2 / 33
2.
しおりを挟むブランシェが目覚めると、そこはエメック侯爵家の自分の寝室だった。
「よかった。変な夢を見た……え、夢、じゃない?」
手をお腹に持っていくと、明らかに膨れていた。
「え、何、どういうこと?」
本当にわけがわからなかった。
ブランシェの声が聞こえたのか、隣の部屋から夫のアンゼムが飛び込んできた。
「ブランシェ、あぁ、よかった。ようやく君が見つかってホッとしたよ。」
「アンゼム、あの、私、記憶がおかしいのかしら?どうして妊娠しているの?」
妊娠のことを話すと、アンゼムは悲しそうな顔になった。
「あの男は死んだらしい。その子は僕の子じゃないけれど、エルシスとパッティとは兄弟になるからうちで育てよう。」
「待って待って、意味が分からない。あの男って誰?」
ブランシェとアンゼムの間には沈黙が流れた。
「じゃあ、見つかったってどういうこと?私、どうして知らない場所にいて騎士がいたの?」
アンゼムは眉間に皴を寄せた後、聞いてきた。
「ブランシェがその知らない部屋で目覚める前、記憶のある場所ってっどこ?」
「どこって、昨日は……昨日なのかしら?もう今日じゃないわよね。カールストン公爵家の夜会に行ったでしょう?挨拶回りをして、ダンスの後、そこの休憩室でシャンパンをいただいて、そこから記憶がないわね。眠ってしまったのかしら。」
「それが最後?!」
アンゼムは非常に驚いていた。何がおかしいの?
あ……一番おかしいのはお腹だわ。これってほぼ臨月よね。
じゃあ九か月くらい経ってるってこと?
そう言えば、騎士たちが八か月とか監禁がどうのこうのと話していた気がする。
「アンゼム、ひょっとして、私って何か月もいなかったの?」
「そうだ。ブランシェはカールストン家の夜会から行方不明になって、八か月が経っていた。」
「八か月……」
嘘でしょう?
私にしてみれば夜会は昨日のことなのに。
「あっ!いたっ……痛い。陣痛かも。」
もう産まれるの?
心の準備も何もできていないのに。
というか、あなた誰の子?
夜会の前日に月のものが終わったばかりだったから、アンゼムの子ではないわ。
行方不明の間に、その死んだ男とかいう奴に妊娠させられた?
記憶にないわー。
あっ!まさか、私、記憶喪失になっていて、目覚めたらその間のことを忘れた?
ええー……
というか、そうだとしたら、この子、産まれるの早すぎない?
臨月みたいな大きさだけど、実際は全然月足らずってことになりそう。
驚きの連続で陣痛が来てしまったのね。
ブランシェがそんなことを考えている間に、アンゼムが部屋を飛び出して行っていた。
過去に二度経験してるから、任せて大丈夫ね。
あ……エルシスとパッティも八か月分成長しているってこと?
三歳と一歳だったけど、四歳と二歳になっているわね。私、忘れられてないかしら。
会いたいのにー……とりあえず、この子を産まないとね。
1,006
あなたにおすすめの小説
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。
【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜
桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。
白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。
それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。
言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる