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しおりを挟む侯爵様が語る、両親の駆け落ちの真相はこうだった。
20数年前、当時50歳を過ぎた国王陛下が王太子殿下に譲位を促され始めた頃、最後の野望を思いついた。
それは、王太子よりも魔力の多い子供を望むというもの。
国王陛下は魔力の多い王族だった。
しかし、産まれた子供たちは思ったほど魔力が多くなかった。
その中で一番魔力が多かったのが王太子殿下という理由でその地位につけた。
王太子殿下は、魔力が多い子供ができない国王陛下がイライラして手をつけた侍女が産んだ子供。
侍女といっても伯爵令嬢であったが。
国王陛下とこの侍女は、魔力の波長が合わなかった。
それなのに、嫌がらせのように侍女を抱いて妊娠させた。
側妃となった元侍女は、妊娠中ずっと気分の悪さで疲れ果てていた。
やがて産まれたのが、王太子殿下となった男の子。
今までの子よりも魔力は多かった。
しかし、自分ほどではなかった。
まぁ、それなり…といった魔力でひとまず国王陛下のイライラは落ち着いた。
それが、譲位する歳になって、再びもっと魔力のある子供を望むようになった。
指示で集められた16~18歳の伯爵位以上の令嬢。
その中で、最も魔力の波長が合わなかった公爵令嬢が選ばれた。
国王陛下は、王太子殿下の実母と魔力の波長が合わなかったことを思い出し、もっと合わない令嬢に産ませれば魔力の多い子供ができると期待したのだ。
もちろん、波長が合わないと魔力の多い子供が産まれるなどということはない。
単なる偶然でしかない。
ちなみに、魔力が多い者が国王陛下になろうが王太子になろうが魔力を活かしたことはない。
結んでいた婚約も解消され、学園にも通えなくなり、国王陛下に抱かれるように指示された公爵令嬢。
目が合っただけで気分が悪くなる人に抱かれて妊娠すると、自分も死んでしまうのではないか。
王太子殿下の実母も出産後に亡くなった。
波長が合わなくても出産で亡くなるということはないのだが、彼女は愛する婚約者ではなく国王陛下に襲われて妊娠し、生きることの意欲を無くしたからだということは密かに噂にはなった。
だけど、そんな噂を知らない公爵令嬢は子供を産んで死ねと父親に言われていると思った。
なぜなら、側妃として国王陛下に召し上げられるわけではなかったから。
ただ単に、国王陛下の野望に付き合わされるだけで婚姻ではないのだ。
まるで祖父と言える歳の差の男に、しかも公爵令嬢が子供を産むためだけに抱かれる。
愛妾ですらないのだ。
既に30才近くなっている王太子殿下がいる。
王太子殿下には王子もいる。
譲位間近の国王陛下の子供を産むことを強要するなんて、国王陛下もそれに従う父親も頭がおかしい。
そんな言葉を残して、公爵令嬢は家出をした。
公爵家の私兵に見つかりそうなところを、子爵令息が助けて二人で去ったらしい。
王太子殿下は、国王陛下の愚かな野望を知って非難し、地位から引きずり下ろした。
不幸にもそんな野望に巻き込まれた公爵令嬢と子爵令息が逃げたことは罪には問わない。
見つかった二人の家も、罰することは許さない。
そう、通達されたという。
貴族籍は5年以上、生存が確認されていない時点で一時抹消されている。
見つかった場合は、復籍は可能であるとして。
しかし、20年以上たった今でも二人は見つかっていないことから、亡くなったのではないかと思われている。
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