冷徹な姉と健気な妹……?

しゃーりん

文字の大きさ
11 / 20

11.

しおりを挟む
 
 
パトリシアが、イゾベラにハルモニア伯爵家から出て行ってもらうことは決定事項なのだとリチャードに話していると、うつむいていたイゾベラが顔を上げた。 


「ね、ねぇ、パトリシア。私、本当にあそこから追い出されちゃうの?」
 

イゾベラがそう言うと、二人の立場の違いを正しく認識した周りはイゾベラの言葉に驚いた。


「平民なのに伯爵令嬢を呼び捨てって、正気かよ。」

「言葉遣いも失礼よね。」

「図に乗ってるんだよ。何をしても追い出されなかったから、これからも許されると思って。」

「ナッツ入りのクッキーのことなんて許せないわ。いらないって言われたら『健気な妹』を演じてパトリシア様を悪者にして、クッキーを食べていたら蕁麻疹が出ている姿をみんなに見せることで辱めようとしたってことよね。悪質すぎるわ。」


イゾベラの非常識ぶりは晒された。

『健気な妹』は幻想で、もう誰の目にも『無礼で愚かな平民』でしかない。


「あなたにはリチャード様っていう婚約者ができたわ。今後はリチャード様を頼りなさいね。」


パトリシアは清々しい思いでそう言った。

もう、ハルモニア伯爵家にイゾベラの帰る場所はないと示したのだ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。僕を頼られても困る。婚約解消の話はなかったことにしてくれ。」

「御冗談を。リチャード様の申し出を私はお受けいたしました。あとは手続きを済ませるだけです。」

「いや、ベラが平民だなんて思わなかったんだ。ハルモニア伯爵家に僕が必要だろう?」

「いえ、全く。イゾベラは生まれた時から平民で名字もレイン。勝手に勘違いして婚約解消を告げておいて、それをなかったことになどと、侯爵令息ともあろう者が卑怯ですわ。」


婚約解消を取り消すことなど、許さない。


「その通りね。私が婚約解消の証人になりましょう。」


そう言ったのは、パトリシアと同じクラスのカトリーナ第二王女殿下だった。


「カトリーナ様、ありがとうございます。」

「当然よ。ダリス侯爵家のリチャードがハルモニア伯爵家の跡継ぎであるパトリシアに婚約解消を言い渡し、平民のイゾベラと結婚すると言ったこと、しかと聞き届けました。
パトリシア、これは彼が別の女性に心を寄せたことが理由だから、婚約破棄にもできるわ。」

「あら。そうですわね。帰って父と検討しますわ。ありがとうございます。」


もう話は済んだと思い、パトリシアはクラスメイトたちとその場を去ろうとしたが、リチャードが慌てて引き留めた。
 

「待ってくれ。ハルモニア伯爵家には僕が必要なんだろう?」


さっきも彼は同じことを言っていた。何故?


「僕の、顔を利用したいのだろう?だから伯爵は婚約解消を認めないと思うぞ!」


そういう意味か。と思うと同時に吹き出すように笑ってしまった。


「リチャード様が侯爵様から婚約を結ぶことになった経緯をどう聞いているかはわかりませんが、我が伯爵家はあなたの顔を利用したいと考えたことなどありません。
侯爵様が息子のあなたを褒めるところが顔しかなかったので、飾り物のように隣に置いていればいいと意味でおっしゃっただけで、むしろ役に立たない飾り物を押し付けられようとしていたようなものです。」

「……え?どういう意味?」


リチャードの頭では理解できなかったようだ。


「要するに、父も私も、あなたを必要としていません。」
 
 
リチャードの勘違いは正せただろうか。
彼は何故か、自分の顔が婚約の理由だと思っており、自分が選ぶ相手がハルモニア伯爵になれると思っていた。

そのどちらもが、勘違いである。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

妹さんが婚約者の私より大切なのですね

はまみ
恋愛
私の婚約者、オリオン子爵令息様は、 妹のフローラ様をとても大切にされているの。 家族と仲の良いオリオン様は、きっととてもお優しいのだわ。 でも彼は、妹君のことばかり… この頃、ずっとお会いできていないの。 ☆お気に入りやエール、♥など、ありがとうございます!励みになります!

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

自分こそは妹だと言い張る、私の姉

ゆきな
恋愛
地味で大人しいカトリーヌと、可愛らしく社交的なレイラは、見た目も性格も対照的な姉妹。 本当はレイラの方が姉なのだが、『妹の方が甘えられるから』という、どうでも良い理由で、幼い頃からレイラが妹を自称していたのである。 誰も否定しないせいで、いつしか、友人知人はもちろん、両親やカトリーヌ自身でさえも、レイラが妹だと思い込むようになっていた。 そんなある日のこと、『妹の方を花嫁として迎えたい』と、スチュアートから申し出を受ける。 しかしこの男、無愛想な乱暴者と評判が悪い。 レイラはもちろん 「こんな人のところにお嫁に行くのなんて、ごめんだわ!」 と駄々をこね、何年かぶりに 「だって本当の『妹』はカトリーヌのほうでしょう! だったらカトリーヌがお嫁に行くべきだわ!」 と言い放ったのである。 スチュアートが求めているのは明らかに可愛いレイラの方だろう、とカトリーヌは思ったが、 「実は求婚してくれている男性がいるの。 私も結婚するつもりでいるのよ」 と泣き出すレイラを見て、自分が嫁に行くことを決意する。 しかし思った通り、スチュアートが求めていたのはレイラの方だったらしい。 カトリーヌを一目見るなり、みるみる険しい顔になり、思い切り壁を殴りつけたのである。 これではとても幸せな結婚など望めそうにない。 しかし、自分が行くと言ってしまった以上、もう実家には戻れない。 カトリーヌは底なし沼に沈んでいくような気分だったが、時が経つにつれ、少しずつスチュアートとの距離が縮まり始めて……?

厄介払いされてしまいました

たくわん
恋愛
侯爵家の次女エリアーナは、美人の姉ロザリンドと比べられ続け、十八年間冷遇されてきた。 十八歳の誕生日、父から告げられたのは「辺境の老伯爵に嫁げ」という厄介払いの命令。 しかし、絶望しながらも辺境へ向かったエリアーナを待っていたのは――。

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

処理中です...