いの両親が仲が良く、婚約させられた。
いつも一緒に遊んでいたからこそわかる。私はカルロには相応しくない相手だ。いつも勉強ばかりしている彼は色んなことを知っていて、知ろうとする努力が凄まじい。そんな彼とよく一緒に図書館で楽しそうに会話をしている女の人がいる。その人といる時の笑顔は私に向けられたことはない。
そんな時、カルロと仲良くしている女の人の婚約者とばったり会ってしまった…
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
私は恋をしている。
はるきりょう
恋愛
私は、旦那様に恋をしている。
あれから5年が経過して、彼が20歳を超したとき、私たちは結婚した。公爵家の令嬢である私は、15歳の時に婚約者を決めるにあたり父にお願いしたのだ。彼と婚約し、いずれは結婚したいと。私に甘い父はその話を彼の家に持って行ってくれた。そして彼は了承した。
私の家が公爵家で、彼の家が男爵家だからだ。
好きじゃない人と結婚した「愛がなくても幸せになれると知った」プロポーズは「君は家にいるだけで何もしなくてもいい」
佐藤 美奈
恋愛
好きじゃない人と結婚した。子爵令嬢アイラは公爵家の令息ロバートと結婚した。そんなに好きじゃないけど両親に言われて会って見合いして結婚した。
「結婚してほしい。君は家にいるだけで何もしなくてもいいから」と言われてアイラは結婚を決めた。義母と義父も優しく満たされていた。アイラの生活の日常。
公爵家に嫁いだアイラに、親友の男爵令嬢クレアは羨ましがった。
そんな平穏な日常が、一変するような出来事が起こった。ロバートの幼馴染のレイラという伯爵令嬢が、家族を連れて公爵家に怒鳴り込んできたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる