出生の秘密は墓場まで

しゃーりん

文字の大きさ
19 / 20

19.

しおりを挟む
 
 
エスメラルダは、娘ラピスを王子殿下の婚約者に望んでいることを父親である王太子殿下は知っているのかと国王陛下に確認した。


「あー……話はしたが、まだ早い、と。10歳くらいで何人か集めてからでいいだろうと言っていた。」


まぁ、それが普通よね?他国の王女との縁談が持ち込まれる可能性もあるし。


「それがよろしいかと思います。今はまだ、決めるべきではないかと。
……それと、確認致しますが、ザフィーロがラルゴ殿下の子供だなどと誰にも言っていませんよね?」

「さすがにそれを口にしたのは両親に聞いてから今が初めてだ。すぐ下の弟も知らないはずだ。」


当時、第二王子殿下はすでに結婚して王宮の外で暮らしていたので話さなかったのだろう。


「それはよかったです。万が一、そんな妄想を口にされると醜聞になるのは王家よりもラース公爵家ですからね。今後一生、口にすることなくこのまま……」

「墓場まで、だな。わかっておる。だが言わせてくれ。弟がすまなかった。」

「……謝罪は受け取ります。ですが、私はこれまでの人生を後悔していません。
ザフィーロは来年、自分が望んだ令嬢と結婚します。だからラピスにも自分で選ばせてあげたい。それだけです。」

「わかった。もう打診はしない。ラース公爵はすぐにでもザフィーロに継いでほしそうだな。」

「継いでほしいですが、予定では4年後です。新婚生活を邪魔すると怒られそうですわ。」

「それもそうだな。ではまだしばらくはよろしく頼むよ。」


エスメラルダは退席する国王陛下を見送った。

まさか王家が気づいていたとは。
領地から戻ってきた公爵夫人が出産していたと信じるよりも、少女趣味だった弟がエスメラルダを襲ってできたのがザフィーロと思った方がしっくりきたのかもしれない。
 
そうなると、他にも疑っている貴族はいるかもしれない。
だけど、公爵位が物を言ったのだろう。格下が問い質してきたことは一度もないのだから。

 




1年後、ザフィーロは卒業したばかりの18歳のリルベルと結婚した。 

リルベルは次期公爵夫人に相応しくなれるよう、努力するとても評判のよい令嬢になっていたため、伯爵令嬢であっても羨むものはいても妬むものはほとんどいなかった。

8年も前から、ザフィーロが望んで婚約を結んだということは広まっている。
にもかかわらず、5歳下の伯爵令嬢でいいのなら、6歳下の侯爵令嬢の方が釣り合いがとれているはずだと喚く貴族もいたが、ザフィーロが黙らせたそうだ。

いや、その時だけでなくリルベルを妬む者が減ったことも裏でザフィーロが何かしていたかもしれないが、その辺の情報はレイリーに任せてエスメラルダは耳に入れないことにしている。


エスメラルダは20歳で公爵になったが、正攻法でどうにもならないことはレイリーに頼んでいた。
レイリーは裏情報を集めてくる者たちを使っている。
それは公爵家に代々仕える者たちで、父は生前、自分に万が一のことがあればその役目をレイリーがするように頼んでいた。エスメラルダが直接指示せずに済むようにしていたのだ。

レイリーはその者たちの使い方を、すでにザフィーロに教えているようだ。
ザフィーロが公爵になれば、鉄壁の公爵家になりそうな気がする。



そして、結婚式の夜から10日間、ザフィーロとリルベルは寝室に籠っていた。





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様

さくたろう
恋愛
 役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。  ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。  恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。 ※小説家になろう様にも掲載しています いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。

だってわたくし、悪女ですもの

さくたろう
恋愛
 妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。  しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。 小説家になろう様にも投稿しています。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

お飾り妻は天井裏から覗いています。

七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。 何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?

婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った

葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。 しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。 いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。 そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。 落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。 迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。 偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。 しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。 悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。 ※小説家になろうにも掲載しています

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

処理中です...