7 / 20
7.
しおりを挟むエスメラルダの妊娠が確実になり、医師が言うには堕胎するにも難しいという。
もう四か月を過ぎており、エスメラルダにかかる負担が大きいからだ。
そして今後、不妊になる可能性が高くなるし、未成熟なエスメラルダの体にどういう影響があるかがわからないからである。
しかし、もちろん出産も命がけとなることは間違いなかった。
「どうしてこんなことに……相手はラルゴ殿下で間違いないのか?」
項垂れた公爵がエスメラルダの専属侍女に聞いた。
「それは、わかりません。お嬢様の記憶の最後がラルゴ殿下というだけなので。」
「……ラルゴ殿下に確認してみるしかないかしら。でもあの子は13歳になったばかりだったのに。18歳の殿下から見てもまだ子供にしか見えなかったはずなのに、どうして。」
気丈に言葉を発した公爵夫人も、とうとう泣き崩れた。
「ラルゴ殿下にしろ、他の者にしろ、許せることではない。だが公にできるはずもない。」
ラルゴ殿下の子供であったとしても、13歳のエスメラルダが妊娠したことは外聞が悪い。
どんな経緯や事情があろうとも、公表などできるわけがないのだ。
そしてラルゴ殿下の子供でなかった場合は、相手が全くわからない。
公爵家で働く使用人まで疑うことになる。
万が一確認してラルゴ殿下ではない場合は、もちろん婚約破棄となるだろう。
婚約破棄に至った理由を隠していても、どこで誰にバレるかはわからない。
それこそ、ラルゴ殿下が言いふらさない可能性はないのだから。
となると、確認できないのだ。どうすることもできない。
「エスメラルダを病気療養として領地に連れて行こう。ラルゴ殿下との婚約は、病気を理由に解消してもらう。子供を領地で産ませ、私たちの子供ということにしよう。」
侯爵は、自身の妻にそう告げた。
「ラルゴ殿下に確認を取らず、エスメラルダを領地に隔離するのですね?
わかりました。エスメラルダは出歩かせずに私が妊婦のフリをして領地の者に印象づけますわ。」
エスメラルダが妊娠していることは、現時点で公爵夫妻と侍女、医師の四人しか知らない。
だが、さすがにあと数人は味方になってもらう必要がある。
絶対に裏切らない者を。この秘密を墓場まで持って行ってくれる者を。
エスメラルダ本人には、領地に行くまで話さないつもりでいた。
妊娠のことも、ラルゴ殿下と婚約解消することも。
公爵夫妻は、医師とどんな病気ならば婚約解消とできるかを話し合っていた。
婚約解消せずに領地で産んで、王都に戻ってくるということもできる。
だが、ラルゴ殿下が13歳の娘を襲った可能性がある以上、結婚を許すことなどできなかった。
また同じことがないという保障がないし、信用できない。
それに、エスメラルダは純潔ではなくなったのだ。
ラルゴ殿下が相手ではなかった場合、初夜でバレたら王族を謀ったことになる。
どちらにせよ、ラルゴ殿下との婚約は解消しなければならない。
幸い、体調の悪いエスメラルダは最近ラルゴ殿下とは会っていない。
病気療養で婚約解消を告げるには受け入れてもらえやすいのではないかと思っていた。
エスメラルダを襲った者が誰か突き止められないことには腹立たしいが、娘の体裁を優先した。
しかし、公爵夫妻が王家に婚約解消を申し入れようとした直前、とんでもない事態になった。
1,154
あなたにおすすめの小説
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
お飾り妻は天井裏から覗いています。
七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。
何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?
【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ
やまぐちこはる
恋愛
マリエンザ・ムリエルガ辺境伯令嬢は王命により結ばれた婚約者ツィータードに恋い焦がれるあまり、言いたいこともろくに言えず、おどおどと顔色を伺ってしまうほど。ある時、愛してやまない婚約者が別の令嬢といる姿を見、ふたりに親密な噂があると耳にしたことで深く傷ついて領地へと逃げ戻る。しかし家族と、幼少から彼女を見守る使用人たちに迎えられ、心が落ち着いてくると本来の自分らしさを取り戻していった。それは自信に溢れ、辺境伯家ならではの強さを持つ、令嬢としては規格外の姿。
素顔のマリエンザを見たツィータードとは関係が変わっていくが、ツィータードに想いを寄せ、侯爵夫人を夢みる男爵令嬢が稚拙な策を企てる。
※2022/3/20マリエンザの父の名を混同しており、訂正致しました。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
本編は37話で完結、毎日8時更新です。
お楽しみいただけたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる