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しおりを挟むイゾベラがパトリシアの異母妹ではないと知ったのに、リチャードはイゾベラを庇うような発言をする。
庇ったところで彼女がハルモニア伯爵令嬢になれるわけがないのに。
「だが、ほら。君のためにクッキーを焼くような優しい子だろう?ベラは。美味かったぞ。」
「あのクッキーはイゾベラが焼いたものではありませんよ。どこかで買ってきたものでしょう。彼女は厨房に立ち入り禁止なので屋敷で焼いたはずがありません。」
「買ってきた?厨房に立ち入り禁止?」
「ええ。料理長が両親や私のために作った食事を勝手に食べてしまったり、調味料をどっさり入れて味をおかしくしたりして何度も怒られて立ち入り禁止になりました。」
周りのみんながイゾベラを見て顔をしかめた。
イゾベラは視線を感じて、恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯いたままだった。
「あぁ、クッキーも嫌がらせです。あれはナッツ入りでしたよね。私はナッツアレルギーですから。」
「ナッツアレルギー?」
「ええ。ひどくはないですが、口にすると蕁麻疹が出たりします。アレルギーとわかってからも何度か口にしてしまい、イゾベラはその度に蕁麻疹が出た私の顔や体を見て笑っていました。」
おそらくイゾベラのいたずらだった。
二度とできないように、ハルモニア伯爵家からナッツ類は全て消えることになった。
父は酒のつまみの種類を減らすことになった。
してはいけないいたずらの類であり、場合によっては殺人未遂罪に問われる。
「だが、それでもベラを伯爵家に置いているのは、今後もそばに置くつもりだからだろう?」
リチャードの言葉に、パトリシアは失笑した。
「まさか。そんなつもりはありません。イゾベラの養育は最長18歳まで。その後はハルモニア伯爵家から出て行ってもらうことは決定事項です。」
「ベラはずっと居たいと……あそこが自分の家だと……」
リチャードがイゾベラを擁護する度に、周りにいる者が彼に呆れ始める。
伯爵家の者ではないのに、自分の家だなんて不敬すぎる。
パトリシアの言い方は、使用人としても雇う気はないと言っていることにリチャードは気づいていないのだ。
「継母は15歳で彼女を追い出す気でした。イゾベラがあまりにも伯爵家に迷惑をかけ過ぎているから申し訳ない、と。ですが私が止めました。」
「……君にも優しいところがあったんだな。」
失礼な。
婚約者だというのにパトリシアのことを何も知ろうとせず、イゾベラとばかり一緒にいたのは誰?
しかし、これは優しさから引き止めたわけではない。
「15歳で働きに出すと身元保証人が必要だからです。イゾベラが何か仕出かす度に継母が謝罪しなければならなくなります。17歳を過ぎれば保証人は必要なくなりますので。」
イゾベラが最初にどこかに雇われる時、継母が身元保証人になってしまえば、それがずっと記録に残る。
17歳以降に何か問題を起こしても問い合わせが来て、代わりに金銭を求められたりすることもある。
そのため、パトリシアは継母リーシェの名前をイゾベラが利用しないように、17歳以降に伯爵家から出したかったのだ。
来月18歳になるイゾベラはもういつ出て行ってくれても構わない状態だった。
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