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しおりを挟むお客様が帰り、侯爵夫人に聞かれた。
「ご両親の実家、知っていたの?」
「両親から、家名や爵位を聞いたことはありません。
でも、両親の遺品の中に家紋の入ったものがあります。
一応、家紋を調べてはみましたが、確実に両親の家のものだとは言えないので。」
父の方は、何かあれば助けてくれるかもしれないと家紋を見せられたので本当はわかっていた。
母の方は、高位貴族すぎて本当に実家なのか判断できなかった。
子爵令息だった父と公爵令嬢だった母。
貴族として結婚していれば、私は子爵令嬢だったのだろう。
しかし、父は子爵の跡継ぎの座も捨てて母と駆け落ちした。
駆け落ちといっても、当初は単なる同級生だった二人。
偶然、逃げる母を助けて、そのまま一緒に逃亡することになって愛するようになったらしい。
何度か引っ越しもしながらも幸せに暮らしていた。
やがて、母が亡くなり、追うように父も亡くなった。
学んだ薬草の知識で薬師を手伝いながら一年ほど一人で暮らしていた。
しかし、15歳のシャイニーを無理やり襲おうとした男から逃げるように王都にやってきた。
そして、今の職場が薬師としての資格も取らせてくれて雇ってくれたのだ。
「これからのことを真剣に考える必要があるわね。」
侯爵夫人のその呟きに、リオルだけでなく自分の将来も含まれているとわかった。
侯爵夫妻とアルフ様、そして私が呼ばれた。
「アルフ、再婚相手は見つかりそう?」
「いえ、このままだと来年デビューの令嬢で探すことになりそうですよ。」
うんざりしたようにアルフ様は言う。
侯爵様がみんなで集まった本題を話し始めた。
「シャイニーのご両親が誰であるか、判明した。」
「え?本当ですか?どこの貴族だったんです?」
一人、まだ知らないアルフ様が問いかける。やはり貴族だとは思っていたらしい。
「ある公爵家の令嬢と、子爵家の令息だ。ほぼ間違いない。
シャイニー、君のご両親が平民になった経緯を話すが、公的には罪人にはなっていない。
それを始めに伝えておく。」
罪人扱いされるような事をして逃げたということだろう。
だから、父親に殺されそうになったということか。
「ああ、付け加えて言うと、それぞれの家にも私的な罰を与えることも禁止されていた。
なので、ご両親が見つかって連れ戻されていても、処罰を受けることはなかった。」
………なんだそれは。それなのに、見つかることを避けて逃げ回っていたということか。
でも仕方ないよね。
平民として生活していると、どこの貴族家がどう言っているだなんてさっぱり伝わってこないもの。
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